住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】

認知症の方が作成した遺言が、認知症というだけで即無効になるわけではありません。認知症の診断を受けていても、有効か否かの判断基準は、あくまで「遺言作成時の意思能力」にあります。
しかし、意思能力の判断には専門的な知識が不可欠です。特に、認知症には「判断能力の低下」といった症状もあり、自身の財産を管理・相続する手段を正しく知り、早めに準備しておくことが重要です。
※認知症とは?
認知症とは、「様々な病気により、脳の神経細胞の働きが徐々に変化し、認知機能(記憶、判断力など)が低下して、社会生活に支障が生じた状態」を言います。認知症ではないかと思われる言動には、「もの忘れがひどい」「判断・理解力が衰える」「時間・場所が分からない」「人柄が変わる」などがあります。
(引用元「知っておきたい認知症の基本|政府広報オンライン」
https://www.gov-online.go.jp/article/202501/entry-7013.html#:~:text=大使」の活躍-,1認知症とは?,と考えられています。&text=記憶障害などの軽度,移行するとされている。(参照 2026-04_21))
結論から言えば、認知症の方が作成した遺言書でも、法的に有効と認められる場合があります。
具体的には、「遺言能力」について定めた民法の条文を見てみましょう。
(引用元「民法|e-Gov 法令検索」
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_7-Se_1(参照 2026_04_21))
つまり、認知症の方でも遺言をする時に15歳以上であり、財産を相続させる意味・内容や、譲った後の結果を理解する能力(意思能力)があれば、有効な遺言書を作成できるのです。
「遺言能力」の有無は、医師の診断だけでなく、当時の生活状況、精神状態、遺言内容の合理性や複雑さなどを総合的に考慮して、裁判所が判断しています。認知症の具体的な症状と診断時期は、それだけで結果が決まるものではありませんが、遺言能力に影響する重要な要素です。
認知症の診断前であれば、通常は判断能力があると考えられ、遺言の有効性が争われにくい傾向があります。一方、認知症の診断がつくと、本人の状況から有効であっても無効を疑われる可能性が高まります。
医学的な指標である「長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS‐R)」の点数は、遺言の有効性を左右する要素ですが、「30点満点中、この点数を下回れば、自動的に遺言が無効になる」という一律の基準は存在しません。遺言の有効性は、あくまで遺言能力で決まるからです。
上述の「長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS‐R)」において、裁判実務などで一般的に意識されている目安は存在します。
基本的に有効とされやすいが、内容の複雑さにより個別に判断される
軽度の認知症の疑いがあり、遺言内容の整合性や作成の経緯を厳しく問われる
中等度の認知症の疑いがあり、遺言能力が否定される可能性が高い
高度の認知症の疑いがあり、有効性の立証が困難
注意点としては、15点以下でも、遺言内容が単純なものであれば有効と認められるケースもあります。逆に20点以上の結果でも、複雑な内容を理解できていなければ、無効とされる可能性があります。
公正証書遺言の作成においては公証人が立ち会い、遺言作成当日の本人の理解力や、一定の意思、受け答えの様子を直接確認します。遺言の有効性は「遺言能力」だけでなく、医師の診断とその時期にも左右されますが、公証人が関与するため、無効になるリスクを低減できます。
相続者間において、診断前よりも診断後のほうが争われやすくなります。例えば、認知症の方が特定の相続人により、遺言内容を誘導されるケースもあり、裁判で遺言書が無効と判断されるリスクが高くなります。
また、上述の「長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)」で言えば、検査の点数が低い時期に遺言書を作成した場合、後に遺言の無効を主張されるリスクが高まります。
そのため、遺言書作成時に「遺言の内容を理解し、判断する能力に問題ない」旨を記載した診断書を医師から取得しておくことが実務上有効な対策とされています。これは、将来の無効主張に対抗するための有力な証拠となるからです。
【広島高裁 令和3年8月9日】
遺言作成過程を記録した映像において、遺言者が自発的に意思を表明し、特定の相続人など第三者による誘導や強制がないことが確認できました。認知症の診断後でも、遺言作成時の記録を遺しておいたことが、遺言能力を判断する証拠となった事例です。
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認知症の診断前であるか、あるいは遺言書作成時に精神状態や認知機能が分かる診断が出ており、本人が遺言内容を正しく理解できる能力(遺言能力)があれば、法的に有効な遺言書を作成可能です。
「生前贈与」や「不動産売却」は「契約」という法律行為のため、判断能力が失われると手続きが不可能になります。そのため、認知症になる前の意思能力が十分にある時期であれば、生前贈与・不動産売却を活用できます。
もちろん、賃貸経営を安定させ、相続争いを回避するために、遺言書を作成しておくのが効果的です。必要に応じて贈与を取り入れることで、将来の争いの種を摘み取ることができます。
なお、認知症が不安な場合は、公証人が本人の意思を確認する「公正証書遺言」が最適です。
認知症になると、自分の介護・生活・水道光熱費などにかかる費用の支払いが困難になるリスクがあります。そうしたリスクの備えとなるのが「家族信託」です。家族信託は自分の財産の管理・処分を家族に託すための「契約」であり、判断能力が低下した後も、介護費用を捻出するために家族が不動産を売却するなど、柔軟な財産管理が可能になります。
