住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
アパートの建て替えが必要になる理由として「老朽化」があげられます。建て替えるには高額な費用と労力が必要なため、老朽化によるデメリットを承知で、建て替えずに賃貸住宅経営を続けることを考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、老朽化が進んでも建て替えを行わなかったアパートは、以下のようなリスクを負うことになります。経年による老朽化は避けられない問題。将来にわたって安定的に収益を得るための戦略のひとつとして、建て替えを意識しておくことが大切です。
●入居者が集まらず空室率が上がる
近隣に新築アパートが建つと、多少の家賃の差があったとしても、よほど設備面での差がなければ、入居者は離れていってしまいます。設備を更新しなければ家賃を下げることでしか対策できず、収益性が悪化する可能性があります。
●地震などの自然災害の被害を受けやすくなる
建築当時の耐震性が低い状態のままだと、地震によって建物の倒壊が起こりやすく非常に危険です。屋根など外装の劣化も、台風や大雨の被害を受けやすくなる要因になります。
●修繕費が高額になりがち
建物のあちらこちらに不具合が生じるようになるため、トータルの修繕費が高額になってしまう可能性があります。
●売却時に不利
最終的に売却する場合、買い手が見つからない、安価でしか売却できない恐れがあります。
アパートを建て替える場合、メリットの他にもちろんデメリットもあります。それぞれどのようなことが考えられるのでしょうか。
メリットについては、前述した老朽化リスクを回避できることが大きなポイントになります。アパートは新築であることが入居者集めに有利に働くため、空室率が上がり収益性の改善が期待できます。家賃を高めに設定できることも、収益面から見た大きなメリットです。また、耐震性がアップすることで、入居者に安全な住居を提供するという賃貸住宅経営における大前提を担保できるようになるでしょう。多額の修繕費はかからなくなり、築浅の場合は売却する場合も有利になります。
一方、デメリットは高額な建築費用が必要になること。さらに、建築期間中は家賃収入がゼロになることも忘れてはいけません。現在の入居者に立ち退きを依頼したり、新しい賃貸住宅のプランを検討したりと、時間と労力も必要になります。
ここからは、建て替えを検討するべきタイミングについて解説していきます。まずは建物や経営状況をもとにした目安を紹介。以下のような場合は積極的に建て替えを検討したほうがよいでしょう。
アパートには大規模修繕などを行わずに使うことができる「法定耐用年数」が定められています。建物の構造によって異なる年数は以下の通り。
木造…22年
鉄骨造…19年~34年(骨格材の厚みにより異なる)
鉄筋コンクリート造…47年
ただし、法定耐用年数までまったく修繕が必要なわけではありません。たとえば木造の場合の法定耐用年数は22年ですが、1K×10戸の木造アパートの場合、以下のような間隔で各種の修繕が必要になることが多いようです。(出典:国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」)
<修繕の内容>
・ベランダ、階段、廊下の塗装
・室内設備の修理
・排水管の高圧洗浄等
<費用の目安>
約70万円(1戸あたり約7万円)
<修繕の内容>
・屋根、外壁の塗装
・ベランダ、階段、廊下の塗装や防水処理
・給湯器の修理や交換
・排水管の高圧洗浄等
<費用の目安>
約520万円(1戸あたり約52万円)
<修繕の内容>
・ベランダ、階段、廊下の塗装
・室内設備の修理
・排水管の高圧洗浄や交換
・外構等の修繕
<費用の目安>
約180万円(1戸あたり約18万円)
<修繕の内容>
・屋根、外壁の塗装や葺き替え
・ベランダ、階段、廊下の塗装や防水処理
・浴室設備の修理や交換
・排水管の高圧洗浄等
<費用の目安>
約800万円(1戸あたり約80万円)
以上のように、修繕費はアパート経営の収支において非常に大きな負担となります。
老朽化により空室が増えたり、家賃を低く設定せざるを得なくなった場合は、家賃収入が修繕費に消えてしまうということも考えられるため、建て替えを検討するのが得策といえるでしょう。
空室率が高くなると家賃収入が減るため、当然のことながらアパート経営の収支は悪化してしまいます。しかし、てこ入れのための建て替えは空室率が3割前後ではまだベターなタイミングとはいえず、5割以上となったときが考えどきといわれています。これは、建て替えには現在の入居者への立ち退きが必要なため、空室率が3割前後では立ち退き費用がかさんでしまい、立ち退きの交渉にも手間がかかるためです。逆に空室率が5割を超えていると、収益性が低下しつつ立ち退き交渉が容易になっている状態だといえます。
前述したように、入居者に安全な住居を提供することがアパート経営における大前提です。地震大国の日本でアパートを耐震性の低い状態のままにしておくことは非常に危険であり、建築基準法では、「国民の生命、健康および財産の保護を図ることを目的とした最低限の基準」として「耐震基準」が定められています。
耐震基準は1981年(昭和56年)に大きく改正され、改正年以前の基準は「旧耐震(基準)」、改正以降の基準は「新耐震(基準)」と呼ばれています。また、2000年(平成12年)には、木造住宅を中心にさらに強化された耐震基準(2000年基準)が定められました。所有するアパートが旧耐震の場合、近年の大災害を引き起こしているような震度7の大きな地震が来ると倒壊の危険性があるため、建て替えを視野に入れた方が安心です。旧耐震からの建て替えは自治体から助成金が出る場合も多いため、建物が建っている自治体のホームページなどで確認しましょう。
ここまで、建物や経営の状況をベースにアパートの建て替えを検討するべきタイミングを説明してきました。建て替えのタイミングはそれだけではなく、オーナーさまの現在の状況や今後の人生設計も重要な判断材料になります。その代表的な例を紹介します。
アパートの建て替えは相続税の抑制にもつながるため、今から相続税対策を行いたいと考えているオーナーさまにとっては検討の余地があります。たとえば1億円を現金で所有している場合、相続時は1億円がそのまま相続税評価額となります。一方、相続が発生する前に現金をアパートの建て替えに使って減らしておくと、建物(アパート)にかかる相続税は固定資産税評価額で計算されることから、現金の場合より相続税が抑えられ、節税効果を見込めます。
空室が多いため十分な家賃収入が得られず、老朽化で修繕費が湯水のように出ていくアパートは、たとえオーナーさまにとっては思い入れがあっても、子どもや孫に不動産ならぬ「負動産」として敬遠されてしまいます。将来、子どもや孫に収益性の高いアパートを遺したいと考えるなら、建て替えを検討するのも一案。老朽化した建物から新築の建物への資産の組み換えを行うことで、収益性を向上させた状態で子や孫にアパート経営を引き継ぐことが可能になるでしょう。
【まとめ】
アパート経営を続けていくうえで検討が必要になる建て替えの問題。建て替えを検討するべきタイミングは、築年数や老朽化の進行が判断材料になります。さらに、空室率などの経営の状況やオーナー様の今後の人生設計にも目を向けることが大切です。収益性が改善されたり、子どもや孫に収益性物件を引き継げるため、的確なタイミングを見極めましょう。