住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
吹き抜けのある住宅は、明るく広々とした空間をつくれるので、人気があります。また、デザイン性の高さもあり、おしゃれな雰囲気にしたい人にはぴったりの空間です。一方で、「吹き抜けを設けたことで、かえって暮らしにくくなったという声も聞かれます。
本記事では、吹き抜けのメリットやデメリット、設計後に後悔しないよう気をつけておきたいポイントについて解説します。吹き抜けの特徴を理解して、メリットを最大限活かした住まいを目指しましょう。
吹き抜けとは、上下階をつなぐ天井や床をなくし、ひとつなぎにした空間をいいます。戸建ての住宅では、玄関ホールやリビング内、階段に設置するケースが多く、デザイン性の高さが一番の特徴です。
吹き抜けがあると、海外住宅のような開放感のある空間を演出できます。上階から1階を見下ろせたり、1階からは高い天井を眺められたりして、視覚的にも広々とした印象になるでしょう。
吹き抜けは2階建て以上の住宅に採用される印象がありますが、平屋でも導入できます。平屋の場合は、スキップフロアと組み合わせて吹き抜けにするケースが多いようです。
ここでは、吹き抜けを取り入れることで得られるメリットをいくつか紹介します。
吹き抜けといえば、見た目のデザインが優れている点がまずは挙げられるでしょう。
吹き抜けのある空間なら、モダンで洗練された印象を演出できます。高い天井を活かして、おしゃれな照明器具を設置したり、間取りを個性的にできたりと楽しみ方も多種多様です。
たとえば、リビング内に階段と合わせて取り入れると、それだけでラグジュアリーな雰囲気になるでしょう。他にも、スキップフロアを設けて、スキップフロアから1階を見渡せるような吹き抜けにするのもおすすめです。
吹き抜けのある空間には天井から明るい光が差し込みやすくなるため、採光性や通風性が良くなるメリットもあります。2階部分に設置された窓や天窓から自然光が優しく降り注ぎ、室内が照らされているように明るくなるでしょう。
また、採光性の低下が気になる平屋でも、吹き抜けがあれば光が届きにくいデメリットを解消できます。一般的に吹き抜けは平屋では見かけないイメージがあるかもしれませんが、平屋でも問題はありません。
風通しの点でも、温かい空気が高いところへ昇る特徴を活かして吹き抜けが利用できます。空気の巡りが良くなる位置に効率良く窓を設置することで、吹き抜けの利点を存分に活かした快適な空間に仕上がるでしょう。
吹き抜けのある空間では、上下階の間を遮るものがなくなり、家族の気配を感じやすくなります。そのため、家族との会話が自然に増えるでしょう。
特にリビング階段と組み合わせると、家族が帰宅時に必ずリビングを経由して自室へ入るようになり、顔を合わせる頻度も高まります。また、吹き抜けを通じて子どもが2階で勉強したり、遊んだりする様子をうかがいながら、安心して家事や仕事に取り組めるのも魅力です。
空間の広がりが感じられる点も、吹き抜けのメリットです。吹き抜けにより、1・2階の空間がつながり、抜け感のあるリビングや玄関コーナーになるでしょう。
また、天井が高くなることで圧迫感が軽減でき、部屋自体も大きく見える効果があります。家族やゲストが集まるリビング空間は、人が増えれば増えるほど密度が高まり、狭さを感じやすいものです。
しかし吹き抜けがあれば、狭小住宅やリビングの面積が取れない住宅でも、実際の面積よりも広く見えて視覚的にも奥行きを感じられるでしょう。
平屋に吹き抜けを採用する場合も、縦の空間を活用でき、立体的で開放感のある空間に仕上がります。
吹き抜けがあると、気分の上がるおしゃれな住宅に感じられるのが魅力です。
しかし一方で、生活が不便になってしまう点もあります。吹き抜けのデメリットも合わせて理解しておきましょう。
吹き抜けがあると、室温を調整するのが難しくなります。吹き抜けのある空間は縦に広がっているため、暖かい空気が上の方にたまりやすくなります。
