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市場動向家族信託を活用して
認知症に備える

弁護士今村 峰夫PROFILE

このコラムの内容は、2018年(平成30年)6月現在のものです。

最近よく耳にする「家族信託」は、家族のためにする民事信託です。民事信託とは、営利を目的としない特定の個人間の信託で、ハンドメイドの制度設計が可能です。超高齢社会が到来し、2025年には認知症の方が700万人を突破すると推計される中、従来からある成年後見・任意後見制度の限界が意識され、家族信託が注目されるようになりました。今回は、賃貸住宅オーナーの事例をもとに、家族信託の活用法の一例をわかりやすく解説します。

賃貸住宅オーナーが認知症になったらできなくなること

事例

Aさんは、相続税対策を目的に賃貸物件(土地・建物)を所有していますが、築年数が古くなり、最近は空室が目立っています。
いずれこの物件は長男に相続させるつもりですが、ローンの返済も終わり、このままでは相続税対策の効果はあまり期待できません。

そこで、借入をして建て替えたいと考えていますが、入居者との立ち退き交渉がすべて終わるまでに何年かかるかわかりません。
高齢のAさんは、その途中でもし自分が認知症になったら、建て替え計画やその後の賃貸住宅経営はどうなるかと不安を感じています。

上記の事例で、もしAさんが認知症になり、判断能力がなくなった場合、次のことができなくなります。(1)意思能力が認められないAさんは、入居者との立ち退き交渉ができません。(2)立退料等を自己の預金口座から出金することもできません。(3)建物解体契約や賃貸建物の建築請負契約を締結することができません。(4)建築資金を金融機関から借り入れることができません。

その結果、Aさんが希望する相続税対策のための建て替え計画が困難になるわけです。

成年後見・任意後見制度により対策を講じた場合

Aさんの事例の対策のひとつとして、成年後見制度ないしは任意後見制度の利用が考えられます。

成年後見制度は、認知症などにより判断能力が十分でない方が不利益を被らないように、家庭裁判所に申立てをして、援助してくれる人を付けてもらう制度です。この場合、まとまった財産を有しているAさんに対し、家庭裁判所は面識のない弁護士を成年後見人に選ぶことになるでしょう。極力リスクを避ける成年後見の実務からすると、弁護士はAさんの余命が長くないのに、立退料を払って入居者を退去させ、古い賃貸物件を解体し、さらに多額の借り入れをしてまで新しい賃貸物件を建築するという計画については消極的になりそうです。「Aさんが相続税対策を願っていた」と訴えても、「それは相続人のためであり、Aさんのためではない」と反論されるだけです。

次に、Aさんが長男との間で権限を明記した任意後見契約を結んでいた場合、長男がAさんの希望に沿った対応をとることは可能ですが、任意後見をスタートするには家庭裁判所に申し立てをして、任意後見監督人を選任してもらう必要があります。家裁で選任される任意後見監督人が立退料、借入額、新しい賃貸物件の規模等について、窮屈な注文をつけてきそうです。

家族信託の活用事例と注意すべき点

これに対して、もうひとつの対策である信託を利用したのが、下図の家族信託の活用事例です。

Aさんは意思能力のあるうちに、自己を委託者兼受益者として、受託者である長男に古い賃貸物件等を信託財産として託します。相続税対策というAさんの目的に沿った信託契約にしておけば、万が一Aさんが認知症になったとしても、受託者である長男が立ち退きや建て替えを進めることができます。

ただし、家族信託には次のような注意点があります。1つは、受託者に適任者を選任することが重要です。受託者には各種の義務があり、責任が軽くはありません。弁護士等の専門家のアドバイスを受けながら、信託監督人などの利用も考えるといいでしょう。もう1つは、受託者が信託財産を担保に入れて建築資金を銀行から借り入れることは、信託契約に明記されれば可能ですが、残念ながら一部の銀行しか融資に応じていないのが実情です。家族信託の認知度が高まっていますので、今後は融資に応じる金融機関が増えるものと期待されます。家族信託は自由な設計が可能ですが、税法上の思わぬ落とし穴に落ちないよう、制度設計の段階から税理士のアドバイスを受けることもおすすめします。

家族信託の活用事例

信託財産:古い賃貸物件(土地・建物)等
  1. 信託契約(信託財産の名義移転)
  2. 信託財産の管理・運用(賃貸物件の建て替え)
  3. 信託利益の給付(賃貸物件の賃料)

弁護士今村 峰夫(いまむら みねお)

今村 峰夫氏 近影

久保井総合法律事務所 代表パートナー弁護士。1985年に京都大学法学部を卒業し、1987年に最高裁判所司法修習終了。同年、弁護士登録。主な役職は、関西ペイント(株)監査役、公益財団法人松口奨学会理事など。著書に「ケースで学ぶ消費者取引ハンドブック」(共著 きんざい)、「不動産担保の法務Q&A」(共著 有斐閣)、「債権保全・回収と倒産手続のはなし」(共著 UFJ総合研究所)などがある。

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