住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
土地活用や賃貸住宅経営を考えられている方なら、「ZEH(ゼッチ)住宅」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。ZEH住宅とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、住宅でのエネルギー消費を抑えるだけでなく、再生可能エネルギーを使って実質的にエネルギー収支をゼロにしている住宅を指します。具体的には、断熱性の向上や省エネ性能の高い設備の導入によって住宅内のそもそもの消費エネルギーを減らしたうえで、さらに太陽光発電などを利用することによって、差し引きで実質的な消費エネルギーをゼロにできるということです。
消費エネルギーを減らすことによって地球環境への負荷を軽減するだけでなく、断熱性能などで夏も冬も快適な住まいを実現できます。
2015年に基準が制定されたZEH住宅は、2013年までの省エネ基準による住宅と異なり、さらに厳しい基準が設けられていて、政府もその普及に向けた支援を行っています。国は2030年までに新築住宅においてZEHの導入率を半分以上にする目標を掲げていて、補助金制度や税制優遇措置が整備されている点も注目です。
ZEH住宅の基準を達成するためには、「断熱」「省エネ」「創エネ」という3つの要素が必要不可欠です。エネルギー収支ゼロを目指す3つの要素を紹介します。
ZEH住宅でいちばんの特徴といわれるのが高断熱性です。高断熱性能により、冬は暖かく、夏は涼しい快適な住空間が保たれ、冷暖房のエネルギー消費を大幅に削減できます。方法としてはZEH基準で定められた性能を満たした断熱性能の高い窓や外壁材、断熱材を建築時に用いることで、室内外の温度差を抑え、少ないエネルギーで快適な空間を維持することが可能です。
高断熱とともに、ZEH住宅ではエネルギーの効率的な使用も重要です。高効率なエネルギー使用のためには、冷暖房設備や給湯器、LED照明、換気システムなどの省エネ機器の導入が必要となります。また、HEMS(ヘムス/Home Energy Management System)と呼ばれる家庭内のエネルギーを管理するシステムを活用することで、エネルギー使用量を見える化しながら無駄を省くこともできます。
太陽光発電などを利用して、家庭内でエネルギーを「創り出す」ことを意味する創エネ。ZEH住宅では、太陽光発電パネルの設置が一般的です。昼間に自家発電した電力を自宅で使いながら、余剰電力は蓄電池に蓄えて夜間に利用したり、電力会社に売電したりすることもでき、これによってエネルギー収支がゼロ、さらにはプラスになることを目指します。
ZEH住宅は主に戸建住宅向けの基準ですが、アパートやマンションなどの集合住宅の場合には「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」という基準があります。建物の規模が多様な集合住宅では基準となる「ZEH-M」のほか、「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH-M Oriented」といった3つの基準があり、それぞれ階数やエネルギー削減目標に違いがあります。段階的に基準が設けられている理由としては、とくに高層のZEH-Mの場合、太陽光パネルを設置する屋根面積に対して戸数が多くなり、太陽光発電などですべての一次エネルギーをまかなうことが難しいからです。
基準 | 階数 | 断熱性能 (全住戸で達成) | 一次エネルギー消費量の削減率 | |
省エネのみ | 再生可能エネルギーを含む | |||
ZEH-M | 1~3階 | 強化外皮基準 (ZEH基準相当) | 20%以下 | 100%以上 |
Nearly ZEH-M | 75%以上、100%未満 | |||
ZEH-M Ready | 4~5階 | 50%以上、75%未満 | ||
ZEH-M Oriented | 6階以上 | 再エネ導入による削減率の定めなし |
ZEH住宅は2020年にハウスメーカーが新築した戸建物件のうち、約56%を占めるようになりました。そして、賃貸住宅にもその波は及んでいます。国によるZEH化の推進が加速しており、2025年度からは新築賃貸住宅にも断熱等級を引き上げた基準が設けられ、賃貸住宅のZEH-M化が進んでいくでしょう。また、省エネ性能を示す「省エネ性能ラベル」の普及によって、エネルギー効率の良いZEH-M賃貸住宅が入居者に選ばれやすくなる可能性が大いに考えられます。賃料住宅経営においては、ZEH-M賃貸住宅の導入が入居者やオーナーに多くのメリットをもたらしてくれるでしょう。ここでは、賃料住宅経営をZEH-M賃貸住宅で行う6つのメリットを解説していきます。
ZEH-M賃貸住宅は断熱性能が高く、室内温度を快適に保てるため、冷暖房によるエネルギー消費が抑えられます。その結果冷暖房費や光熱費を節約できるZEH-M賃貸住宅は、入居者にとって「コストパフォーマンスが良い」として価値を感じてもらいやすくなる特徴があります。また、室内の温度変化が少ないことから結露が起きにくくカビが発生しにくいというメリットや、屋内の温度差によるヒートショックなどの健康リスクも低減されるメリットもあります。このような点をアピールすることで、近隣の通常物件より家賃を高めに設定しても入居者に納得してもらいやすい土台になります。