吹き抜けの天窓や上階の窓から、自然光を取り込みやすくなるのは魅力です。しかし、夏場は2階が暑く、冬場は床に近い1階が寒くなるかもしれません。季節によっては、冷暖房が適切な設定温度になるまで時間がかかり、光熱費も高くなってしまうかもしれません。
LDK内に吹き抜けがあると、食事中やリビングでリラックスしている際もなかなか空調が効かずに、過ごしにくいと感じる場面があるかもしれません。
吹き抜けによって、家族間のコミュニケーションが取りやすくなるのがメリットのひとつだとお伝えしました。しかし同時に、家族の生活音が上階にも伝わりやすくなる点には注意しましょう。
たとえば、1階のリビングで静かに読書をしているときに、2階から子どもが走り回る音が聞こえてきたら、集中できないかもしれません。
音だけでなく、料理の香りが2階まで届き、カーテンなどの布製品や壁紙にまで匂い移りしてしまうかもしれません。料理によっては翌日まで匂いが残ると不快な気分になる懸念もあります。
吹き抜けは、窓や照明器具が高い位置にあるので、掃除やメンテナンスがしにくくなります。
窓の掃除や電球の交換も高所作業になるので、人によっては「こんなに管理が大変だと思わなかった」と吹き抜け構造にしたことを後悔するかもしれません。
吹き抜けは上階との間に天井や床を設けない構造のため、2階部分の床面積がどうしても少なくなります。上階の床面積が減少すると耐震性が低くなり、横揺れに弱くなる可能性があります。
耐震性を高めるには、床の水平構面の強度を増す必要がありますが、吹き抜けでは水平構面をうまく固められず、どうしても耐震性が下がってしまうのです。耐震性を高めるには、耐震等級3相当の性能が確保された設計プランを専門の住宅会社に組んでもらう必要があります。
耐震性が低くなるデメリットをよく考慮しつつ、間取り設計や床面積を決めていくことが吹き抜け構造では求められるでしょう。
吹き抜けのデメリットを踏まえて、どうしたら満足のいく吹き抜けを設計できるのか、後悔しないために知っておきたいポイントを解説します。いずれも必要な対策ばかりのため、しっかりと取り入れながら家づくりを考えましょう。
吹き抜けは注意しないと、子どもや高齢の家族、ペットが転倒してしまう恐れがあります。たとえば、開放感を求めてスケルトン階段や2階に隙間のある柵を設置している場合は特にリスクが高まるでしょう。
対策としては、手すりや柵の隙間をなるべく狭くして、人や動物が遊んだり、すり抜けたりできないようにします。他にも、腰の高さまで設置する腰壁の素材を強化ガラスにするといった対策も有効です。
解放感と引き換えに思わぬケガにつながる可能性もあるので、万一に備えて事故対策を万全にしておきましょう。
デメリットにも挙げられた空調設備が効きにくい点には、シーリングファンが役立ちます。
シーリングファンは天井に取り付けて使用する扇風機で、室内の暖かい空気を循環させて、室温のばらつきを少なくする効果があります。暖房を使う冬なら、1階に溜まる冷たい空気を上昇させてくれますし、夏場は2階の暖かい空気を下に送ってくれるため、空間全体を快適な温度に保ちやすくできるのがポイントです。
シーリングファンの設置と合わせて、エアコンやストーブなどの冷暖房設備も空気の循環を意識した場所に設置するとさらによいでしょう。なお、シーリングファンにはさまざまなデザインがあり、インテリアのアクセントとしても活用できます。
シーリングファンの他、全館空調システムを検討するのもよいでしょう。全館空調システムとは、原則1台の専用エアコンと室外機を通して、すべての部屋の温度を一定に保てる設備のことです。
通常の住宅では個室ごとにエアコンを設置するため、空調管理が行き届いていない部屋は居心地が悪くなってしまいます。しかし全館空調であれば、1階の床も2階も天井付近でも温度差を最小限に留められ、どの場所にいても快適に過ごせるでしょう。
吹き抜けでは室温調整に加えて、断熱対策も求められます。
