住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
築50年のアパートは、躯体構造に関係なく減価償却期間が終わっています。そのため、所得税の負担増に加え、その築年数の古さから空室率が上がってしまう可能性も高いと言えます。
まずは、築50年を迎えるアパートの建て替えの判断基準について解説します。
アパートの建て替えを検討する空室率の基準は、一般的に「5割」と言われます。築50年ともなれば、ローンを完済していることも多く、賃貸収入をローン返済に充てる必要がないため、空室率が高くても問題ない場合もあるかもしれません。
とはいえ建物の老朽化は進んでおり、入居率が悪くなくても、安全面の観点から建て替えを行った方が安心です。
また、建て替えやリノベーションなどで入居者の立ち退き交渉が伴う場合は「立ち退き料」が必要になることが一般的です。立ち退き交渉は入居者が少ないほど費用が抑えられるため、空室が5割を超えていれば、検討してもよいでしょう。
まめなメンテナンスと適切な修繕で維持してきたアパートであっても、築50年となると維持するだけでも大変です。修繕費用もかさみ、家賃収入の手残りもわずか、という事態に陥ってしまう可能性も。計画的に修繕費用をプールしていたとしても、修繕/維持費用が経営を圧迫する前に手を打つ必要があります。
アパート経営では、常にリスクヘッジする姿勢が大切です。
建築基準法で定められている建物の耐震基準には「旧耐震基準」と「新耐震基準」の2つがあり、その境目は1981年6月です。この違いは、震度7程度の地震で損傷しないことを基準としているかどうか。2022年時点で築50年のアパートは、多くが旧耐震基準をもとに建てられているでしょう。
仮に旧耐震基準で建築された建物でアパート経営を続ける場合、安全面から考えると耐震補強工事を行うか、建て替えるかの二択となり、築50年を経過したアパートであれば、建て替えを選択したほうが現実的だと言えるでしょう。
建物は、竣工から時間が経つほど修繕箇所が増え、修繕も大規模になっていきます。築50年のアパートは、配管などの寿命も過ぎていますが、資金に余裕がない状態での見切り発車は危険です。
建て替えた物件で引き続きアパート経営を行う場合、ローンの返済期間や建て替え費用の内訳など、綿密な資金計画が必要です。
50年も経つと、建築当初と比べて、周辺環境や賃貸ニーズも大きく変化していることが考えられます。今後のアパート経営に重要な要素となる、現在の周辺環境を改めてリサーチしましょう。
50年間で自身のアパートが再建築不可物件になってしまった場合は、リノベーションやリフォームを検討してみましょう。ただし、根本的な建物の築年数は変わらないため、継続的なメンテナンスは必要です。
また、築50年のアパートをそのまま売却できることはまれと言われます。建物自体の資産価値がゼロとなっているため、更地にして売却することも検討が現実的です。
ただし更地のままで放置してしまうと、アパート経営時よりも高い固定資産税がかかります。駐車場経営など、別の活用法で一時的に収益性をもたせておくのも一案です。
実際にアパートの建て替えを検討している方が最も気になるのは、建て替えにかかる費用ではないでしょうか。アパート建て替えにかかる費用は、大きく分けて、①退去費用 ②解体費用 ③建設費用の3つ。築古アパートの場合、解体に思わぬ追加費用がかかったり、長期入居者に対しての立ち退き交渉が難航したりと独特の問題が起こることもあります。
内容 | 一般的な相場 | ||
退去費用 | 立ち退き交渉にかかる費用。 | 賃料×4~6カ月×入居者数 | |
解体費用 | アパートの解体費用。 | 延床面積×解体坪単価 | |
建設費用 | 本体工事費 | 建物の本体工事にかかる費用。相場は構造別の坪単価相場で計算する。 | 延床面積×建築坪単価 |
付帯工事費 | 本体工事以外の外構工事費など。 | 本体工事費×20% | |
建築諸費用 | 建築時にかかる諸費用。水道分担金や不動産取得税など。 | 100~200万円 |
アパートの建て替えは、ほとんどの場合、以下の流れで進行します。
1. プラン検討と決定
2. 立ち退き交渉と退去手続き
3. 解体工事
4. 工事請負契約~着工
5. 完成~入居開始
