住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
オーナーさま専用サイト
刺激的なタイトルで、関心ある方には興味を持っていただけるのではないでしょうか。
子どもたちを平等に扱うことは大前提ですが、面倒を見てくれたり、介護をしてくれた子には、
相続の際に何かしてやれることはないか、と考えるのは親心でしょう。
実際に「ひいき」はできるのか。またその限界は?
法律上で認められた制度や事例を参考に、その対策に必要なものをお伝えします。
人生100年時代。その人生後半に真に頼りになるのは、自分の面倒を見てくれる「親孝行な子ども」です。相続への備えを考え始めた時、親子間でもさまざまな感情があるでしょう。よく尽くしてくれた子には「ひいき」して(たくさん残して)やりたい、なかには絶対に財産を渡したくない、と憎しみの感情が勝る場合もあるかもしれません。
では遺言で『すべての相続財産につき、二男B(例図の場合)に相続させる』と書いたらどうなるでしょうか。今の日本の法制度上では、特定の子どもへすべての財産を受け継がせたいとの願いを込めて遺言書を作っても、必ずしもその通りに実現するとは限りません。それは「遺留分」があるからです。遺留分というのは、(ひいきされなかった)相続人の生活が不安定にならないよう保護するため、なおかつ財産の公平な分配の調整のために、一定割合の財産の相続を保障する制度のこと。遺言では財産を分けてもらえなかった相続人も、原則法定相続分の1/2を請求できる権利が法律で守られているのです。⺠法では親孝行でも親不孝でも相続人の権利は平等。感情が入る余地はありません。
逆に、財産を渡したくない相続人の権利を失わせる「相続廃除」という手段はどうか?これも単に好き嫌いだけでは認められず、次のいずれかに該当することが必要です。
生前あるいは遺言で家庭裁判所へ申し立て、認められた場合にのみ実現可能となります。ただし、暴力行為があった場合でも一過性のものとされれば認められませんし、親から金銭をだまし取り刑事事件を起こしていても認められなかったケースすらあります。実務上では全体の2割程度しか認められない、ハードルの高い手続きとなっています。なぜなら、憲法で保障される私有財産について、国家権力が制限する側面を帯びるため、⺠法のような下位の法規範での「相続廃除」の判断は、どうしても裁判所は慎重になってしまうのでしょう。
以上見てきたように、特定の相続人へ「ひいき」したいと思ってもなかなか難しいのが現実です。ただ、相続人が遺言内容に納得し、遺留分の主張を自発的にあきらめるならば話は別です。遺言書には、法的効力はないものの思いを伝える「付言(ふげん)事項」というものがあります。
お葬式や法要をどうして欲しいか、家訓や家業の在り方、家族への感謝など、さまざまなことを書くことができます。相続人に対する手紙、といったイメージが近いでしょう。付言事項の中には、どういう理由で相続財産を分配したのかを記載することも可能です。上手に言葉を選んで、それぞれの相続人の心に訴えかけることで、遺言内容の不公平感を解消し、穏やかに納得しやすい状況を作り出せるかもしれません。
ほとんどの相続対策は節税ばかりに気を取られがちですが、大事なことは、自分たちの生前の気持ち、家訓や、子どもたちにどのような人生を送ってもらいたいと思っているかなどの“思い”を伝える事です。
子どもに遺す「子どもの人生に影響を与える言葉」をいまのうちからしっかり考えておくことが、真の相続対策、価値ある遺産のひとつになるのではないでしょうか。
司法書士 川原田 慶太 かわらだ けいた
司法書士法人 おおさか法務事務所 代表社員
日本相続学会 理事
大阪府堺市出身。京都大学法学部在学中に司法書士試験に合格。遺産相続や成年後見分野でセミナー講師を多数歴任。好きな言葉は「面白きこともなき世を面白く(高杉晋作)」「禍福はあざなえる縄の如し」。