住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
賃貸住宅経営は、建物が完成した後からが本番といっても過言ではありません。管理状態の良し悪しが住まいの印象や入居者の満足に影響を与え、収益性を左右するからです。そのため、オーナーさまが経営を行うにあたって、「管理形態」が重要課題のひとつになります。
賃貸管理には大きく分けて、オーナーさま自身が管理を行う「自主管理」と専門の管理会社に委託する「管理委託」、そして今回ご紹介する「サブリース方式」があります。
サブリース方式は、オーナーさまが賃貸管理業務の一部またはすべてをサブリース会社に委託することで、管理の手間を省きつつ安定した収入を確保することを目指します。一般的な管理委託方式との大きな違いは、空室状況に関わらずオーナーさまへの支払いは一定のため、サブリース会社が物件の空室リスクをある程度引き受けている点にあります。
一方で、その性質上、常に満室であってもオーナーさまの収入は、満室時の家賃収入からサブリース会社が一定の割合を差し引いた額を支払うことになります。
サブリース方式については、令和2年12月に施行された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(サブリース新法)」の中で「マスターリース契約」の内容が明示されていることもあり、最近は実務上においても「マスターリース」という言葉を耳にする機会が増えています。まずは、マスターリースとは何かを押さえておきましょう。
マスターリースとは、「一括借上げ」という意味です。そして、オーナーさまとサブリース会社(多くの場合は不動産会社)との間で締結される特定賃貸借契約のことを「マスターリース契約」と呼びます。この契約では、サブリース会社がオーナーさまから物件全体または一部を借り上げ、その後、個々の入居者に転貸します。また、サブリース会社は賃貸住宅の管理業務をオーナーさまに代わって行います。つまり、マスターリースは一括借上げという形で、物件の管理を一括して行う契約形態を意味します。
一方のサブリースは「転貸」を意味し、サブリース会社が入居者と賃貸借契約を結ぶ形態です。これにより、オーナーさまは入居者との賃貸借契約に直接関与する必要がなくなります。この三者間の契約形態を図にすると下記のようになります。マスターリース契約がオーナーさまとサブリース会社との契約であるのに対し、サブリース契約はサブリース会社と入居者との契約になるわけです。
実際には、マスターリース契約とサブリース契約を一括して「サブリース方式」または「一括借上げ」と呼ばれることも多いですが、賃貸住宅管理の複雑さが増すなかで、今後は業務上において認識共有を図るためにも、オーナーさまがこれらの基本的な知識を持っておくことが重要になるでしょう。それにより、サブリース会社との契約内容を深く理解し、自身の経営方針に沿った適切な選択を行うことが可能になります。
マスターリース契約により、オーナーさまには大きなメリットが期待できます。まず、賃貸管理の手間が大幅に軽減されます。具体的には、家賃の集金や入居者からの問い合わせ対応、設備の修理手配などの管理業務をサブリース会社に委託することができ、日常の管理業務から解放されます。とりわけ複数の物件を所有しているオーナーさまにとっては、マスターリース契約を結ぶことで時間と労力を節約できることが大きな魅力です。
また、マスターリース契約では相続税の節税効果が期待できる点もメリットのひとつです。賃貸用不動産は、自用の不動産と比較して転売がしにくいとみなされることや、借地借家法により入居者の権利が強く保護されることなどから、評価額が低く算定される傾向があります。特にマスターリース契約がある場合、安定的な収入が得られる一方で、賃貸物件としての制約が強まるため、不動産の評価額がさらに抑えられることがあり、結果として相続税の負担を軽減できる可能性が高まります。このように、経営の安定化と税務上のメリットを同時に享受できるのは、マスターリース契約ならではの特徴です。
マスターリース契約にはいくつかの注意点もあります。まず、契約の種類には「賃料保証型(賃料固定型)」と「パススルー型(実質賃料連動型)」があり、それぞれの特徴を理解したうえで、自身の経営方針に合った契約を選ぶことが重要です。賃料保証型では、賃料が固定されるため、経済状況にかかわらず安定した収入が得られますが、市場賃料が上昇した際にはその恩恵を受けることができません。一方、パススルー型では、実際の賃料に連動するため、収入が市場賃料に左右されるリスクがあります。
契約内容の定期的な見直しが求められることも考慮しなければなりません。賃料の減額や契約解約のリスクが伴うため、オーナーさまは契約書を注意深く確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することも必要です。例えば、借地借家法第32条の規定により、賃料の減額請求が可能となるケースもありますので、これに対する理解が不可欠です。
