住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
アパート経営に関わる税金は、不動産の取得時やアパート建設時など、経営を始める際のみにかかる税金と、毎年かかる税金とに大別されます。本記事では、このうち毎年の税金について解説します。
所得税は、アパート経営を通じて得られる「不動産所得」に対して課税されます。不動産所得とは、家賃や共益費、更新料など年間の総収入額から、各種の必要経費を差し引いたもので、20万円を超える場合は確定申告が必要になります。
住民税は、アパート経営者が居住する自治体に納める税金で、所得に基づき計算される「所得割」と、一律の「均等割」の総額で計算されます。
おおむね10室以上、または5棟以上のアパートを経営している場合、所得税や住民税に加えて個人事業税が課せられます。ただし、年間290万円の事業者控除があるため、不動産所得が年間290万円以下であれば実質的に非課税となります。
消費税対象となる売上高が年間1,000万円以上になる場合は、消費税が課せられます。アパートなどの賃料は消費税の対象外なので、アパートのみを経営している場合は基本的に消費税はかかりません。
アパート経営者が所有する土地や建物に課せられるのが固定資産税です。所得税などの国税とは異なり、市区町村に収める地方税で、毎年、納税通知書が届いて納めます。
固定資産税と同様、土地や建物に課せられる地方税で、市区町村が指定する「市街化区域」内に位置する土地・建物が対象となります。
また、都市計画税の課税は該当する市区町村により違いがあります。
ここからは、各種税金の計算方法を解説しながら、具体的な税額をシミュレーションします。なお、理解を容易にするため、あえて簡略化している要素もあることをお断りしておきます。
【シミュレーションの前提条件】
・500㎡の土地に8戸建てのアパート1棟を建てて経営
・アパート経営の年間収入は720万円、経費合計は514万円
・固定資産評価額は7,000万円
・確定申告の方法は「白色申告」
・所得控除の総額は150万円
・アパート経営以外の収入は、給与取得のみで年間600万円
※今回は分かりやすいように、アパートローンほか返済金額はない前提とします。
所得税の税額は、不動産所得や給与所得などを合計した年間の「総所得」から、各種の控除を差し引いた「課税所得」に税率をかけて計算します。税率は「累進課税」といって、所得が高くなるほど税率も高くなる仕組みです。
引用元:国税庁ホームページ「No.2260所得税の税率」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
(参照2022-05-06)
シミュレーションすると、不動産所得は年間収入から経費を引いた「720万円-514万円=206万円」となり、これに給与所得600万円を加えた「806万円」が総所得となります。そこから所得控除150万円を差し引いた「656万円」が課税所得です。その場合の税率と控除額は上記表のとおりですので、所得税額は「656万円×0.2-42.75万円=88.45万円」となります。
※令和19年までは復興特別所得税として、所得税額の2.1%が加算されますが、ここでは省略します。
住民税の税額は、前述のように所得割と均等割りの合算です。
所得割は、所得税と同様に課税所得ともとに計算されます。税率は一律10%のため、シミュレーションすると、「656万円×0.1=65.6万円」となります。
均等割は自治体ごとに設定されますが、東京都の場合は5,000円です(令和3年度)。
これにより、住民税の総額は「65.6万円+0.5万円=66.1万円」となります。
アパート経営にかかる個人事業税は、不動産所得から事業主控除(290万円)を差し引いたうえで、税率5%を掛けて計算されます。ただし、対象となるのは10戸以上、または5棟以上を経営する場合で、前提条件にある8戸だと事業的規模と見なされないため、事業税はかかりません。
また、前述のとおり消費税についても非課税となります。
固定資産税や都市計画税の税額は、市区町村の定める「固定資産税評価額」に税率をかけて計算されます。税率はどちらも一律で、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%です(自治体によっては異なる場合があります)。
ただし、住宅用地の場合は固定資産税評価額から減額された「課税標準額」がベースとなります。課税標準額の計算方法は、1戸あたり200㎡を越える「一般住宅用地」と、1戸あたり200㎡以内の「小規模住宅用地」とで異なります。固定資産税では、一般用住宅用地だと評価額の1/3、小規模住宅用地だと1/6となり、都市計画税では、それぞれ2/3、1/3となります。
前述の条件でシミュレーションすると、500㎡で8戸建てなので、1戸あたり62.5㎡となり小規模住宅用地に該当します。このため、固定資産税は「7,000万円×1/6×0.014=約17万円」、都市計画税が「7,000万円×1/3×0.003=約7万円」となります。
ここまでをまとめると、以下のようになります。
・所得税:88.45万円
・住民税:66.1万円
・個人事業税:0円
・消費税:0円
・固定資産税(土地):約17万円
・固定資産税(建物):約23万円
・都市計画税(土地):約7万円
・都市計画税(建物):約10万円
これらを合計した年間の税金総額は「約211.55万円」と、不動産収入の約30%に達します。
先程のシミュレーション結果を見て驚かれた人も少なくないでしょう。ただし、これは節税対策を十分に講じなかった場合の金額です。同じ条件でも、節税対策を講じることで税額を低く抑えることが可能です。
確定申告には、簡易な帳簿で申告できる「白色申告」と、やや複雑な書式が定められた「青色申告」の2種類があり、節税に有利なのは圧倒的に後者で、1世帯からでも申請は可能です。ただし申請するにあたり、「所得税の青色申告承認申請書」や必要に応じて「青色事業専従者給与に関する届出書」を事業開始2カ月以内または選択しようとする年の3月15日まで」に提出する必要があるなど注意が必要です。
青色申告にすることで、最大65万円の「青色申告特別控除」を計上できるほか、事業的な規模であれば、アパート経営を手伝ってもらった家族に支払う給与を「専従者給与控除」として計上できるなど、大きな節税効果があります。
アパート経営のためにかかった費用は「経費」として計上できます。所得税や住民税は、売上から経費を引いた所得をもとに計算されるため、売上は同じでも、経費が多ければ所得が下がり、その結果税額は低くなります。
オーナーさまの中には、賃貸管理会社や不動産会社への毎月の支払いなど、把握しやすい経費だけを計上している場合もありますが、現地確認のための「交通費」や事務用品などの「消耗品費」なども、領収書を管理して帳簿で管理することで、経費として計上しやすくなります。また、建物の価値を耐用年数に応じて分割計上する「減価償却費」も、しっかり計算して計上しましょう。
【まとめ】
アパート経営で想定外の税金を課せられ「こんなはずでは……」と後悔しないためには、各種の税金について正しく理解し、適切な節税対策を講じることが大切です。特に、日々の経費を細かく管理することは、そのまま青色申告の準備につながりますので、ぜひ、実行するようにしましょう。
【記事監修】 | 監修:曽根 恵子 株式会社夢相続 代表取締役 公認 不動産コンサルティングマスター相続対策専門士 不動産に関するプロフェッショナルとして、宅地建物取引士資格登録者/不動産鑑定士登録者/一級建築士登録者の国家資格登録者のみが受験し、5年以上の実務経験を必要とする国土交通大臣認定資格「公認 不動産コンサルティングマスター」の資格を持つ。 土地活用術などを駆使したさまざまな「相続プラン」を提案し、相続コーディネートをする株式会社夢相続を運営。書籍(著書・監修)75冊/累計67万部出版。テレビ・ラジオ出演、新聞・雑誌などのマスコミ取材も多数。 |
【代表的な書籍】 | 「相続になっても困らない 地主・農家さんのための“負”動産対策」 (クロスメディア・パブリッシング) |