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市場動向(2015年11月号) 今注目を集める
「家族信託」を考える

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  • 高齢者
  • 遺産相続
  • 家族信託

税理士・コンサルタント 奥村 眞吾

このコラムの内容は、2015年(平成27年)11月現在のものです。

  • パナホーム株式会社は、2018年4月1日にパナソニック ホームズ
    株式会社に社名変更いたしました。
  • 掲載内容につきましては当時のままで表記されています。

厚生労働省の発表によれば、全国の65歳以上の高齢者のうち、462万人が認知症と認定され、その予備軍が400万人とされています。
少子高齢化の日本、しかも高齢者ほど財産を持っています。 毎年変わる税法や経済環境などを考えれば、
資産運用や相続対策などを高齢の所有者本人が行うのは無理があるというケースが、今後ますます増えていくでしょう。
こうした社会状況を背景に、最近新しい手法として注目されているのが「家族信託」です。
今回は、認知症対策にもなる「家族信託」について、事例を交えながら解説します。

信託とは何か?
その起源と基本の仕組み

まず、ここで説明する信託は、信託銀行が行っている事業とはまったく異なることを理解してください。
そもそも信託の起源は、その昔、ヨーロッパにおいて十字軍遠征で出征する兵士が、自分の領地の管理を信頼できる友人などに託し、そこから上がる収益を家族に分配してもらい、無事に帰ってきたら委託した領地を友人から戻してもらう。そういう慣習から始まったようです。

つまり信託とは、下図のように、財産を持っている「委託者」が、信託契約でその財産の管理や運用の権限を「受託者」に託す制度です。契約の際、「委託者」は信託により利益を受ける「受益者」を指名します。「受益者」を誰にするかは「委託者」が自由に決めることができ、「委託者=受益者」であっても構いません。

基本的な信託の仕組み

成年後見制度など
他の制度と信託との違い

たとえ認知症や重い病気で意志判断能力が万全でない場合でも、一定以上の財産を所有していれば、亡くなったときに否応なく相続税が襲ってきます。そして、家族が大変な相続の負担を余儀なくされます。

一方、認知症などの人が、だまされたり、不用意な行動により損害を被ったりしないようにするため、成年後見制度という法的制度があります。

しかし、成年後見制度は、そうした方の財産を守る観点から、後見人には必要最小限の支出しか認めないとか、生前に財産の処分や贈与は認められないなど、できることに限界があります。しかも、意志判断能力を失わなければ、この制度を使うことができません。

他者のための財産管理の手法としては、他にも民法上の代理、委託、遺言執行などがあります。こうした制度と信託が大きく異なるのは、「委託者」の財産名義が「受託者」名義に移転することです。

これにより、仮に「委託者」が認知症などになった場合も、「受託者」が自分の判断で財産を処分したり、有効活用することができます。

ただし、その利益はすべて「受益者」に帰属します。したがって、信託財産にかかる相続税や所得税なども、「受益者」にかかることになります。

信頼できる家族・親族に
財産を託すのが「家族信託」

「家族信託」という呼称は、正式な法律用語ではありません。信託契約のうち、信頼できる家族や親族に財産の管理や処分を任せるケースを、わかりやすく「家族信託」と呼んでいます。

では「家族信託」では、どんなことが可能なのか。簡単な事例を見てみましょう。

事例(1)賃貸住宅オーナーの場合

高齢の父は病気がちで、最近物忘れがひどく、 所有している賃貸住宅の管理が難しい。しかし、子に生前贈与すると、多額の贈与税がかかってしまう。

  • 賃貸住宅の管理いっさいは受託者の子Aが行う。
  • 家賃収入は今まで通り受益者の父に帰属し、父が賃貸住宅を所有しているとして所得税の確定申告を行う。
  • 信託契約で賃貸住宅の相続人を子Aに指定しておけば、遺言がなくても子Aに相続させることができる。

受託者の子Aは、必要に応じて賃貸住宅の建て替えや売却をすることも可能です。また、賃貸住宅が複数棟ある場合、1棟は子Aを受託者、1棟は子Bを受託者というふうに信託契約することもできます。

事例(2)土地オーナーの場合

所有する遊休地を有効活用して相続税対策をする必要があるが、高齢のためそのようなことは煩わしい。

  1. 父は子Bを受託者、自分を受益者として遊休地を信託。
  2. 子Bが銀行から建設資金を借り入れ、
  3. その資金で賃貸住宅を建設し、賃貸経営を開始。
  4. 家賃収入を得て、銀行に借入金の返済を行う。

この結果、土地は貸家建付地、借入金は債務控除となり、受託者の子Bの手で相続税対策が実現できます。しかも、受益者の父は家賃収入も期待できます。

また、「私の死後は長男に賃貸住宅を相続させ、長男の死後はその妻に相続させ、長男夫婦には子どもがいないので、長男の妻の死後は長女の子(孫)に相続させる」というふうに、次の次の相続まで指定することもできます。これを受益者連続信託といい、一族の資産の流出を防ぎたい場合などに有効です。

このように「家族信託」を上手に利用することによって、これまでにない認知症対策や資産継承対策の多様な可能性が広がります。

税理士・コンサルタント 奥村 眞吾 おくむら しんご

税理士・
コンサルタント
奥村 眞吾 おくむら しんご

(株)奥村企画事務所代表取締役、奥村税務会計事務所所長、OKUMURA HOLDING INC(米国)代表。上場会社をはじめ医療法人、公益法人、海外法人など多数の企業の税務や相続税対策に携わり、海外にも拠点を置いて海外税務も手がける。日本経済新聞社や NHK文化センター等の講師もつとめ、国内各地、ハワイ、ロサンゼルスなど海外でも講演活動を行っている。「住宅・土地税制がわかる本」「税金が安くなる法」(PHP研究所)など著書多数。

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