また、オーナーさまからの中途解約の可否については、借地借家法第28条に基づいて判断されます。この法律に基づく手続きを経ることで、オーナーさまは契約の中途解約を行うことができますが、その際には正当な理由が求められるため、契約前にこれらのリスクを十分に理解しておきましょう。
前述の契約内容の変更にも関わりますが、サブリース会社とオーナーさまの賃貸契約は個人の入居者と同様、「普通賃貸借契約」と「定期借家契約」の二種類に分かれます。上記の借家借地法第28条に基づく判断は、「契約を結んだ両者がともに解約の意思がなければ基本的に契約が更新され続ける」という普通賃貸借契約を結んだ場合となり、「事前に定めた契約期間が過ぎれば自動的に契約が終了する」定期借家契約の場合、契約の更新ごとに新たな契約として条件の変更が行われる場合もあります。当然契約期間が満了すれば解約した状態になりますので、どちらの借家契約なのか事前によく確認することで、契約条件の変更や契約終了の時期について目星をつけることができます。
管理内容の詳細についても事前に確認しておくことが重要です。一般的に修繕費やリフォーム費用はオーナーさまが負担するケースが多いため、契約前に各種費用の試算を行い、将来的な負担を試算し、準備しておくことが重要です。これにより、予期しないコストの発生にも慌てずにすみます。例えば、大規模修繕が必要となった場合、その費用はオーナーさまの負担となることが多く、こうしたコストを見越した資金計画が必要です。事前にこれらの条件を確認し、契約書に明記することが、後々のトラブルを防ぐための重要なステップです。
マスターリース契約を成功させるためには、信頼できるサブリース会社を選ぶことが何よりも重要です。サブリース会社を選ぶ際には、以下のポイントを重視すると良いでしょう。
まず、サブリース会社が豊富な経験とノウハウを持っているかどうかを確認しましょう。経験豊富な会社であれば、賃貸管理業務の各段階でのリスクを適切に管理し、オーナーさまにとってより良いサービスを提供できる可能性が高くなります。また、賃貸管理業務の一環として、家賃設定や入居募集、入居審査、契約・更新業務、家賃集金・督促などの幅広いサービスを提供しているかどうかも確認するべきポイントです。
また、契約期間や契約解除条件については、契約期間が長すぎると市場の変化に対応しづらく、解除条件が厳しすぎるとリスクが高まるため、これらの条件を十分に理解し、慎重に検討する必要があります。
具体的な事例として、パナソニック ホームズの「一括借上げ(特定賃貸借契約)システム」があります。同社は、賃貸住宅の建築から管理運営までを一貫して提供する体制を持っており、グループ会社のパナソニック ホームズ不動産がオーナーさまの賃貸住宅を一括して借上げ、下記のような賃貸管理業務をこなすことにより包括的なサポートを行っています。
家賃設定、入居募集、入居審査、契約・更新業務、家賃集金・督促、入居者さまからのお問い合わせ対応、設備などの修理手配、定期巡回・清掃、退去立会い、原状回復工事
さらに、「トータルサポートシステム」や「リフレッシュ積立」などの追加サービスも利用することもできます。賃貸住宅経営の流れや建物の経年変化を踏まえた事前の備えによって、万が一のときもスピーディーに対応ができ、物件を良好な状態に保ったまま満足な経営を継続することが可能です。
・トータルサポートシステム
各住戸における設備・仕様等の「経年劣化」や「通常損耗」については、国土交通省による「原状回復をめぐるガイドライン」によりオーナーさまが負担することになります。トータルサポートは、毎月定額の保守委託料を支払うことで原状回復にまつわる費用をパナソニック ホームズ不動産が負担するシステムです。
・リフレッシュ積立
賃貸住宅の美観維持に必要なリフレッシュ工事の費用の一部を積み立てるシステムです。オーナーさまに変わり、パナソニック ホームズ不動産が毎月オーナーさまに送金する借上げ賃料からリフレッシュ工事の積立金を控除し、提携金融機関に送金。金融機関が個々のオーナーさまの信託口座に資金を積み立てます。積み立てた資金で計画的にリフレッシュ工事を行うことで、賃貸住宅の資産価値を維持し、長期的な賃貸経営の成功をサポートします。
※建物の一括借上げには、一定の審査が必要となり、地域や条件などによってご利用いただけない場合があります。
※定期的に賃料の見直しを行います。あわせて、周辺市場の変化など借地借家法第32条の規定により、賃料は減額となる場合があります。
※一括借上げ契約の期間中においても解約となる場合があります。
なお、オーナーさまからの解約については、借地借家法第28条の規定により正当事由が必要となります。
【まとめ】
賃貸住宅経営において適切な賃貸管理方法を選択することは、非常に重要です。最近は、サブリース方式においてマスターリース契約という言葉が使用されるとともにその契約内容がより重視されています。契約に際しては、信頼できるパートナーを選ぶことも重要なポイント。ハウスメーカーの多くは、賃貸住宅を建築するだけでなく、その後の管理までをサポートする体制を整えているので、まずは相談のうえ、契約内容を慎重にチェックすることをおすすめします。