住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
CRE(Corporate Real Estate)とは、企業が所有または賃借する不動産資産を指します。本社・支社ビルやオフィス、工場など企業活動の基盤となり事業を支えるものから、社宅や社員寮、さらには福利厚生のための保養所など、直接利益を生み出さない施設まで保有する不動産のすべてが含まれています。
近年、経済活動の多様化やグローバル化の進行、地価の変動リスクや建物の老朽化リスクの高まりなどから、企業が不動産にまつわる課題やリスクを避けることが難しくなっています。そこで活用されていない不動産をただ保有しているだけから脱却し、経営戦略の一環として不動産を有効活用する動きが重視されるようになりました。これが「CRE戦略」です。
社有不動産の活用は、企業の社会的責任や存在意義と密接に関わっています。ここでは社有不動産の3つの特性とCRE戦略の方向性を考えます。
・施設の老朽化や周辺環境への影響が課題となる
社有不動産は、本社ビルや工場、福利厚生施設など多くの人が出入りする建物であり、また地域の景観を大きく左右することがあります。建物が老朽化すると安全性や環境面での問題が生じた場合、周辺地域にも悪影響を及ぼす可能性があります。昨今では、環境への配慮や景観保全、地域活性化への貢献が企業に求められるようになってきました。こうした要請の中で、企業が保有する不動産を適切に改修したり有効活用したりすることが、社会的責任を果たすうえでも大切になっています。
・経営資源として適切に管理し、企業価値を向上させる重要性
株主や投資家からは、企業が保有する不動産を有効に活用し、企業価値を高める経営が求められています。そのため、遊休地のまま放置されている不動産、老朽化した施設なども企業の資産の一部として戦略的に再編・売却・改修することで、資産価値の向上や財務バランスの改善を図り、企業価値の向上につなげることがCRE戦略の要となります。
・社会的責任やステークホルダーへの貢献が求められる
企業が保有する不動産の活用方法は、地域社会の活性化や雇用創出といった社会的意義にも直結します。例えば、工場跡地を再開発して地域のコミュニティスペースや医療・福祉施設を誘致するなど、社会課題解決につながる取り組みを実践すれば、企業のイメージアップやブランド価値向上にもつながるでしょう。今や企業には、経済活動だけでなく、地域や社会との共生を図る姿勢が求められています。こうした観点からも、CREを活用した社会貢献は、企業戦略上の大きなテーマとなっています。
ここでは、CRE(企業が保有する不動産)を活用するにあたって、具体的にどのような戦略が考えられるのか、代表的な方法を4つの視点から解説します。
企業が所有している土地や建物の中には、あまり利用されていない遊休地や、使用頻度が極端に低い施設がある場合があります。こうした不動産を再活用する方法として、以下のような事例が挙げられます。
・工場や物流拠点の開設
周辺環境や物流網を考慮して工場や倉庫を配置することで、サプライチェーンの効率化を図るとともに、地域雇用の創出につなげることができます。
・研究施設の開設
大学や研究機関・行政との連携などを行い、新しい技術や製品の開発を進めることで、地域活性化を促すだけでなく、自社の技術力アップや新規事業の創出が期待できます。
・店舗・商業施設の開設
店舗や商業ビルを開業することで、地域住民の利便性向上と雇用創出を図る他、防災拠点の機能を備えた施設として整備すれば、地域社会からも大きく期待されるプロジェクトとなります。
既存の施設を別の用途の施設に建て替える(コンバージョン)ことで、新たな事業機会を生み出すこともCRE戦略の重要なアプローチです。コンバージョンには以下のような方法があります。
・工場跡地でまちづくり
例えば、過去に操業していた工場を閉鎖した際、その跡地を利用して住宅地の開発や、住宅と商業施設を集約した新たな街区の開発を行うことができます。最先端のテクノロジーを活用した“次世代型都市”を目指せば企業イメージの向上にもつながります。
・遊休地を宿泊施設へ
駅前にあったオフィスビルを、オフィスの合理化も兼ね、インバウンド需要などを見込んだ宿泊施設としてコンバージョン。魅力的な立地から高い稼働率を期待できるだけでなく、将来の賃貸住宅への再コンバージョンも見込んだ構造にすることで、リスクを最小限に抑えることもできます。
・社員寮・社宅跡地を高齢者住宅として活用
少子高齢化が進む日本では、高齢者向け住宅や介護施設への需要が高まりつつあります。既
存の社宅や寮をリノベーションして高齢者福祉施設を開設すれば、地域課題の解決と安定収益の確保を同時に実現することが可能です。
企業の根幹となるオフィス環境を整備し直すことも、企業文化に新たな風を吹き込むという点で、CRE戦略の重要な取り組みのひとつと考えられます。
・オフィス拠点の集約
例えば、分散していた拠点や部署を一つに集約することで、管理コストの削減と社内コミュニケーションの円滑化を促進し、組織全体の生産性向上を目指すことができます。
・オフィスのアップデートによる創造性やエンゲージメントの向上
フリーアドレスや開放的なラウンジ、ソロワーク用のブースなど新しい働き方を取り入れたオフィス空間の整備は、社員のモチベーション向上や人材確保にも効果的です。組織力を高め、企業ブランドの強化にもつながります。
既存の不動産を有効活用するだけがCRE戦略ではありません。今後の企業戦略を見据えたうえで、「売却する」または「新規に購入する」ことによって財務バランスの改善を図り、健全性を高めることも重要項目です。売却・購入には以下のような考え方があります。
・遊休地の売却によるキャッシュ確保
収益化が困難で費用ばかりがかかる遊休地を売却することで、手元資金を増やし、新たな投資に回すことができます。