建て替えのプランニングから入居までは、一般的におおよそ3~4年かかると言われています。まず着手しなければならないのは、入居者への立ち退き交渉です。
家主の都合で立ち退きを依頼する場合、「借地借家法第26条」により、半年~1年前の通知が必要と規定されています。万が一、入居者とのトラブルが発生した場合には、裁判になる可能性もあるため、まずはしっかりとハウスメーカーなどのプロに相談するようにしましょう。
アパートの建て替えには多額の費用や労力がかかりますが、新築アパートに建て替えることで、収益の改善も見込めるでしょう。また、アパート経営は節税対策にもなります。
ただし建て替えにおいては、家賃収入が発生しない期間がある点にも注意が必要です。
アパートの建て替えでは、費用が数千万円単位で発生するほか、新たなアパートが竣工するまでに長い期間が必要となります。
注意すべきは、建て替え費用のうち、新築にはない「取壊し費用」と「立ち退き費用」は、銀行からの融資を受けることができないという点。この2つの費用は、建物が大きいほど、また立ち退き戸数が多いほど高くなります。建て替え費用を圧縮するには、前述したように、立ち退き費用をできるだけ抑えることもポイントです。
また、建て替えでは、立ち退きから竣工までアパート経営の収入が途絶えます。立ち退き交渉がうまくいかなければ、入居状態であっても退去までの家賃を免除したり、建物解体までに時間がかかり、工期が長引く可能性もあります。計画段階からおおよそどの位の期間、家賃収入がゼロでも問題ないかシミュレーションしておくことも必要です。
立ち退きを実施するにあたり、最も注意したいのが「裁判は避ける」こと。
裁判では、「借家人保護」のための法律である借地借家法に照らし合わせて判断を下されます。法律上、守られるべきは賃借人(借主)で、賃貸人の立場は弱いということを理解しておく必要があります。立ち退きをお願いする場合は、可能な限り話し合いで解決するように心がけましょう。
建て替えは解体工事と新築工事があり、一般的にはそれぞれの工事を専門会社が担当します。しかし別々に専門会社を選定して依頼した場合、情報の共有がなされず、オーナーさまが2社の間に立つ必要があります。
こうした問題を避けるため、新築工事を依頼するハウスメーカーなどに解体工事についても相談するようにしましょう。協力関係にある会社を紹介してもらえれば、解体から新築工事への移行もスムーズに行える可能性が高まります。
建て替えたアパートは、改めて減価償却期間が発生します。減価償却期間とは、建築時にかかった費用を法定耐用年数の期間で分割し、経費として計上できる期間。確定申告で経費として計上できるため、減価償却は自ずと節税につながります。
その一方で、相続税についても注意が必要。相続税は、被相続人の相続財産を法定相続人の人数や条件を控除して計算され、課税されます。賃貸住宅物件の相続税評価には、賃貸割合が加味されるため、空室率が高い状態だと賃貸割合が下がり、アパートの相続税評価額が上がってしまいます。そのため、空室をできるだけ減らすことが相続税の節税効果につながります。
また、建て替え費用をアパートローンで借り入れておくことも相続税対策として有効です。
【まとめ】
アパートが築50年にもなり老朽化すると、建て替えやリノベーション/リフォームの選択に迫られます。建物に何も手を加えずアパート経営を続けるのは、安全面からもリスク大。具体的なプランが見えない場合は、ハウスメーカーなどプロからのアドバイスも有効です。さまざまなリスクや可能性を考慮して、まずは立地に合った無理のない計画を立てましょう。
【記事監修】 | 監修:曽根 恵子 株式会社夢相続 代表取締役 公認 不動産コンサルティングマスター相続対策専門士 不動産に関するプロフェッショナルとして、宅地建物取引士資格登録者/不動産鑑定士登録者/一級建築士登録者の国家資格登録者のみが受験し、5年以上の実務経験を必要とする国土交通大臣認定資格「公認 不動産コンサルティングマスター」の資格を持つ。 土地活用術などを駆使したさまざまな「相続プラン」を提案し、相続コーディネートをする株式会社夢相続を運営。書籍(著書・監修)75冊/累計67万部出版。テレビ・ラジオ出演、新聞・雑誌などのマスコミ取材も多数。 |
【代表的な書籍】 | 「相続になっても困らない 地主・農家さんのための“負”動産対策」 (クロスメディア・パブリッシング) |