住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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2020年(令和2年)2月にコロナ禍が表面化して以降、賃貸住宅経営においても心配事が増えたと感じる方も多いかもしれません。
WEB会議や在宅勤務が増え、新たな賃貸住宅需要が減るかもしれない、とか、
郊外の建売購入へシフトして入居者獲得が難しくなっていくのでは? といった話を耳にすることもあるでしょう。
そこで、直近の賃貸住宅市場動向を踏まえながら、どのようなヒトの動きがあり、
今後の賃貸住宅経営に必要なことは何かを、述べていきたいと思います。
グラフは直近5年間の住宅着工戸数の推移です。棒グラフに全ての住宅着工戸数の合計値推移を、折れ線グラフで住宅の種類別の着工戸数推移を示しています。賃貸住宅に関しては、3階建までを「低層貸家」、4階建以上を「中高層貸家」と分けて表示しています。ご覧の通り、この5年間の賃貸住宅着工戸数は右肩下がりと厳しいのが現状です。その要因は、①金融機関のアパートローン貸し出しが厳しくなった、②将来の人口減などを心配して、賃貸住宅経営に不安を感じるオーナーが少なくない、などと言われています。ただ、②に関しては、確かに中期的に日本の人口はと減ると予測されてますが、小家族化(ひとり暮らしや2人暮らし)が進む一方、世帯数はそこまで減少しないと見込まれています。ひとり暮らしの方が持家を購入することは稀で、小家族化で賃貸住宅入居者増になると見込め、人口減=即賃貸住宅入居者が減る、ということではありません。ですので、①の影響の方が大きいのが実態です。
コロナ禍で建売が売れている、都市部の人口流出が増えている、といったニュースもあります。確かに一部では建売事業者が好調なのは事実ですが、グラフの通り、2020年(令和2年)の建売着工戸数は前年比マイナスで、増えていないことが分かります。対して、郊外への人口流出については、例えば首都圏なら、東京は人口流出、周辺県は人口流入が認められます。ただし、これは賃貸住宅入居者に限ったデータではありません。賃貸住宅入居者に関しては、ある企業の調査で、郊外への転居は都市部への転居よりも僅かに上回るという報告もあり、むしろ都市部賃貸住宅に住んでいたファミリー層が郊外で住宅購入というケースの方が多いものと思われます。というと、都市部の空室が増える?と感じるかもしれませんが、小家族化に加え、地方からの流入も多数あり、賃貸住宅需要減を心配 するレベルではないと考えます。
一般的に賃貸住宅入居者は、4年で1回転と言われています。4年ごとに入居を心配しなくてはならないということになりますが、ヒトの移動が少なくなることが心配なら、逆に入居者に長く住んでもらうことを考えるべきで、長く住みたくなる賃貸住宅=入居者目線での賃貸住宅を建てるということです。では、入居者が求める賃貸住宅とはどういうものでしょうか。実際、2020年(令和2年)11月時点のテレワーク実施率は全国平均で24.7%。首都圏部では47%に上るとの調査結果もありました。コロナ終息後もテレワーク継続を希望する声は全体の約8割に迫っており、在宅ワークができるスペースが欲しい、共働き世帯だと2カ所欲しいとか、在宅でWEB会議をするので遮音性が心配、という声もあります。また、住み替えたい住宅への希望にも、在宅ワークを背景にした声が色濃く出ているようです。
なお最近では、国の方針に基づいた、入居者の光熱費を計算上ゼロにできるZEH(ネットゼロエネルギーハウス)賃貸住宅も登場してきています。遮音性や在宅ワークに対応したプラン・仕様なども合わせて、入居者に末長く住み続けていただける賃貸住宅が、今後のトレンドだといえるのではないでしょうか。
株式会社
住宅産業研究所
専務取締役清水 直人 しみず なおと
大手ハウスメーカーで8年間の営業現場経験を経て、2001年に株式会社住宅産業研究所へ入社。現場営業マンや各地のメーカー・ビルダーへの直接取材をおこない、時代にあった住宅販売戦術を分析。数多くの研修・講演業務をこなしながら、月刊TACTなどへの執筆活動も実施。全国各地の住宅会社や建材会社の取材だけでなく、今のユーザーとも直接接触し、ナマの現場情報の収集を得意としている。