住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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1999年に始まったゼロ金利政策が四半世紀、
資産構築や資産承継の一環で収益用の土地を購入する方が増えてきました。
直近2年においては、好立地と見れば建物のボリューム検討を後回しに、
まず先に土地を購入されるケースが見受けられます。
その際、思わぬリスク(建築制限等)に慌てないよう、
当社で賃貸住宅等の企画を20年以上手掛けてきた一級建築士より、
収益物件の土地選びについて、ポイントとノウハウをお伝えします。
土地選びの最初の一歩はエリアの検討です。ご自身の希望エリアと、そこが賃貸住宅経営として成り立つ立地なのか、また総予算をどのくらいに設定するのか、これらをトータルに考えます。住宅地であれば一般的に建ぺい率60%/容積率200%程度で3階建が中心。商業エリアで建ぺい率80%/容積率400%なら計算上では5階建までが建築可能となります。階数が高くな るにつれて建築コストも上がりますので、総予算枠をあらかじめ想定しておきましょう。
住宅が密集する都市部においては、土地・建物に対してさまざまな建築上の法規制があります。
まず注意すべきは『道路幅による容積率の制限』です。前面道路の幅員(道幅)が12m未満の土地の場合、建築物は図のように、指定容積率か基準容積率か、どちらか小さい方の値までに制限されてしまいます。都市計画で定められた容積率が300%だったとしても、前面道路幅が4mしかなければ、住宅地の場合はその敷地の最大容積率は160%。建物ボリュームが約半減してしまうことになります。
また、土地は幅員4m以上の道路に2m以上接していないと、原則として建築物が建てられません。そして、避難及び安全確保のためエントランス等から1.5m幅以上の通路を設けることが求められます(※大きさや階数等の条件によります)。地方公共団体によっては条例でさらに厳しい制限を加えている場合もあります。
建築物を建てる際には「斜線制限」と「日影規制」という高さの規制を受けます。斜線制限では建物の高さを規定の角度の線より下に収めることとされており、建築基準法の北側斜線制限よりもさらに厳しい「高度地区」という基準が設定されている地域もあります。
日影規制は、周辺の居住環境を保護するために、日影になる時間を一定内に抑えるよう建築物の形態(主に高さ)が制限されています。
また、建築地が「防火地域」「準防火地域」の場合は、建物の用途や階数、延床面積により、求められる耐火性能の基準が異なってきます。
このように、厳しい制約が幾重にも課せられる中で、思い通りの建築物を完成させていくことは至難の業。パナソニック ホームズでは『より広く』『より高く』『より無駄なく』をモットーに、15㎝単位で対応できる「敷地を無駄にしない技術」で収益力にこだわったご提案を心がけています。
収益物件を建てるための土地選びについては、建築法規以外にも注意が必要なポイントがあります。高低差が大きい土地の場合、擁壁の整備に思わぬ費用がかかるかもしれません。既に擁壁が設置されていたとしても、構造検討で強度不足となれば工事のやり替えが発生します。有効面積も削られてしまうため、割高な土地取得になってしまっては悔やまれます。地盤を調査した結果、軟弱地盤とわかれば特殊な杭工事や地盤改良が必要になることもあります。ハザードマップを入手して、近隣の地形や河川との位置関係を確認することも判断材料のひとつになり、慎重に見る必要があります。また周辺環境も事業に影響を及ぼす要因となることがあります。区画図を見るだけではわからないことが多いため、必ず現地を訪れて確認することも大切です。
条件が良さそうな土地に見えても、思わぬ障壁が立ちはだかることがあります。例えば自治体ごとの条例では、単身者向けの住宅を建てる際の専有面積に基準が設けられていることがあります(例:大阪では18m2以上、東京23区では25m2以上等)。戸数規模に応じた駐車場の付置義務が定められていたり、緑化義務が課されていたりして、想定していたボリュームの建物が建てられない、戸数が確保できない、といったケースも考えられます。
また地域によっては、住⺠主体で良好な住環境を守るための建築協定を結んでいるところがあります。高さ・階数制限や屋根形状の規定、共同住宅の禁止、意匠の制限などのきめ細かな取り決めがある場合も珍しくありません。協定地域内だけでなく、エリアの隣接地についても配慮が必要となることがありますので注意しましょう。市街化区域内であっても一定規模(1,000m2または500m2)以上の事業計画では開発許可が必要となったり、上下水道や電気・ガスの整備等、インフラ開発への負担が大きくなることもあります。
事業の成功は土地選び=立地によるところが大きいと言えますが、初期コストの低減も考えておきたいものです。行政によっては、省エネや防耐火といった性能基準値をクリアする建築物に補助金制度を設けている場合があります。目指す街づくりを実現するには、そのエリアに適した、各々の建築物の品質向上が欠かせないからです。計画の初期段階から上手にプランニングに取り入れることで、より性能の高い、入居者にとっては住みやすく魅力のある建物をコストを抑えて実現することができれば、まさに三方良し。スムーズに事業のスタートを切ることができます。
身近な不動産店から、一見掘り出し物のような情報が入ってきたとしても、ご自身が思い描く活用形態が実現可能かどうか、見極めるのは簡単ではありません。実際の建物計画までを視野に入れての土地探しには、ぜひ豊富な実績と経験のある住宅メーカーを早い段階からパートナーにご指名ください。パナソニック ホームズは戸建住宅から9階建ビルまでの豊富な商品展開で、街づくりまでをもサポートしています。ご計画をお持ちの方は、ぜひ当社へご相談ください。
一級建築士 稲辺 陽一いなべ よういち
パナソニック ホームズ株式会社
商品企画室 課⻑
設計者としての経験を生かし、都市部におけるマンショングレードの賃貸住宅・賃貸併用住宅として、「ビューノ」「ビューノ・ルガロ」など、多層階の商品企画を約20年に渡り担当。「ソルビオス(アーキモード)」をはじめ「キラテックタイルEXスクエア」、「スマート・ウィズ洗面ユニット」等、グッドデザイン賞を受賞。