住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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お役立ちコラム
【目次】
アパート経営で得た家賃収入(=収益)は不動産所得に区分され、確定申告により課税額が決まりますが、アパート経営で発生した必要経費は収益から差し引くことができます。経費をもれなく計上することは、収益を手元に残し、納める税額を抑えることにつながるため、正しい知識をつけることが収益の最大化に有効です。ただし、経費として計上できるのは「アパート経営で収入を得るために必要なもの」に限定されます。具体的な例を、確定申告でよく使われる勘定科目ごとに見ていきましょう。
アパート経営で所有している土地と建物にかかる固定資産税、10室以上のアパートもしくは5棟以上を経営する場合の個人事業税、アパート経営にかかる印紙税、登録免許税、不動産取得税などが該当します。自動車税は自家用車をプライベートと共有している場合、アパート経営に関連した割合分のみ経費として計上可能です。
アパートに対して契約した火災保険料、地震保険料などが該当します。自動車保険料についてはアパート経営に関連した割合分のみ経費として計上可能です。
アパートの共用部、設備の保守管理費用、清掃に関する費用など、ご自身でアパートを管理した際にかかった費用、賃貸管理会社にアパートの管理を依頼した場合にかかる管理代行費用が該当します。
アパートとその付属設備の修繕やメンテナンス費用、居住者が退去した際のクリーニング代などが該当します。ただし、修繕によって新たな機能を付け加えたり、使用可能期間が延びたりした場合は、修繕費ではなく資産として計上される「資本的支出」となるため、対応が異なります。資本的支出に該当する費用は、全額を必要経費にできない可能性があるため、アパートを建築したときの金額に加えて、後述の「減価償却」する必要があります。資本的支出に該当する費用が20万円(青色申告の場合は30万円)未満か、おおむね3年以内の周期で行っている修繕などの場合は修繕費として扱うことができます。
ご自身でアパートの管理をしている場合、アパートと自宅の往復でかかった交通費は経費として計上可能です。公共交通機関利用の場合はその利用料金、自家用車の場合はガソリン代が交通費にあたります。
アパートの入居者募集のためにパンフレット、チラシ、ホームページ等を作成した費用が該当します。賃貸管理会社に入居者募集を依頼した際にかかった費用も宣伝広告費にとして計上可能です。
アパートに設置した監視カメラや電気メーターなどを確認するためのインターネットプロバイダー料金は経費として計上可能です。賃貸管理会社との連絡にかかった電話代なども該当します。
アパートを建てる際にローンを組んだ場合、支払った借入金利息は経費として計上可能です。ただし、借入金の元本は経費に該当しないので注意が必要です。
税理士にアパート経営の確定申告などを依頼した場合や、弁護士にアパート経営に関する相談を依頼した場合などに支払った報酬も経費となります。
エントランスの照明など、アパートの共用部分にかかる水道光熱費は経費として計上可能です。
確定申告で青色申告をしていて、アパート経営に従事する家族がいる場合は、その家族を専従者とみなし給与をすべて必要経費にできます。青色事業専従者給与の適用が受けられるのは、10室以上の事業的規模のケースです。
アパート経営に関係する賃貸管理会社や税理士、弁護士等との会食費、お中元の費用などは経費として計上可能です。ただし、アパート経営に関係ないプライベートの交際費は含まれません。
アパート経営のために購入したパソコン、アパートの状態を記録するために購入したデジタルカメラなどは購入金額が10万円以下であれば消耗品費に該当します。購入金額が10万円を超える場合は、減価償却費として計上する必要があるので注意しましょう。
なんらかのトラブルや家賃滞納などの理由で居住者を立ち退かせた場合にかかった費用は、立ち退き費として経費計上できます。
ただし、アパートの建て替えに関連した立ち退きの場合、旧アパートの解体費用は、新築する建物の経費ではなく、旧アパートの経費として申告する必要があります。
個人事業主などのための積立式の退職金制度です。個人事業でも退職金として受け取ることができるほか、掛金は全額が所得控除になるため節税につながるというメリットもあります。
経営するアパートの土地の賃借料や、自宅兼事務所だった場合の家賃の一部、アパート経営でも使用する車の月極駐車場の賃借料などが相当します。
家賃や月極駐車場については、「家事按分」という方法を用いてアパート経営にかかった費用のみを算出し、計上することが可能です。
