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パナソニック ホームズ トップ > 土地活用 > 役立つ専門家コラム > 法律(2025年4月号)収益性を高める土地の選び方

法律(2025年4月号)
収益性を高める
土地の選び方

  • 賃貸住宅経営

一級建築士 稲辺 陽一

このコラムの内容は、2025年(令和7年)4月現在のものです。

1999年に始まったゼロ金利政策が四半世紀、
資産構築や資産承継の一環で収益用の土地を購入する方が増えてきました。
直近2年においては、好立地と見れば建物のボリューム検討を後回しに、
まず先に土地を購入されるケースが見受けられます。
その際、思わぬリスク(建築制限等)に慌てないよう、
当社で賃貸住宅等の企画を20年以上手掛けてきた一級建築士より、
収益物件の土地選びについて、ポイントとノウハウをお伝えします。

エリア選びは規模と
予算のバランスも考慮

土地選びの最初の一歩はエリアの検討です。ご自身の希望エリアと、そこが賃貸住宅経営として成り立つ立地なのか、また総予算をどのくらいに設定するのか、これらをトータルに考えます。住宅地であれば一般的に建ぺい率60%/容積率200%程度で3階建が中心。商業エリアで建ぺい率80%/容積率400%なら計算上では5階建までが建築可能となります。階数が高くな るにつれて建築コストも上がりますので、総予算枠をあらかじめ想定しておきましょう。

前面道路幅で
制限される容積率

住宅が密集する都市部においては、土地・建物に対してさまざまな建築上の法規制があります。

まず注意すべきは『道路幅による容積率の制限』です。前面道路の幅員(道幅)が12m未満の土地の場合、建築物は図のように、指定容積率か基準容積率か、どちらか小さい方の値までに制限されてしまいます。都市計画で定められた容積率が300%だったとしても、前面道路幅が4mしかなければ、住宅地の場合はその敷地の最大容積率は160%。建物ボリュームが約半減してしまうことになります。

また、土地は幅員4m以上の道路に2m以上接していないと、原則として建築物が建てられません。そして、避難及び安全確保のためエントランス等から1.5m幅以上の通路を設けることが求められます(※大きさや階数等の条件によります)。地方公共団体によっては条例でさらに厳しい制限を加えている場合もあります。

道路幅による容積率の制限 指定容積率 都市計画で定められた容積率 基準容積率 前面道路の幅で決まる容積率 前面道路幅 住居系地域×40% その他地域×60%※ ※40%または80%と指定される区域もある いずれか小さい方 都市計画で定められた容積率が300%でも、前面道路幅が4mなら4m×40%=160% / 接道条件

道路斜線・高度斜線制限、
日影規制

建築物を建てる際には「斜線制限」と「日影規制」という高さの規制を受けます。斜線制限では建物の高さを規定の角度の線より下に収めることとされており、建築基準法の北側斜線制限よりもさらに厳しい「高度地区」という基準が設定されている地域もあります。

住居系用途地域 住居系以外の用途地域 用途地域(※日影が生じる部分で決まる) 第一種・第二種低層住居専用地域 第一種・第二種中高層住居専用地域/第一種・第二種住居地域/準住居地域/近隣商業地域/準工業地域/用途地域の指定の無い地域 地方公共団体が条例で指定する区域 制限を受ける建築物 軒高が7mを超える、又は階数が3以上(地階除く) 高さが10mを超える

日影規制は、周辺の居住環境を保護するために、日影になる時間を一定内に抑えるよう建築物の形態(主に高さ)が制限されています。

また、建築地が「防火地域」「準防火地域」の場合は、建物の用途や階数、延床面積により、求められる耐火性能の基準が異なってきます。

北側斜線 隣地斜線 高度地区 防火地域 準防火地域 日影規制 容積率 建蔽率 天空率 角地 変形地

このように、厳しい制約が幾重にも課せられる中で、思い通りの建築物を完成させていくことは至難の業。パナソニック ホームズでは『より広く』『より高く』『より無駄なく』をモットーに、15㎝単位で対応できる「敷地を無駄にしない技術」で収益力にこだわったご提案を心がけています。

建ぺい率と容積率の緩和措置 建ぺい率の緩和措置 防火地域・準防火地域に建築する場合、建物を耐火建築物とすると、建ぺい率の緩和措置を受けられる場合があります。 防火地域内に耐火建築物を建てるとき。※元々建ぺい率が80%の地域は100%にできる。 建ぺい率+10% 準防火地域内に耐火建築物、準耐火建築物を建てるとき。 建ぺい率+10% 〈角地のとき〉角敷地または角敷地に準ずる敷地で特定行政庁が指定するもの。 建ぺい率+10% 容積率の算定時に面積に算入しなくてよい部分 住宅に関連する用途なら容積率の緩和措置があり、実際の容積率より大きな建物を建てられる場合があります。 駐車場や駐輪場の床面積(※延床面積の1/5まで) 地下の部分 小屋裏収納 天井高1.4m以下、直下階の床面積の2分の1まで。 宅配ボックス設置スペース 共同住宅の共用部の床面積 共用廊下 共用階段 エントランスホール エレベーターの昇降路 ※紙面でご紹介している法規制はほんの一部となります。斜線制限や高度地区の規制、日影規制、防耐火ほか、地方自治体ごとにも細かく条令等で定められている場合があり、実際のご計画時には複合的な要素を個別に検討・判断することが必要となります。

