住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
そもそも山とは「平地より著しく高く盛り上がった地形」のこと。土地の登記事項証明書の「地目」の欄に「山林」と記載されていれば、その土地が山ということになります。平坦ではなく、市街地からも離れた立地であることが多いことから、土地活用をしようと思ってもさまざまな制約があるのは事実。そのまま放置してしまうケースも多いかもしれませんが、それではリスクにもなりかねません。地目が「山林」でも、市街地で建物が建てられる土地であれば活用の方法はありますが、建物が建てられない山林は課題となります。
所有する山を活用せずに放置すると、具体的にどんなリスクがあるのでしょうか。山を相続すると相続人には管理義務が生じるため、他人や他人の所有物に損害を与えた場合に賠償責任も生じます。地震や台風など、自然災害時の不可抗力による損害は必ずしも賠償責任は問われませんが、所有者の管理不足や過失による倒木、枝の落下、土砂崩れ、山火事などで他人に損害を与えた場合は、賠償責任を負う可能性があります。
また、所有する不動産にかかる固定資産税は、山の場合も同様に支払いが必要です。固定資産税の税額のもととなる「課税標準額」が、宅地などとくらべて低いため、固定資産税の税額はそれほど高額にならない場合が多いのですが、なにもしなくても年間の収支はマイナスということに。せっかく資産のひとつである土地を所有しているのですから、土地活用で収益を得ることを考えてみてもよいかもしれません。
ただし、評価額が30万円以下の山林は、固定資産税は非課税となります。
管理や税金の支払いが負担に感じられる場合は、そのまま所有し続けずに売却を検討するのも一案です。ただし、山は購入希望者が少なく、すぐに買い手を見つけるのは難しい場合も。山林の取引実績がある地元の不動産会社に、仲介または買い取りを依頼してみるのがよいでしょう。買い取りの場合は売却額が安くなる可能性がありますが、スピーディに売却でき手間も最小限です。また、地元の森林組合や、所有する山と隣接する土地の所有者に相談を持ちかけてみるのもおすすめです。
管理が負担に感じられる場合、相続時に引き継がないという選択肢もあります。その方法のひとつは「寄付」。受け入れ先は、市区町村などの自治体、公益法人を含めた法人、自治会や町内会などが考えられます。受け入れ先にメリットがある山(土地)でないと難しい面がありますが、相談をしてみる価値はあります。ただし、行政では売却・換金できない土地の「寄付」は受け付けしないこともあるため、早めに確認しておきましょう。
「相続放棄」することにより、山を引き継がないこともできますが、相続放棄はすべての財産を相続しないということで、相続を知った日から3カ月以内に申述する必要があります。ほかに受け継ぐ財産がある場合は、慎重に検討しましょう。
管理や税金の負担があっても、山はうまく土地活用ができれば収益を生んでくれる可能性もあります。ここで紹介するのは山でできる土地活用。市街地から離れた立地や斜面という特徴を活かすことができれば、土地活用の選択肢は思っている以上にバリエーションがあります。
山の土地活用のひとつは、山をそのまま貸し出して収益を得る方法です。貸し出し先の候補には林業関係の法人や自治体がありますが、地元の建築会社や土木会社に資材置き場として貸し出せる可能性もあります。
山に施設をつくって自身で運営する場合、土地活用の選択肢は広がります。施設の例を以下にまとめました。
① キャンプ場
昨今のキャンプブームで、キャンプ場の需要が高まっています。コテージなどの宿泊施設を建てる場合は旅館業法の許可が必要ですが、利用者がテントを張って宿泊するキャンプ場の場合は不要。食材の提供がなければ飲食店の営業許可も不要です。利用者は自然の中で過ごすことを求めているので、木の伐採や整地なども最小限で済む可能性があります。ただし、水場やトイレなどの設置及び清掃や設備維持、利用者の安全のための管理は不可欠です。また、火を扱う場合は防火対象物使用開始届が必要な場合もあります。
② アスレチック施設
山の立地を生かして、アスレチック施設を設けて運営することもできるでしょう。木の伐採や整地のほか、丸太やロープなどが使われた遊具と、トイレや管理人小屋などの設置が必要になります。集客面で難しさがある場合は、レジャー施設の運営会社との協業や、土地を貸し出す形で行うことも検討しましょう。
③ サバイバルゲーム場
日本発祥といわれるサバイバルゲームは、地上戦を模して山林などでリアルに行うシューティングゲームです。自身がサバイバルゲームに詳しい場合は、おすすめできる土地活用のひとつ。適度に伐採や整地をして魅力的なゲーム場をつくれると、利用料や装備のレンタル料で収益を得ることができます。ゲームに使用されるBB弾が敷地外に出ないように防護ネットを張るなど、さまざまな安全対策が必要になります。
④ 太陽光発電
南向きの斜面があり、電柱が近くにある場合は、太陽光発電パネルを設置して「売電」によって収益を得る方法があります。ただし、木を伐採して整地したり設備を購入する必要があるため、まとまった初期費用がかかります。個人で売電のほか、土地ごと発電業者に貸し出す方法もあります。昨今は売電価格が下がる傾向にあり、投資した金額ほど収益が得られないリスクもあります。
自然の宝庫である山は、さまざまな生産物(特用林産物)ももたらしてくれます。所有する山の木材を販売することは林業にあたり、素人がいきなり始めるのは非常に困難ですが、伐採した木を薪ストーブ用の薪やバーベキュー用の炭に加工して、インターネットなどで販売することは林業と違い、比較的トライしやすいかもしれません。
【まとめ】
所有者になっても戸惑うことが多い山林ですが、所有者には管理義務があり、放置することにはリスクも伴います。また、評価額が30万円以上の場合は、所有している限り固定資産税の支払いは続きます。一般に山の土地活用は難しいと言われがちですが、山の特徴を活かした施設を設けて運営するなど、選択肢はないわけではありません。あきらめずに、有効な活用方法を検討しましょう。
【記事監修】 | 監修:曽根 恵子 株式会社夢相続 代表取締役 公認 不動産コンサルティングマスター相続対策専門士 不動産に関するプロフェッショナルとして、宅地建物取引士資格登録者/不動産鑑定士登録者/一級建築士登録者の国家資格登録者のみが受験し、5年以上の実務経験を必要とする国土交通大臣認定資格「公認 不動産コンサルティングマスター」の資格を持つ。 土地活用術などを駆使したさまざまな「相続プラン」を提案し、相続コーディネートをする株式会社夢相続を運営。書籍(著書・監修)75冊/累計67万部出版。テレビ・ラジオ出演、新聞・雑誌などのマスコミ取材も多数。 |
【代表的な書籍】 | 「相続になっても困らない 地主・農家さんのための“負”動産対策」 (クロスメディア・パブリッシング) |