老朽化した建物を建て替える場合、現在の居住者との賃貸借契約を終了させ、居住者に立ち退いていただくことが必要になります。とは言え、住居は生活の基盤ですから、簡単には建物賃貸借契約を終了させることができません。
ただし、貸主側の自己使用の必要性、あるいは住まいとしてその建物が危険であって建て替えの必要性が認められる等の場合には、賃貸借契約の更新拒絶、解約が認められます。この場合、立退料の提供が正当事由の補完事由として重要な要素となります。
賃貸借契約の終了事由としては
のケースがあります。それぞれのケースについて、具体的に見てみましょう。
契約違反を理由に建物賃貸借契約を解除するためには、貸主と借主間の信頼関係を破壊したと認められる程度の強度の契約違反であることが必要です。
契約違反の代表的なものに賃料の不払いがありますが、その場合は最低でも2ヶ月分の賃料不払いが必要です。
また、このケースでは立退料の提供は不要です。
更新拒絶や解約申し入れによって建物明け渡しが認められるためには、「正当事由」が必要になります(借地借家法28条)。
何が正当事由となるかは、裁判での判断に委ねられていますが、貸主側の事情としては
他方、借主側の事情としては
などが、正当事由の判断の基準になります。
また、その場合に、正当事由の補完事由としての立退料の提供が必要か、必要だとしてその金額はいくらが妥当かは、ケース・バイ・ケースです。
一般的に、貸主側と借主側の事情を比較して、貸主側に自己使用の必要性がどれほど強いかによって、立退料の金額が決まります。
耐震診断で「倒壊する可能性が高い」と診断されたことを理由に、賃貸借契約の解約申し入れをすることは、「正当事由有り」と認められるでしょうか?
残念ながら、耐震診断の結果が、直ちに「正当事由有り」とはなりません。建物の老朽化により耐震強度や耐火性能が不十分で、建て替えの必要があり、修繕の費用対効果に問題があるような場合には、賃借人の必要性、立退料の支払いの有無などを考慮の上で「正当事由有り」と認められる場合が多くなっています。
しかし、中には、老朽化した賃貸住宅の解約申し入れで、立退料の提供が不要とされた事案もあります。具体例をご紹介しましょう。
築100年を超えた木造建物で、耐震診断の結果、「倒壊の危険有り」とされた建物を建て替えるケースでは、立退料の提供は不要で解約が認められました。
築64年の木造モルタル塗りで、柱や床がシロアリや害虫に侵され、土台が腐り、建物が傾いて柱もねじれ、建物の2階部分は朽廃状態にある建物について、借主側の事情を考慮しても、立退料の提供は不要として解約が認められました。
老朽化した賃貸住宅の建て替えで、オーナーさんが最も悩まれるのが立ち退き交渉だと思います。
当事者同士の話し合いが難航したら、簡易裁判所へ調停申し立てをされることが賢明です。調停では、類似の事案、相場を参考にして、話し合いでの解決策を示してくれます。
また、交渉が難航することが予想される事案は、弁護士さんに相談なさることをお勧めします。
豊かなオーナーライフをお届けする、パナホームの土地オーナーサポートシステムNEOSをご利用ください。老朽化した賃貸住宅の建て替えについても、現状の経営診断、周辺環境の特性やニーズを踏まえた事業提案、さらには豊富な経験とノウハウを生かし、円滑な立ち退きの実現についてアドバイスを実施。必要に応じて弁護士を交え、オーナーさまをしっかりバックアップします。
弁護士 瀬古 賢二せこ けんじ
1983年、名古屋大学法学部卒業。法律特許事務所の所員を経て、1994年に「瀬古賢二法律事務所」を開設。2004~2007年まで名古屋簡易裁判所の民事調停官、2009年度 愛知県弁護士会副会長などを歴任。現在は、弁護士業の傍ら、名古屋簡易裁判所の調停委員、愛知県公害調停委員を務める。
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