住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
地震による資金ショートなどのリスクに備えるために活用することができる「PML」。基礎的な知識や活用法、算出方法を解説します。
アパート経営で何よりも避けたいことの一つに、資金ショートなどの深刻な金銭トラブルが挙げられます。資金ショートの発生リスクを下げるために知っておきたいのが「PML(Probable Maximum Loss/予想最大損失率)」という考え方です。
PMLは、一つの事故や事象で発生しうる最大損失率のことで、特に地震に対するリスクを評価する際に用いられます。噛み砕いていえば「被災時に、最悪のケースで支払うこととなるお金は、建物の建築費のうち何%か」の目安になる数字といえます。
地震に備えるため、どの程度普段から資金を用意しておけばよいのか把握できるほか、資金計画の基礎を作る指標としても役立ちます。
PMLは、以下の式で求められます。
最大予想損失額÷再調達額(建物を再度新築した場合の価格)×100
式に用いられる「最大予想損失額」や「再調達額」を割り出すには、物件の築年数や構造、用途だけでなく、過去起きた地震の震度、震源の深さ、地盤、断層の位置といった、さまざまな要素を考慮する必要があります。
このため、一般のオーナーさまが自力でPMLを算出するのは難しいといえるでしょう。ハウスメーカーや建築業者などによっては、一般顧客向けにPMLを調べてくれるケースもあるため、まずは相談してみることをおすすめします。
PMLは具体的に、どのようなタイミングで役立てられるのでしょうか。たとえば延べ床面積100坪弱の2階建てアパートに相当する、1億円で新築できる物件について、PMLが20%と算出された場合を考えてみましょう。
この場合、被害の総額は最悪のシナリオで2,000万円になることが予想されます(1億円のうち20%)。このケースの場合、普段から通常の運営費用に加えてキャッシュで2,000万円を準備しておけば、不測の事態にも対応できる可能性が高まるといえるでしょう。
さらに、現在物件の運用を検討している方は、物件を決定する際に建物のPML値をチェックしておくことをおすすめします。物件のPML値が低ければ、地震発生時に発生しうる最大の出費も少なくなることが予測されるためです。
アパート経営における金銭的なリスクとして、地震は特に注意が必要です。備えとして、地震保険を含むさまざまな対策を講じている方も多いことでしょう。しかし、地震保険をかけているから安心とは必ずしも言い切れないケースも少なくありません。その理由を詳しく解説します。
アパート経営では、収益に直接影響を及ぼすリスクへの入念な備えが必要です。一般的にリスクとして挙げられやすいのが、空室率の上昇や賃料の下落、変動金利によるローン返済額の上昇、修繕費用の発生などではないでしょうか。
こういったリスクへの対策を充実させるオーナーさまが多い一方、地震のリスク対策はやや手薄になりがちかもしれません。
しかし、地震は建物が直接ダメージを受けるため、修繕費が大きくなりやすい傾向があります。また、建物だけでなく、水道管などのインフラ修繕が必要になる場合も少なくありません。他のリスクと同程度に、備えをしておくことに越したことはありません。
事前にPMLをチェックし、地震発生時にどの程度の費用がかかることになりそうかをチェックしておくことは、リスク対策の一環として重要です。
地震による金銭面でのリスク対策として多くの人が選択しているのが、地震保険です。ただし建物の被害が大きくなった場合、それだけでは修繕費をまかなえない可能性もあります。
たとえば、地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額のうち30~50%の範囲でしか支払われません。さらに、建物については5,000万円、家財については1,000万円が上限です。
また、上限額までの支払いは建物が「全損」した場合のみ。たとえば、東日本大震災において、建物や家財が全損したのは全体のわずか4.9%です。多くの場合、上限額まで支払われることはないと考えておきましょう。
地震が起きても、資金ショートなどの問題に発展しづらい経営体制を作るためのポイントを詳しく解説します。
「地震に強いアパート経営」は、大きく分けて二つの側面があります。
1つ目は、耐震強度が高い物件を所有することによるハード面での「地震への強さ」です。耐震性の高い建物は、地震の際にも損害が少なく、修繕コストの削減に繋がります。
2つ目は、ソフト面での強さ、つまり地震が発生しても資金不足に陥りづらい経済的な体力です。
地震対策というと、ハード面での対策、つまり「耐震等級の高い建物を建築する」ことが注目されがちですが、実はソフト面での対策も同程度に重要であることを理解しておくと、アパート経営はより安定したものとなるでしょう。
ソフト面での対策を整えるためにも、PMLを用いて用意しておくべきキャッシュを把握し、予期せぬ出費に備えましょう。
ソフト面での対策には、地震保険やPMLだけでなく他にも用意しておけば、運営にさらなる安心感が生まれます。
たとえば、住宅メーカーの提供するサービスを利用するのは1つのアイデアです。
たとえばパナソニックホームズが提供する「地震あんしん保証」では、計測震度6.8以下の地震の揺れによる建物の全壊・大規模半壊・中規模半壊・半壊について、補修や建て替えに、1回の地震につき1棟あたり、 建物価格か5,000万円のうちいずれか低い金額が支払われます。
またこのサービスでは、年度のうちに何回か地震が起きる可能性にも対応しており、年度内で、総額10億円までが支払われます。
このサービスと地震保険をあわせて利用することで、地震保険からの保険金給付については建物以外の補修費用にも充てられます。
PMLによるキャッシュの用意や地震保険、各社のサービス利用を組み合わせて備えることで、より網羅的なリスク対策が可能になるといえるでしょう。
【まとめ】
アパート経営の大きなリスクである地震被害。物件を建て替えなければならないような被害もあり、資金ショートにつながってしまう可能性もあります。
出来うる限りの対策を取るためには、PMLの考え方を知っておくことが必要不可欠といえるでしょう。
また、地震保険への加入や、ハウスメーカーなどが独自に提供している保証を利用することも検討したいもの。
物件そのものを地震に強くするだけでなく、同時に、地震に強い経営戦略も考えておくことで、安定したアパート経営を実現できそうです。