土地購入の前には
リスク要因をチェック

収益物件を建てるための土地選びについては、建築法規以外にも注意が必要なポイントがあります。高低差が大きい土地の場合、擁壁の整備に思わぬ費用がかかるかもしれません。既に擁壁が設置されていたとしても、構造検討で強度不足となれば工事のやり替えが発生します。有効面積も削られてしまうため、割高な土地取得になってしまっては悔やまれます。地盤を調査した結果、軟弱地盤とわかれば特殊な杭工事や地盤改良が必要になることもあります。ハザードマップを入手して、近隣の地形や河川との位置関係を確認することも判断材料のひとつになり、慎重に見る必要があります。また周辺環境も事業に影響を及ぼす要因となることがあります。区画図を見るだけではわからないことが多いため、必ず現地を訪れて確認することも大切です。

基礎の種類 直接基礎 地盤改良+直接基礎 杭基礎

土地購入前にチェックしておきたいこと 市場調査 敷地環境調査 役所法令調査 オーナーさまでできること 賃貸住宅サイト等での確認 家賃相場・駅徒歩分数・築年数等 近隣物件の調査 所在地・建物タイプ 土地に関する調査 方位 接続道路の調査 道路幅・道路所有者(公道・私道) 近隣に関するリサーチ 周辺環境・風向・音 都市計画面での調査 用途地域・高さ制限・位置等 建築指導面での調査 建ぺい率・容積率・日影・条例等 専門の会社へ依頼すること 賃貸業者へのヒアリング 建築地エリア人気物件・設備条件・募集資料等 近隣物件の調査 間取り・築年数・入居状況等 土地に関する調査 建物の給水・汚水・雨水・電気・ガス・地盤等 境界部分での調査 高低差・境界線・塀・擁壁等 接続道路の調査 道路幅・道路所有者(公道・私道) 近隣に関するリサーチ 周辺環境・風向・音・搬入・工事 道路課への問い合わせ 前面道路 水道局への問い合わせ 給水設備 下水道課への問い合わせ 排水設備

想定した事業規模を
確保するためには

駐車場の付置義務 駐車場の必要台数が多いと…建物は小さくなる 駐車場の必要台数が少なくて済むと…建物は大きくできる条件が良さそうな土地に見えても、思わぬ障壁が立ちはだかることがあります。例えば自治体ごとの条例では、単身者向けの住宅を建てる際の専有面積に基準が設けられていることがあります(例:大阪では18m2以上、東京23区では25m2以上等)。戸数規模に応じた駐車場の付置義務が定められていたり、緑化義務が課されていたりして、想定していたボリュームの建物が建てられない、戸数が確保できない、といったケースも考えられます。

また地域によっては、住⺠主体で良好な住環境を守るための建築協定を結んでいるところがあります。高さ・階数制限や屋根形状の規定、共同住宅の禁止、意匠の制限などのきめ細かな取り決めがある場合も珍しくありません。協定地域内だけでなく、エリアの隣接地についても配慮が必要となることがありますので注意しましょう。市街化区域内であっても一定規模(1,000m2または500m2)以上の事業計画では開発許可が必要となったり、上下水道や電気・ガスの整備等、インフラ開発への負担が大きくなることもあります。

行政・地方自治体の
方向性に沿った計画を

事業の成功は土地選び=立地によるところが大きいと言えますが、初期コストの低減も考えておきたいものです。行政によっては、省エネや防耐火といった性能基準値をクリアする建築物に補助金制度を設けている場合があります。目指す街づくりを実現するには、そのエリアに適した、各々の建築物の品質向上が欠かせないからです。計画の初期段階から上手にプランニングに取り入れることで、より性能の高い、入居者にとっては住みやすく魅力のある建物をコストを抑えて実現することができれば、まさに三方良し。スムーズに事業のスタートを切ることができます。

身近な不動産店から、一見掘り出し物のような情報が入ってきたとしても、ご自身が思い描く活用形態が実現可能かどうか、見極めるのは簡単ではありません。実際の建物計画までを視野に入れての土地探しには、ぜひ豊富な実績と経験のある住宅メーカーを早い段階からパートナーにご指名ください。パナソニック ホームズは戸建住宅から9階建ビルまでの豊富な商品展開で、街づくりまでをもサポートしています。ご計画をお持ちの方は、ぜひ当社へご相談ください。

役所法令調査 土地や道路に関する法令上の制限や所有権などを確認します 用途地域 防火地域 水路 その他地区・地域(風致・宅造・埋蔵文化財等) 斜線制限(北側・隣地・道路・高度) 高低差・擁壁(開発・宅造番号) 道路(所有者・番号・幅員) 有効採光面積 建ぺい率(緩和措置) 上水道(本管・引込) 避難通路(通路幅員) 建築協定 建築概要書(既存・近隣) 窓先空地 日影規制 容積率(緩和措置) 下水道(本管・引込) 事前協議 ハザードマップ 補助金の有無 〈条例〉 単身者向住宅 駐車場付置義務 水道・下水道納付金 開発負担金 近隣説明義務

一級建築士 稲辺 陽一 いなべ よういち

一級建築士 稲辺 陽一いなべ よういち

パナソニック ホームズ株式会社
商品企画室 課⻑
設計者としての経験を生かし、都市部におけるマンショングレードの賃貸住宅・賃貸併用住宅として、「ビューノ」「ビューノ・ルガロ」など、多層階の商品企画を約20年に渡り担当。「ソルビオス(アーキモード)」をはじめ「キラテックタイルEXスクエア」、「スマート・ウィズ洗面ユニット」等、グッドデザイン賞を受賞。

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