住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
令和4年4月1日から、家を解体する際には「石綿事前調査結果報告システム」による報告が義務化されました。一定規模以上(解体部分の床面積80㎡以上)の建築物の解体・改修工事をする場合は、労働安全衛生法に基づく石綿障害予防規則および大気汚染防止法に基づいて、家の建築資材にアスベストが含まれていないか有資格者が事前に調査を行い、結果を報告しなければならないルールがあります。
調査の結果、建築物にアスベストが含まれていた場合は、解体時に大気に飛散させないように作業方法が限定されます。アスベストを含む解体作業は危険性の低い順から3・2・1とレベル分けされており、アスベスト飛散の危険性が最も高いレベル1は、解体費用も高額になります。
「解体」とは建物を壊して撤去することですが、「解体工事」の工程はそれだけではありません。2000(平成12)年5月に建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律)が制定されてから建築廃材の処分方法は厳しく規制され、建物の構造や建材に合わせて適切に処分することが義務づけられました。
また、解体工事には騒音・振動の発生や飛散物などを伴うので、着工前にあいさつ回りをしてお知らせするなど、近隣への配慮と対策が不可欠です。
一般的な解体工事の工程は次の通りです。
1)【着工前の準備】近隣へのあいさつ、現地調査、養生シートなどの設置
2)【解体と撤去】屋根の撤去、内装や床・設備の撤去、重機による解体・基礎解体
3)【後処理】整地、廃棄物の運搬・処分など
解体工事は、建物の構造に合わせた解体が必要になるだけでなく、近隣との距離が近い、家の中に家具や設備が残っているなど、建物の状況に応じてさまざまな工法を使うため、費用は一律ではありません。
一般的には、木造住宅は解体しやすく、鉄骨造や鉄筋コンクリート(RC)造は堅固なだけに解体もしづらくなります。地域や敷地の状況により費用は変動しますが、一般的な解体工事費用の目安は下記程度と言われています(整地費用、アスベスト調査費用含む)。
木造 … 約3~5万円
鉄骨造 … 約5~7万円
RC造 … 約6~8万円
アスベスト除去費用は、処理面積とアスベストのレベルによって異なります。少し古いデータですが、国土交通省が2007年1~12月の施工実績をもとにした目安の除去単価は1㎡あたり1万円~8.5万円でした。
作業レベル | レベル1 | レベル2 | レベル3 |
主な作業箇所(アスベストが含まれる場所) | 天井、柱、壁の吹き付け材など | 内壁、配管、柱などの保温材や断熱材など | スレート屋根、床タイルやその他建材 |
1㎡あたりの単価 | 約1.5~8万円 | 約1~6万円 | 約3千円~1万円 |
アスベストを含む建造物の解体は、大気汚染の観点でも作業者の健康を守る意味でも慎重に進めなければいけないので、一般的な解体よりも工程が複雑になります。日数により人件費も増すので、解体費用が大幅に増えるのです。
これ以外にも、環境や状況に応じて発生する費用があります。
・塀や庭の木の撤去費用(大きさにより金額は変動)
・残置物撤去費用(量や内容により金額は変動)
家屋内に家具などが残っていて、それらの処分も含めて解体を依頼すると費用が加算されてしまう点にも注意しましょう。解体費用を少しでも安く抑えたいのであれば、たとえば家の中の家具や庭の木などは、できるだけ自分たちで移設や撤去、処分するという方法もあります。
「ガラ」とは地中に埋められていた埋設物のことで、多くはコンクリート破片などの建築廃材やがれきなどです。家が建っている間はほとんど気づかず、建て替えるための基礎工事や地盤調査で土を掘り返してみて初めて発見されるケースがあります。
建設リサイクル法が制定される前は建築廃材の処分方法に関する規制がなかったため、以前の建て替え時に排出されたがれきなどを、産業廃棄物として処分せずに土の中に埋めてしまうケースもあったようです。
発見されたガラは産業廃棄物として処分しなければなりませんが、その費用は廃材の種類によって異なります。たとえばコンクリート破片の処分費用が1㎥立方メートルあたり6,000円だったとしても、鉄筋が含まれた「有筋ガラ」になると1万5,000円になってしまうこともあります。さらに処分費用は一律ではなく、処分場のある地域によっても金額に差が生じます。
ガラ(埋設物)の有無や内容、量などは掘り起こしてみないとわからないので、処分費用が想像以上に高額になってしまった場合、建て替えの予算を見直さなければならなくなります。昔からの土地ではオーナーさまもガラの存在を知らないことが多く、解体工事時のトラブルの原因になるケースもあります。
土地活用を見据えた解体工事の場合は、建物の解体の段階からまとめてハウスメーカーなどに相談できる場合もあるので、早い段階から相談してみるのも一案です。
建て替えを意識した解体工事はどこに発注すればよいのでしょうか。工事ごとに自分で請負業者を探して金額交渉すれば費用を抑えることも可能ですが、業者ごとに得意とする工法も異なるため、金額の安さだけで決めてしまうのは早計です。請負業者の質もふまえて、業者を選ぶことが大切です。
解体工事の費用負担を軽くしたい場合は、自治体などが実施している補助金や助成金を活用する方法もあります。老朽化により倒壊の恐れがあると自治体が認めた建物や都市の景観を守ることを目的とした補助金、建て替え建設費補助金など、自治体ごとにさまざまな補助金が設けられています。
ただ補助金や助成金の申請には条件があり、自治体ごとに異なるため、解体工事が補助の対象となるかどうかは事前に確認しておく必要があります。
補助金や助成金を活用するには、一般的に着工前に申請する必要があり、審査結果が届くまでに時間がかかることもあるため、相談や申請は早めにしたほうが良いでしょう。
なお、補助金や助成金を受領できるのは、工事が終わってからになります。自費負担で解体工事費用を清算した後に、補助金や助成金を受け取ります。また、不足分の工事費の補てんには使えないので注意しましょう。
節税を意識するのであれば、解体工事の勘定項目にも気を配りましょう。「固定資産除去費」として費用計上すると経費となり所得が減るので、平年よりも利益が多く所得が高額になっている場合であれば、その年の節税効果が高くなります。
アパート経営のための建て替えを目的とした解体工事であれば「建物を新築するために必要な工事の一部」と考えて、資産勘定項目の「前払い金」に計上して減価償却することもできます。この場合は、長期的な節税効果を期待できます。
【まとめ】
解体工事は、今ある建物を壊して終わりというものではなく、新たな土地活用に向けたリスタートのために、いったん現状をリセットする大切な地ならしです。
建て替えが完了するまでは長期間の工事が続くことになりますから、解体工事の段階から近隣への配慮や廃棄物の処分などで適切な対応をとってもらえる業者を選ぶことも重要です。
アスベスト調査やガラの処分などは、専門的な知識が必要です。そのため、解体から建て替えまですべての不安に相談にのってくれる、信頼できるハウスメーカーなどに相談してみてはいかがでしょう。