ZEH住宅には、省エネ性能を示すラベルにZEH-Mマークが付与されることから、物件の広告やカタログなど、入居者募集時にZEH-Mマークをアピールすることが可能になります。入居者はZEH住宅であることを一目で確認でき、エネルギー効率や居住性に対して信頼感を持ちやすくなります。省エネ性能ラベルではそのほかにも消費エネルギーの削減率や断熱性能の等級、削減できる電気代の目安なども視覚的に確認できるため、他物件と比較検討している入居者に対して有効なアピールになります。
ZEH-M基準を満たす賃料住宅は、国の補助金制度を利用できる可能性が大いにあります。経済産業省と環境省による公募制度に、集合住宅の省CO2化を促進するための補助金制度があり、これを活用することで建築コストを抑えることが可能です。たとえば2020年度には新築低層(3階以下)でZEH-MもしくはNearly ZEH-Mを満たした住宅に対して、一戸あたり40万円という補助金が設けられていました。札幌市や広島市など一部の地方自治体でも独自の補助金制度があり、国の支援と併用できるケースもあります。こうした補助金制度を利用することで、建築費用の負担が軽減でき、ZEH-M賃料住宅の建設を進めやすくなります。
ZEH-M賃貸住宅では、共用部やエレベーターなどに太陽光発電で生み出した電力を利用して賃料住宅のランニングコストを低減しながら、余剰電力は電力会社に売却し、オーナーさまが収益を得ることができます。
ZEH-M住宅は、賃貸併用住宅としても相性が良いのも特徴です。オーナーさま自身が住む住戸も含んだ賃貸併用住宅は、建物全体の規模が大きくなり、より多くの太陽光発電パネルを設置できるでしょう。そのため創エネ効率が上がり、発電した電力をオーナーさまの住戸でも利用することも可能になり、電気代の削減が期待できます。複数世帯で賃貸併用住宅に住む場合は、オーナーさまのご家族が住む住戸に太陽光で発電した電力を振り分け、複数世帯で電気代を削減することもできるかもしれません。
太陽光発電システムに自立運転機能が搭載されていれば、停電時でも昼間の発電を利用することが可能です。さらに蓄電池も設置することで、余剰電力を蓄えて夜間にも電力が使えるようになり、電気代の削減が期待できます。さらに、災害によって周囲が停電した際にも、日中であれば発電した電力で入居者に安心感を与えることも考えられます。このような「レジリエンス住宅」は、災害が多い日本においてはオーナーさまと入居者の生活を万が一の場合でも守れる有効な手段になるでしょう。
ZEH-M賃貸住宅の経営はプランニングの段階から気を付けたいポイントがあります。
各種省エネ設備を盛り込んだことによる建設費の増大を、補助金や税制優遇を活用しながら長期的な収益につなげていくための計画や、土地の立地に基づく太陽光パネルの設置方法など、事前によく練り込んでおく必要があります。
また、太陽光パネルや蓄電池、高効率給湯器など、各種省エネ設備については、定期的なメンテナンスが必要となります。そのため、長期的な設備メンテナンスを行ってくれるハウスメーカーを選ぶことが重要です。
ZEH賃貸住宅は、省エネ性能の高さや環境への配慮がメリットとして注目されていますが、その一方でデメリットも存在します。まず建築時には、屋根に太陽光発電パネルを設置することが基本となるため、建物のデザインに一定の制約がかかります。これは、デザイン性を重視したいオーナーにとってはデメリットになるかもしれません。また、太陽光パネルを売電目的で設置しても、売電価格によっては収益がそこまで上がらない可能性があります。共用部分や賃貸併用住宅の自宅部分など、自家利用をうまく活用することも検討しましょう。
ZEH-M賃貸住宅の導入を検討する際は、これまでZEH-M賃料住宅を建ててきた実績ある会社選びが肝心です。実績のある会社から、オーナーさまは持っている技術を実際にどのような形で物件に反映してきたか実例で説明を受けることができますし、各設備のメンテナンス体制についても様々な事例で紹介してもらうことができます。また、多数の物件を建ててきたことで、オーナーさまの要望を叶えるノウハウが蓄積されているとも考えられます。
信頼できる会社を選ぶ際は、「一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)」が提供する「ZEHディベロッパー一覧検索」を利用するのも有効です。サイトでは、地域ごとにZEHの実績を持つ会社を検索でき、補助金や省エネ基準に詳しい会社を探すことができます。
【まとめ】
省エネ・断熱性能にすぐれ、住宅内の消費エネルギーを抑える各種設備と太陽光発電などの併用により、省エネルギー性と入居者の快適な暮らし、そして災害時の強さを兼ね備えているZEH-M賃料住宅ですが、建築時のコストの増大や多岐にわたる設備によるメンテナンスの課題など、固有の問題も抱えています。賃料住宅としての収益性を保ち、オーナーさまの要望を叶えたZEH-M基準を満たす物件を建築して運用していくためには、実績から技術力やプランニング力を判断し、省エネ性能が高い賃貸住宅を建てられる会社を選びましょう。