それを通じて財務体質を強化し、事業構造の再編を加速させることこそが重要だと言われています。
・新規不動産購入によるキャッシュポイント創出
事業計画にマッチした不動産を新たに取得し、新規事業の拠点づくりとして商業施設や賃貸物件として活用することで、安定したキャッシュフローを生み出すことが可能です。純資産が多く、リスクに強い企業であれば、銀行の評価も高くなるので資金調達もしやすくなると考えられます。
最後に、CRE活用の実例をいくつか紹介します。これらは、パナソニック ホームズが計画段階から関わり、設計・施行、運用までをトータルで提案しています。CREが保有を超えて、社会的課題の解決や企業価値向上にどのようにつながるのか、実際の取り組みから読み解いてみましょう。
「豊和工業西地区開発プロジェクト」は、工場隣接の遊休地の再活用が課題でした。そこでパナソニック ホームズが提案したのは、名鉄名古屋駅から最短で約10分という利便性の良さを生かした賃貸住宅と、地域住民も利用可能な有料老人ホームを組み合わせた複合開発でした。グループ企業のパナソニック ホームズ不動産が賃貸住宅の不動産管理を行い、老人ホームを豊和工業から30年間一括借上げ(マスターリース)し、運営事業者へ転貸(サブリース)することで一体的にオーナーさまをサポートする「ケアリンクシステム」を活用しています。
また、豊和工業の地域貢献への想いを反映すべく、賃貸住宅にパナソニック製太陽光発電と蓄電池システムを設置し、万が一の災害時に地域住民の避難場所として活用できるよう計画。敷地内に「蓄電池一体型の街路灯」や、災害時にかまどとして利用可能な「防災ベンチ」などを配置し、社会的責任と経済的メリットを両立させています。
大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)が保有する駅近隣の土地を活用して、14階建・78室の大規模宿泊施設「ホテルアビターレなんばウエスト」を建築しました。大阪市の「特区民泊制度」を活用して、一般的なホテルよりも容積率が高い建築物にすることで収益率を高め、パナソニック ホームズ不動産によるマスターリースで運営を担うことで鉄道以外の安定収益源の確保を可能にしています。
各部屋にキッチンや独立バスなどを設け、将来的に賃貸住宅へ転用しやすい設計とすることでリスクを軽減していることも特徴です。駅徒歩1分という好立地が高い集客力を生むことで、地域経済にも貢献することを目指しています。収益率向上とリスクの軽減策を兼ねた、長期的視野に立った戦略的なCRE活用といるでしょう。
「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」は、パナソニック(旧・松下電器産業)の工場跡地を活用した、開発面積・約19ha、計画人口・約3,000人の大規模なまちづくりプロジェクトです。開発にあたっては藤沢市や地域の人々の関心が非常に高く、単に収益を生むだけでなく、環境配慮と地域共生を重視したまちづくりを目指すという課題がありました。
藤沢市のポテンシャルと課題を整理したうえで、「技術起点からくらし起点へ」を掲げ、
セキュリティ・モビリティ・エネルギー・コミュニティ・ウェルネスのさまざまな分野の視点でスマートライフを提案できるようなまちづくりの実現を目指しました。
そこに官民そして企業の垣根を超えた共創によるまちづくりといった要素を掛け合わせ、パナソニックの創エネ・省エネ・蓄エネ技術を導入したスマートタウンを整備しました。その結果、自然に恵まれた暮らしやすい街を具現化しただけでなく、CO2排出量70%削減、生活用水30%削減など街全体で定めた数値目標を達成するなど、地域で環境課題を解決するいきいきとした住環境が育まれています。
沖縄セントラル病院を経営する医療法人 寿仁会は、病院の周辺用地を活用して、2010年に国土交通省の高齢者居住安定化モデル事業沖縄県第一号となる「ユートピア沖縄」を開設しました。計画地のある那覇市真和志地区では、高齢者のための住宅不足や単身高齢者へのケア、老々介護などの対策が課題となっており、それらを総合的に解決する仕組みを構築するが必要がありました。プロジェクトでは、高齢者賃貸住宅やデイサービス、地域交流センター、保育施設、診療所などを一体化し、介護保険に相談支援サービスを付加した「有料会員制クラブ」やコーディネーターによる生活支援などの仕組みを整備し、医療・介護・保育を連携させて安心な暮らしをサポートしています。
また、地域住民への共用スペース開放などでコミュニティも活性化。資産を有効活用するだけでなく、地域課題の解決にも貢献する総合的なサービスを提供するモデルとして、今後の医療・介護連携に示唆を与える事例となっています。
Jリーグのサッカーチーム・大宮アルディージャのクラブハウス「オレンジキューブ」は、ホームタウンである埼玉県さいたま市内の用地を活用し、選手の練習環境と地域交流を両立させることが課題でした。まずは既存の定期借地を売却。新たに取得した土地に、ファンが間近に練習を見学できるスペースや多目的開放スペースを設け、地域住民が会合などに利用できる場としても活用できるクラブハウスを建築しました。
パナソニックの太陽光発電や独自の耐震構造を採用し、環境面や防災面にも配慮しています。クラブと地域が一体となる運営を実現し、スポーツ振興だけでなく地域の活性化にも貢献。「我家(わがや)」をテーマにした温かみある設計が支持され、選手・サポーター・地域社会を結びつける事例となりました。
【まとめ】
企業が保有する不動産(CRE)は、老朽化などの課題を解決しながら社会的責任を果たすための有力な手段であり、さまざまなステークホルダーと協力することで、「地域創生」にも貢献することが可能になります。本記事で紹介した活用方法を参考に、CREを有効に活用する戦略を描いてみてはいかがでしょうか。
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