上記に該当しない費用でもアパート経営に関係しているものならば、経費として計上できる場合があります。判断に迷ったら確定申告の前に税務署や税理士に相談しましょう。
長期にわたって使用し、その価値が徐々に減っていく資産については、その取得費用を一定年数(使用可能期間)に分割して必要経費にすることができます。この仕組みを「減価償却」といい、対象となる資産を減価償却資産といいます。
アパート経営の場合は、アパートとその付属設備などが減価償却資産に該当します。土地は年月が経過しても価値が減らないため、減価償却の対象になりません。減価償却する一定年数(使用可能期間)を耐用年数といい、資産の種類ごとに定められています。資産に耐用年数から算出された償却率を掛けた金額が、毎年の必要経費(減価償却費)として計上可能です。資産の種類ごとの耐用年数や償却年数、償却率は国税庁のホームページで確認できます。
減価償却の計算方法には毎年一定額ずつ償却する「定額法」と、毎年同じ割合を償却する「定率法」の2つがあります。平成28年4月1日以降に建築したアパートとその付属設備などについては定額法で計算すると定められています。購入金額が10万円を超える消耗品も減価償却費に該当しますので覚えておきましょう。
アパートとその付属設備の修繕やメンテナンス費用は、修繕費として必要経費に計上できます。ただし、前述のように修繕によって新たな機能を付け加えたり、使用可能期間が延びたりした場合は、その費用が「資本的支出」になります。
例としては、非常階段の取り付け、壁や天井の耐震補強や防水加工などです。資本的支出に該当する費用は、全額を必要経費にできません。修繕費とは別に、アパートを取得したときの金額に加え、耐用年数に応じて減価償却する必要があります。減価償却すると翌年以降も必要経費として計上できるため、長期的な節税の効果も期待できます。
最後に「経費として計上できない費用」をご紹介。迷いがちなポイントなので、ぜひ頭に入れておきましょう。
・租税公課
アパート経営に関係のない税金(所得税、住民税など)は経費として計上できません。前述のように経費として計上できる税金は、固定資産税など不動産に関するものが中心です。アパート経営は不動産を活用して行う事業ですので、経費として計上できる税金は限られています。
・アパートを建てる際に組んだローンの元本
アパートを建てた際にローンを組んだ場合、支払った借入金の元本は経費として計上できません。その代わりアパートは減価償却資産ですので、一定期間、必要経費として減価償却することができます。また、前述のように支払った借入金利息のみ経費として計上可能です。
・アパート経営に関係のないプライベートな支出
当然のことながら、アパート経営に関係のないプライベートな支出は経費として計上できません。アパート経営に関係する経費とプライベートな支出は明確に区別する必要があるため、会計ソフトや出納帳にアパート経営でかかった費用を都度記載し、領収書もプライベートな支出と分けて保管しておくのがおすすめです。
アパート経営に関係する経費とプライベートの支出とで区別が難しいものがあります。例としては、プライベートでも使用している車や通信費など。前述のようにプライベートでも使用している車の損害保険料やガソリン代などは、アパート経営に関係した分は経費として計上可能です。通信費に関してもアパート経営に関係する電話の通話料、インターネット通信費は経費に該当します。
アパート経営とプライベートの区別が難しい場合は、家事按分の考え方を取り入れるとよいでしょう。アパート経営に関係した割合とプライベートで使用した割合に分けて計算するのが家事按分です。例えば、通信費なら「アパート経営に関係した時間/プライベートで使用した時間」、車なら「アパート経営に関係した使用量/プライベートでの使用量」など、数値化しやすい基準をもとに算出します。判断に迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。
【まとめ】
確定申告で必要経費として計上できるもの、計上できないものは、アパート経営に関係した費用かどうかを基準に判断します。必要経費の項目は税金や修繕費をはじめ多岐にわたるため、会計ソフトや出納帳を上手に活用し、経費を可視化していく必要があります。もちろん、アパート経営とは関係のないプライベートな支出と明確に分けて管理することも大切です。
必要経費を可視化することは、アパート経営の収支計画をより明確に立てることができるというメリットもあります。確定申告で必要経費を正しく計上することは長期的な節税対策にもつながり、アパート経営の収益を最大化する近道といえるでしょう。