住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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オーナーさま専用サイト
不動産オーナーである皆さまの中で、ご自身の不動産の最期をイメージされている方、
どれくらいいらっしゃるでしょうか? 建物の出口は、3つしかありません。
しかしながら、不動産も未来永劫建っているわけではありません。
最終的には、誰かがどこかのタイミングで取り壊すという経験をします。
そう考えると、不動産を取得したすべてのオーナーさまに、
『建物取り壊し』の知識を持っていただく必要があると思っています。
誰も使っていない建物を取り壊すことは簡単ですが、入居者が住んでいる状態の場合はタイミングが非常に難しくなります。基本は建物の老朽化で検討されると思いますが、オーナーチェンジ直後は最悪です。つまり建物を購入した、または相続で取得した、このタイミングから建て替えしようと思うと、なかなか上手くいきません。これはどうしてでしょうか?
基本、入居者は退去したくありません。だからこそ自分の予期せぬ引越しは、当然ですが拒否反応を示します。そのような中で「前の家主なら、こんなことは言い出さなかった」という、絶対的優位な切り札を出せてしまうからです。 オーナーさまからすると「建物が老朽化しているので地震等で万が一のことがあったら、気が気じゃない」という気持ちが先行するでしょう。理不尽に感じるかもしれませんが、入居者側にとっては「知ったことではない」からです。もしも身の危険を感じているなら、自分から転居していたはずです。 そう考えると、建て替えのタイミングは、購入してすぐ、相続してすぐは絶対的に避けた方が良さそうです。特に相続の場合、入居者側に「苦労もせずに財産を受け継いだくせに」とネガティヴな印象を与えてしまうので、老朽化した建物を承継させることは避けたいものです。
立ち退き交渉を100部屋以上やってきましたが、そのどれもが3ヶ月以内の退去、立退料は転居の実費プラスアルファで済んでいます。これは何も私が凄いわけではありません。基本的な交渉術を知っているからです。ここから皆さまに、その手法をお伝えしたいと思います。
基本は次のとおりです。
簡単なことなのです。それでもこの単純なことを忘れてしまいがちです。例えば「今まで住まわせてやった」という思いが先行してしまい、「借りているのに文句言うな」という感情が出てしまうので、思うような結果に繋がりません。絶対にやってはいけないことは、上からの立場で言ってしまうこと。立ち退き交渉では3のお願いする立場ということを、どんなことがあっても忘れてはいけないのです。交渉に入ったとき、入居者からの暴言や、罵声を浴びるかもしれません。その時でも基本原則を忘れず「それはそうだよね、引越しは大変だから」と思いを受け止めるしかありません。その上で自分の利益のみではなく、大切な入居者の命を守る義務があるから、「建て替えざるを得ない」ことを分かってもらうしかないのです。
特に古い建物には、高齢者が住んでいることが多いでしょう。年齢を重ねてからの引越しは、精神的にとても負担が大きいのです。加えて仮に転居に同意してくれたとしても、『高齢』を理由に貸してもらえなければ動きたくても動けません。そのようなストレスを与えないためにも、一緒に転居先を探してあげる、その姿勢がとても重要となります。
立ち退き交渉は法律行為なので、弁護士や司法書士に依頼するか、ご自身でするのが基本です。スムーズに着地するためにも、入居者の状況をよく把握し、建物の築年数やご自身の年齢から⻑期的な目線で取り組みましょう。「今まで住わせてもらってありがとう」と思ってもらえるように、入居者側の気持ちをしっかり汲み取り、寄り添う姿勢を忘れなければプロジェクトは成功します。決して力で押さないこと。最後は気持ちであることを、知っておいていただければと思います。
OAG司法書士法人
代表司法書士 太田垣 章子おおたがき あやこ
株式会社OAGライフサポート 代表取締役
プロ野球オリックス球団で広報勤務ののち、司法書士試験に合格。平成14年から家主側の訴訟代理人として、延べ2,500件以上の問題のある賃借人明け渡しの訴訟手続きを受託してきた、賃貸トラブル解決のパイオニア的存在。徹底した現場主義から、多くの家主の信頼を得る。現在はYahoo!に毎月寄稿するとともに著書も多数。賃貸住宅オーナーおよび不動産管理会社の方向けに「賃貸トラブル対策」に関する講演も行う。