ただし、家族信託も生前贈与や不動産売却と同じく、本人の意思能力を要する法律行為です。本人の判断能力が十分なうちに手続きを進める必要があります。
物忘れがあっても日常生活を送れている「グレーゾーン」の方の判断は、実務上難しいものです。
上述の「家族信託」について言えば、「はい」「いいえ」で明確な意思表示ができ、「自分の財産を誰に託すか」を正しく理解できていれば、公証人の判断次第で契約できる可能性があります。
公正証書遺言の作成においても公証役場は、遺言作成当日の本人の遺言能力を慎重に判断しています。公証人は「その瞬間」の本人の理解力を重視しますが、受け答えに矛盾がないというだけで必ず作成できるわけではありません。
また、金融機関も独自基準で判断します。自分の名前・生年月日・住所をスムーズに言える、本人が銀行員と視線を合わせた会話ができる、「孫の入学祝いとして10万円」のように目的と金額が明確であるといったケースです。
一方で、暗証番号を何度も間違える、銀行員の質問に対して同行した家族の顔を伺いながら答えるといった様子が見られると、手続きを断られる可能性が高まります。
一度でも「意思能力に疑義あり」と判断されると、取引が非常に困難になる場合があります。グレーゾーンだと感じた時点で公証役場などに相談し、法的に有効な遺言書の作成や、家族信託の契約手続きを進めておくことで、本人の資産を適切に守り、管理できるようになります。
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遺言や生前贈与、不動産売却は、いずれも本人の意思能力を必要とする法律行為です。
民法第3条の2では、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と定められています。そのため、意思能力を欠く場合は、遺言や契約行為は原則として無効となります。これは、本人の財産を保護するための規定でもあります。
(引用元「民法|e-Gov 法令検索」https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_7-Se_1(参照 2026_04_21))
本人の意思能力がないことを理由に原則不可とするのは、本人の財産を守ることにもつながります。
金融機関は「口座名義人」の財産を守る立場にあり、本人の意思能力がないと判断すると、預金保護のため凍結手続きをする可能性が高まります。
多くの金融機関では「法定後見人」を付けることを推奨していますが、2021年2月に発表された「全国銀行協会の新指針」を受け、一定の条件および厳格な審査を経て、家族による預金引き出しを認める運用が始まっています。
ただし、成年後見人が選任された後は、この制度を利用できない点に注意が必要です。
「成年後見制度」とは、認知症などで判断能力が不十分になった方に代わり、家庭裁判所に選任された支援者が財産管理や契約手続きを行うことで、本人の権利と生活を保護する制度です。法律的に本人の財産を動かす主要な手段でもあります。
制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分けられます。
1.法定後見において、本人の判断能力により支援者が3段階(後見、保佐、補助)に分かれており、判断能力が欠けている方につくのが「成年後見人」です。
不当な契約の取り消し、介護施設に入所するための契約といった、本人(成年被後見人)を守るための法律行為。
遺言書の作成代行、相続税対策、親族への贈与、投資運用、不動産の買い替えなど、本人(成年被後見人)の財産を減らす行為。
成年被後見人は、原則として遺言能力がないと推定されます。ただし、一時的に遺言能力が回復した状態になれば、例外的に作成が認められます。その際は、民法第973条に基づき「遺言をするには、医師二人以上の立会い」が必須となり、ハードルは高くなるものの遺言することは可能とされています。
(引用元「民法|e-Gov 法令検索」
https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-Pa_5-Ch_7-Se_1(参照 2026_04_21))
2.信頼できる人に財産の管理を任せられる「任意後見人」
任意後見では、財産管理や医療契約、施設への入所契約などを代わりに行ってくれる人(後見人)に、自分をよく知っている人を選ぶことができます。
なお、この任意後見契約は、「任意後見契約に関する法律」第3条において「法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならない」と定められています。
(引用元「任意後見契約に関する法律|e-Gov 法令検索」
https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000150(参照 2026_04_21))
言葉が出にくい状態でも、公証人の質問に対して的確な身振りや頷きで意思表示ができ、契約内容を理解していると判断されれば、任意後見が間に合う可能性があります。ただし、公正証書遺言と同じく、意思の確認は非常に厳格に行われます。
認知症と診断されている場合は、本人の意思で財産を動かすのは困難です。法定相続分で財産を分けると決めていても、「預貯金の引き出し」や「不動産の売却」ができず、本人の介護費用を捻出できなくなる恐れもあります。家族が介護費用や医療費を立て替えた際は、後に他の相続人と揉めないよう、領収証などすべての記録を残しておくのが適切な手段です。
今回は、認知症と遺言の関係について、診断前後で異なる判断基準や、相続前に行うべき準備を解説しました。認知症と遺言の関係では、「診断の有無」より「作成時の意思能力」が本質的な判断基準になります。将来のリスクを回避し、家族の負担を抑えるためにも、早めの確認・準備が最良の手段となります。ぜひ本記事を参考に、対策を検討してみてください。
※不動産をどう残すかでお悩みの方へ

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