吹き抜けの設計時点で断熱性能を意識しておくと、冷暖房設備の効きも良くなり、夏場の暑さや冬場の寒さを感じにくくできるでしょう。たとえば、外気の影響を受けにくい高気密・高断熱性能を持つ建材や設備を取り入れるのが有効です。
高気密・高断熱性のある建材は、防音対策にもつながります。吹き抜け構造で気になっていた家族の生活音も気になりにくくなり、ゆったりと過ごせる空間になるでしょう。
また、床暖房や蓄熱式暖房を取り入れて、住宅全体を暖かく過ごしやすい環境に保つのもおすすめです。
吹き抜けの掃除やメンテナンス作業に不安があるなら、定期的に専門業者へ依頼することも視野に入れておきましょう。
天窓や天井照明・シーリングファンのメンテナンスは高所作業のため、専門知識や技術を持つプロの業者へ依頼するのがおすすめです。専門業者なら、安全に快適な環境をキープできます。なお、高所の天窓や照明器具は低い位置にあるものより汚れが溜まりにくいため、半年〜1年に1回程度の頻度で依頼すれば問題はありません。
また、照明の急な電球切れに備えて、長持ちするものや交換がスムーズにできるタイプにしておくと安心です。天井照明だけでなく、間接照明も部屋に設置しておくと、電球切れの際にも慌てなくて済みます。
吹き抜けは耐震性の面では不利なので、十分な配慮が必要です。
耐震投球にかかわらず、工夫次第で耐震性を確保しながら吹き抜けを設けることが可能です。たとえば、耐震等級1の住宅では、吹き抜けの広さを8畳以内に抑えることや、大開口窓を1.5〜2間までにすること、コーナーに窓を設置しないことが対策になります。他にも剛床と呼ばれる耐震性の高い床にしたり、耐力壁を適度に設置したりするのも有効です。
おしゃれで快適な吹き抜けを安全に保つためにも、耐震性の向上を意識して設計を進めましょう。
ここからは、吹き抜け構造を実際に採用した住宅の実例を見てみましょう。どの住宅も、吹き抜けのデメリットを解消できるよう、間取りを工夫しているのがわかります。
こちらのお宅はLDK内に吹き抜けを採用して、スタイリッシュな空間が完成しました。
木目や黒の色味が光るリビング階段が、ダイナミックな吹き抜け空間のアクセントになっています。また、インテリアもモダンテイストに統一し、非日常感が演出されています。
ソファやダイニングコーナーは、たくさんのゲストが訪れてもゆっくりとくつろげる設計です。全館空調システムを導入しているため、大開口や吹き抜けがあっても快適に過ごせます。
LDKと2階のホールをつなげる空間に吹き抜けを取り入れたこちらのお宅では、木目と落ち着いたカラーリングのインテリアを採用し、スッキリとおしゃれにまとめています。吹き抜けをつなぐ階段はシースルーにすることで、吹き抜けの開放感を際立たせています。
吹き抜けと面している2階のホールにはソファや本棚を設置して、セカンドリビングのような家族のくつろぎスペースに仕上げました。腰壁は透明な素材を採用し、吹き抜けの開放感をさらに高めています。
透明の腰壁を採用して開放感を高めた吹き抜け住宅の建築実例を見る
家族が自由にのびのびと過ごせるよう2階にLDKを設置したこちらの邸宅は、1階の土間空間と2階LDKを吹き抜けでつないでいます。
1階の土間は玄関からひと続きになっており、ソファを置いて子ども用リビングとしても活用されています。また、土間空間と洋室を仕切りなくつなぎ、子どもの勉強スペースや遊び場の機能を持たせている点もポイントです。
1階と2階のそれぞれで家族が自由に過ごしつつ、お互いの気配をそっと感じられる吹き抜け空間です。
吹き抜けは、視覚的にも機能的にもメリットがあり、広々とした空間でのんびり過ごしたい方におすすめです。
しかし一方で、室温調整が難しかったり、耐震性が低下する恐れがあったりと複数のデメリットがあることも知っておく必要があります。後悔しない吹き抜け空間にするためにも、本記事で紹介した設計時のポイントを活用して、家族全員にとって居心地の良い住まいを完成させましょう。