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市場動向(2021年9月号) 土地の賢い収益化計画

  • 賃貸住宅経営

パナソニック ホームズ株式会社
営業推進部 特建営業センター 所長
ファイナンシャルプランナーAFP
榎本 克彦

このコラムの内容は、2021年(令和3年)9月現在のものです。

不動産(土地・建物)は大きな資産であるが故に、所有しているだけで課税対象となります。
ひとたび相続が発生すると金額評価をされて、高額の相続税を現金納付しなければなりません。
先祖伝来の土地を切り売りしたり、物納を余儀なくされたり、いつしか財産が霧散してしまった...
といった事態を招く前に、土地との向き合い方をしっかり考えておきましょう。

毎年かかる固定資産税を
甘く見てはいけない

土地は、その用途によって評価額が大きく変わってきます。相続税対策として土地をどのようなカタチで継承するのかは重要ですが、毎年かかる税コストも甘く見てはいけません。例えば300m2の土地(※路線価40万円と仮定)を駐車場用地など更地で所有していた場合、固定資産税と都市計画税の合計はおよそ年178.5万円。10年間では1,785万円の出費となります。ここに3階建の賃貸住宅(15室)を建てた場合、土地・建物の税金の合計は年91万円で済み、さらに建物の固定資産税軽減効果も含めると10年間の合計は770万円。およそ1,000万もの差が生じることになります。月に約12台分の駐車場収入を得られたとしても、税金支払いに充足できるかどうか? 毎年の固定費を軽減させる、という観点は忘れてはならないポイントだと思います。

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イメージ図:駐車場より新築賃貸住宅の方がお得

「稼げる自宅」が
老後のゆとりを左右する

ご所有地があり、30代で自宅を新築しようか、という方には、立地によっては賃貸併用住宅をご検討いただくよう、お勧めしています。30歳でご自宅のみを新築された場合、一般的には35年の住宅ローンを組み、月々のローン返済や税金の支払い等はすべて給料収入からまかなわなくてはなりません。65歳で退職金の一部を充当して完済できたとして、その後の生活は年金頼み。ご自宅は売らない限りは「住むだけの資産」です。一方、思い切って賃貸併用住宅として新築されると、家賃収入をローン返済や税金の支払いに充て、給与は余裕(余剰)資金として別扱いが可能に。退職後は年金プラス家賃収入で長い老後生活をゆとりをもって乗り切ることが可能になります。その差はまさしく天と地ほども違うと言っても過言ではないのです。
〈ご参考〉ぺージ下部に「賃貸併用住宅 建築時の注意点」をまとめましたのでご参照ください。

イメージ図:賃貸併用住宅を活用した資産形成

老朽アパートは
「所有者責任リスク」に要注意

築後何十年も経過している老朽アパートがあるが、満室だから、とそのままにされているオーナーさまには、「所有者責任」のリスクヘッジを早めにとられるよう、ご提案することが増えてきました。まずは耐震性の問題です。1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建てられた建築物は、早急な建て替えまたは耐震補強が必要です。自然災害による被害は不可抗力とするのが一般的な見解ですが、地震による建物倒壊で賃借人が死亡した場合に、民法717条の工作物責任を元にオーナー側の土地・工作物責任が問われ、賠償責任を認めた判例などがあります。入居者に何か事故があってからでは遅いのです。その後のオーナー自身の人生をも狂わせかねない、と肝に銘じておきましょう。また民法606条には修繕義務の定めがあり、原因を問わず建物を修繕するのもオーナー側の義務。
老朽化した建物の修繕コストは、家賃収入を軽く超える場合も少なくありません。リフォームしたとしてもそれに見合う賃料アップが見込めないケースも多く、デメリットを一掃できる階層アップも含めた建て替えで、土地も建物も活性化を目指すのが良い循環につながるのではないでしょうか。

民法606条1項 修繕義務
「賃貸人は、賃借物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。」
民法717条1項 工作物責任
「土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。但し、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をした時は、所有者がその損害を賠償しなければならない。」

土地購入+建築で
収益用不動産の取得も視野に

都市部の土地を上手に生かすことができれば、確かな資産形成へ大きな一歩を踏み出すことができます。土地購入+賃貸住宅の建築で大切なことは土地:建物比をしっかり見極めること。5,000万円で買った土地に6,000万円の物件を建てても収支は回りません。土地値の倍以上の建築費をかけることが、利回りを出すポイントとなります。そして収益用不動産は1Kが多くなるので、利便性重視の単身者を念頭に、徒歩8分以内の土地を探しましょう。通常の賃貸であれば駅10分程度、環境重視のファミリー層ならさらに対象エリアが広がります。ただし事業用地は動きが早く、よい土地は高値ですぐ業者が買い取ってしまいます。一般の人によい土地はなかなか回ってきません。日々の仕事を抱えて土地探しからは大変なので、信頼できるパートナーを見つけましょう。
ちなみに収益用不動産の取得は、急な相続対策に有効な手段(※1)でもあります。しかし、相続対策も大切ですが、現金収支が回る事も非常に大事なので、物件の見極めは慎重にしましょう。
土地の評価を下げて節税効果を重視する手もあれば、生かして稼ぐ資産形成効果を前向きに検討するのも大切なことだと思います。目の前にある土地の可能性を生かすも閉ざすも向き合い方次第。人生設計の一部として、お悩みのことがあればぜひご相談いただければと考えています。

※1:法人の場合は3年経過が必要になります。

〈ご参考〉賃貸併用住宅建築時の注意点

  • 上下で使うか? 平面で使うか?
    こだわりの間取りは?
    間取りイメージ図
  • 1階に住むか? 最上階に住むか?
  • エレベーターの設置は?
    年間維持費は?
  • 入口の動線を分けるか?
    一緒にするか?
  • 遮音性の検討?
    ひとつ屋根の下に住む配慮
  • 相続が発生した場合、その間取りで貸せるか?
  • 融資は有利な条件で付くか?
    金利上昇リスク
  • 入居者が快適に暮らせる工夫?
    満室が続く設計か?
  • 様々な支出を最小限に抑える工夫
  • ご自宅の面積は全体面積の3分の1以下

(2021年5月23日幻冬舎ゴールドオンラインwebセミナーより再構成)

ファイナンシャルプランナーAFP 榎本 克彦 えのもと かつひこ

ファイナンシャルプランナー
AFP
榎本 克彦えのもと かつひこ

パナソニック ホームズ株式会社
営業推進部
特建営業企画課 主幹
35年間にわたり顧客の問題と向き合い、解決してきたことが強み。賃貸住宅や分譲住宅をはじめ、複合施設、医療・介護施設、不動産投資物件、ホテル建築など、ほぼ全ての分野の受注経験とノウハウを持つ。優秀実績表彰多数。自らも賃貸物件を保有し、賃貸経営の奥深さ、社会的意義、オーナーとしての責任ややりがいも体感。実体験をもとに行うアドバイスは地主さま・家主さまから絶大な信頼と、オーナーさま・入居者さまの立場に立った課題解決案・改善等の提案により社内外から高い評価を得る。

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