自宅の敷地を有効活用し、賃貸部分をプラスして家賃収入を得る賃貸併用住宅が、都市部を中心に幅広い年齢層で注目を集めています。
家賃収入による住宅ローンの軽減や私的年金の充実が賃貸併用住宅の大きなメリットですが、
2015年(平成27年)1月からの相続税改正に伴い、節税対策の効果に関心を持つ方も増えてきました。
今回は、税制の面でも有利な賃貸併用住宅について相続税対策と固定資産税対策の2つの観点から、節税メリットをご紹介します。
土地・建物などの不動産の場合、相続税の計算基準となるのは、時価ではなく相続税評価額です。自宅などの自用家屋の敷地は、路線価などをもとに計算した自用地評価額となります。一方、賃貸住宅や貸店舗などの敷地は貸家建付地評価額となり、首都圏の住宅地などでは自用地評価額より約20%※減額された評価額となります。
では、賃貸併用住宅の敷地は、どのように評価額を計算するのでしょうか?
自宅と賃貸の敷地の利用区分は、一般的に建物の利用割合に応じて計算します。例えば、建物全体の床面積の85%が賃貸部分の場合は、敷地も85%が賃貸部分として区分され、貸家建付地評価額となります。
また建物についても、自宅部分は自用家屋の評価額(固定資産税評価額×1.0倍)となりますが、賃貸部分は貸家の評価額となり、自用家屋の評価額より30%減額された評価額となります。
このように賃貸併用住宅は、敷地も建物も賃貸部分の評価額が減額されるため、自用のみの土地・建物と比べて、相続税評価額を低く抑えることができるのです。
※減額割合は、地域ごとに定められた借地権割合により異なります。
1階から6階を賃貸、最上階の7階を自宅とした賃貸併用住宅の場合、単純計算では約85%が賃貸部分、約15%が自用部分として区分され、土地・建物の相続税評価額を計算します。
小規模宅地等の評価額の特例は、相続税の計算上、自宅などの敷地の評価については、一定の要件のもと大幅な評価額の減額が認められるというものです。自宅の敷地の相続税評価額は、配偶者や同居の子どもが相続する場合などは、最大330㎡まで80%評価減の特例の対象となります。しかし、独立して自宅を構える子どもなどが相続する場合は、特例の対象外になるなど条件が厳しくなり、最近の相続では評価減を受けられないケースが増えています。
宅地区分 | 上限面積 | 減額割合 |
---|---|---|
自宅敷地 | 330㎡ | △80% |
賃貸住宅敷地 | 200㎡ | △50% |
一方、賃貸住宅の敷地の相続税評価額は、相続人が申告期限まで引き続き賃貸事業を継続する場合などは、最大200㎡まで50%評価減の特例の対象となりますので、条件が比較的緩やかです。
賃貸併用住宅の場合は、建物の利用割合で区分した自宅部分と賃貸部分の敷地について、それぞれ評価減の特例の適用を検討することになります。
将来、自宅の相続で評価減が受けられないことが予想される場合には、賃貸併用住宅への建て替えで、確実に賃貸部分の敷地の評価減を受けることも有利な選択肢の一つと考えられます。
なお、小規模宅地等の評価減の特例の詳細は、税理士などの専門家に確認してください。
自宅や賃貸住宅などの敷地は、住宅用地として、固定資産税の課税標準を減額する特例があります。
特例の内容は、その住宅の敷地のうち、住宅1戸あたり200㎡までは小規模住宅用地として、その評価額の1/6を課税標準とし、1戸あたり200㎡を超える部分は一般住宅用地としてその評価額の1/3を課税標準にするというものです。
例えば、300㎡の敷地に自宅(1戸)がある場合は、右表のように敷地のうち200㎡までは1/6に、残りの100㎡は1/3に減額されます。
住宅区分 | 敷地面積 | 戸数 | 課税標準の減額割合 |
---|---|---|---|
自宅 | 300㎡ | 1戸 | 200㎡まで 1/6 残り100㎡ 1/3 |
賃貸併用住宅 | 300㎡ | 10戸 | 敷地全体 1/6 |
一方、賃貸併用住宅(例えば自宅を含め10戸)の場合は、200㎡×10戸=2000㎡までが1/6の減額特例の対象となりますので、それ以下の300㎡の敷地は全体が1/6に減額された課税標準になります。
このように200㎡超の敷地は、敷地上の住宅の戸数によって、固定資産税の負担が変わります。固定資産税は毎年負担するものですから、この点もよく理解して新築・建て替えなどの計画をすることが大切になります。
税理士 稲場 広宣 いなば ひろのぶ
税理士法人・四谷会計事務所 パートナー税理士。1985年、東洋信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)に入行。多忙な銀行業務の中、6年間で税理士試験に合格。金融資産運用・ローン・遺言信託などのコンサルティング、銀行経理・税務の担当など幅広い業務を経験後退職。現在、四谷会計事務所パートナーとして税務全般の業務を担当。特に不動産税務を中心とした資産税に豊富な経験実績があり、自らもアパートオーナーとして地主・オーナーと同じ視点で考える不動産の有効活用、賃貸経営の法人化、所得税・相続税の節税対策などに定評がある。パナソニック ホームズの各種セミナー、研修会等の担当講師としても活躍。
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