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法律(2019年9月号)自筆証書遺言の作成
と保管制度

  • 遺産相続

弁護士 宮崎 裕二

このコラムの内容は、2019年(令和元年)9月現在のものです。

2018年(平成30年)7月に成立した「相続に関する民法等を改正する法律」で、相続の制度が幅広く改正されました。
今回はその中から、読者の皆さんも関心を持たれていると思われる「自筆証書遺言の方式の緩和」(2019年(平成31年)1月13日施行)と、
新たに創設された「遺言書保管制度」(2020年(令和2年)7月10日施行)について解説します。
俗にいう“争族”の防止や相続手続きの迅速化にも有効と思われますので、ご参考になさってください。

自筆証書遺言の方式緩和で
どこが変わる?

自筆証書遺言とは、「遺言者が遺言の全文・日付・名前を、すべて自分で書いて印を押す」遺言書のことです。今回の改正でもその原則は変わりませんが、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合は、その目録については自書しなくてもよいことになりました。

改正前は、多くの土地を所有していると、土地の所在・地番・地目・地積をすべて自書する必要があり、大変でした。そこでこれらについては、パソコンで目録を作成して遺言書の末尾に別紙目録として添付するか、登記事項証明書自体を添付することで、自書に代えることができるようになりました。預貯金も同様に、パソコンで目録を作成するか、通帳の表紙のコピーの添付で済ませることができます。ただし、目録のページごとに(裏表に目録を作成している時は、その両方に)署名と押印が必要ですから、注意してください。

※2008年(平成20年)に登記簿がデータ化されて以来、登記記録をコンピューターからプリントアウトして認証したものが登記事項証明書として交付されます。登記簿謄本はその不動産の管轄でしか取得できませんでしたが、オンライン化により全国の登記事項証明書をどの法務局においても取得できるようになりました。

自筆証書遺言を作成する時に
注意したいポイント

遺言で財産を渡したいと思う人が1人だけの場合には、「私の全財産を妻 松下花子に相続させる。令和元年〇月△日 松下太郎 印」というような簡単な遺言も有効で、必ずしも目録を付ける必要はありません。しかし、実際上は目録がないと、財産が多岐にわたる場合には、相続する人が相続財産の全体を把握することができずに困ることがあります。せっかく手書きが必要なくなったのですから、目録は付けておくのが望ましいでしょう。

ただ、このように全財産を1人に相続させる遺言に対しては、遺留分を有する他の相続人がいる時は、遺留分侵害額請求を行使され、相続する人が相続財産の一部を金銭返還請求されることがあります。

さらに、相続人以外の人に預金や不動産を遺贈するときは、その相続手続をするのに遺言執行者が不可欠です。その場合は、遺言の中で遺言執行者を指定しておけば遺言の執行がスムーズにいきます。

来年7月にスタートする
自筆証書遺言の保管制度とは

これまで自筆証書遺言の欠点として、紛失・隠匿・変造のリスクがあると言われてきました。

まず、作成した本人や保管者が遺言書を紛失することがあります。遺言者本人が自宅の仏壇や引出しに保管していても、その遺言によって不利益を受けると思われる相続人が遺言を隠匿したり破棄する可能性もあります。さらに、自分に都合のいいように変造する人もいるかもしれません。

そこで、これらを防ぐために創設されたのが「遺言保管法」による遺言書の保管制度です。

まず、遺言を作成した本人が、住所地・本籍地・不動産所在地のいずれかを管轄する法務局(遺言保管所)に行き、そこの遺言保管官に封をしていない遺言書を提出して、保管の申請をします。遺言保管官は、本人確認と自筆証書遺言の有効性をチェックした上で、遺言書原本を保管し、その画像情報も管理します。遺言者はいつでも遺言書の閲覧を請求できますし、保管の申請を撤回することもできます。

遺言者が死亡すると、相続人や受遺者らは、全国にある遺言書保管所に遺言書が保管されているかどうかを調べることができます。あると分かれば、遺言書の画像情報を用いた遺言書情報証明書の交付や閲覧の請求ができます。そして、請求があると、遺言書保管官は遺言書を保管している旨を遺言者の相続人、受遺者および遺言執行者に通知します。この結果、他の相続人らも遺言書の存在を知ることができます。

遺言書保管制度のもう一つのメリットは、普通に管理されている自筆証書遺言では必要な「家庭裁判所の検認手続き」が、この保管制度を利用した遺言書の場合は不要となることです。これにより、相続手続きの迅速化が図れると思われます。

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法務局における自筆証書遺言の保管制度
弁護士 宮崎 裕二 みやざき ゆうじ

弁護士 宮崎 裕二 みやざき ゆうじ

1979年東京大学法学部卒。同年司法試験に合格し、1982年弁護士登録。1986年に宮崎法律事務所開設。2008年度に大阪弁護士会副会長、2009年から現在に至るまで大阪地方裁判所調停委員を務める。専門は、不動産・事業再生・相続・企業法務。著書に『わかりやすい借地借家法のポイント』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)、『借家の立退きQ&A 74』(住宅新報社)、共著に『不動産取引における心理的瑕疵の裁判例と評価』『土壌汚染をめぐる重要裁判例と実務対策』(いずれもプログレス)等多数。

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