住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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金融も経済も国際的な規模で影響しあう現代、
日本国内の土地活用とはいえ、その動きに無関心ではいられません。
長年金融機関でFP教育に携わり、世界経済への知見も深いCFP 乾晴彦先生に、
土地活用への向き合い方をアドバイスいただきます。
新型コロナウイルスの収束が見えない中で始まったロシアのウクライナ侵攻(2月24日)、急速に進むインフレ、1ドル151円台という32年ぶりの円安(10月24日)など、2022年の日本経済は大きく揺さぶられました。年末の日銀短観では大企業の製造業の業況判断指数(DI)が4期連続で悪化。背景には世界経済の減速や円安による原材料の高騰とコスト高があります。中国のロックダウンでスマートフォンやパソコンの出荷が低迷し、本来なら円安が追い風になる自動車業界も厳しさを増しました。反面、価格転嫁が進んだ食料品は持ち直し、円安で造船・重機も改善。非製造業は上向き、サービス業ではコロナで働き手を減らした反動から、人手不足の解消が課題となっています。
紛争の火種も見え隠れしています。ウクライナ侵攻のみならず、重要なトピックになりつつあるのが中国と台湾の緊張関係です。異例の3期目となった習近平政権は、昨年秋に台湾を「核心的利益」として「台湾統一を必ず成し遂げる」と明言。バイデン米政権も最近の台湾問題を「民主主義と権威主義の戦いの最前線」と位置づけ、有事の際の台湾防衛に具体的に言及しています。あくまで仮定的なコメントですが、中国が台湾をコントロール下に置いた場合、そこを軍事的最前線として西太平洋で米国をけん制する可能性は高く、米国の立場として台湾問題は譲れない一線にあります。
資源関連でも中国の動きには注意が必要です。温暖化対策としての電気自動車(EV)や太陽光発電の普及に加え、スマートフォンをはじめ、電化製品の需要増に伴い、銅などのベースメタルやレアメタル・レアアースのニーズが高まっています。国際機関の試算によると、銅の精錬生産量(※チリ、ペルー、中国が主な生産地)は2021年の2,450万tから35年には4,700万t超へとほぼ倍増を予測。日本はレアアースの60%以上を中国からの輸入に依存しており、中国との関係では難しい舵取りが迫られることでしょう。
政府が日本のメーカーに、現在中国で展開している生産や調達のプロセスを中国国外への移管を検討しているか聞いたところ、約3割が検討(予定含む)していると回答しました。移管先の地域としては、5割が日本を候補地として挙げ、次いでベトナム、インドネシア、タイなど中国に近接する地域が挙げられるなど、サプライチェーンの国内化および多角化に向けた検討が進んでいることがわかります。
中国の指導部は「中国製造2025」を産業政策に掲げ、次世代情報技術や新エネルギー車、ロボット、バイオ医療など10の重点分野を中心に製造業の高度化を急いでいます。建国100年を迎える2049年には「世界の製造強国の先頭グループ入りを目指す」とする、長期戦略の根幹となるものです。2025年までの中間目標として品目ごとに国産比率の目標を設定しており、産業用ロボットでは「自主ブランドの市場占有率」を70%に設定。次世代通信規格「5G」のカギを握る移動通信システム設備は、中国市場で80%、世界市場で40%という高い目標を掲げています。これに警戒感を強めているのが技術覇権を争う米国。前トランプ政権時代には、対中貿易赤字に苦慮の末、中国製品に高い関税をかけることで自国の製品を優遇しようとしました。もちろん中国も猛反発。互いに報復関税をかけあう泥沼の米中貿易摩擦に発展しました。中国政府は対抗策として米国債の売却も実施。2010年代以降、中国は世界最大の米国債保有国となった時期もあり、米国経済への圧力をかける手段としています。金利上昇をはじめアメリカ経済への悪影響は免れず、それは日本にもさまざまな形で波及することが考えられます。バイデン政権でも対中強硬路線は引き継がれ、経済面での緊張状態は予断を許しません。
国内では超高齢社会に突入する2025年問題がささやかれる昨今でもあります。女性の2割は100歳まで長生きされる時代。2022年9月の「敬老の日」を前に厚生労働省が発表した100歳以上の高齢者は90,526人でした。その約9割にあたる8万人以上が女性。ライフプラン上では、女性の老後の資金計画が今後はさらに重要になってくるのではないでしょうか。
原材料の高騰や人材不足による建築費高騰も収束は見えません。紛争や地政学リスク、経済摩擦等で世界は混迷の時代がしばらく続くでしょう。製造業の国内回帰により、地域によっては新たな賃貸住宅ニーズが見込まれるなど変化の兆しも見えます。この状況下では、様子見はある意味無駄な時間ともなりかねず、人生100年時代を生き抜くための堅実な土地活用が重要と考えられます。なぜなら世界的に金利は上昇基調ですが、日本はまだまだ低金利傾向が続きます。金利が低い時期にこそ、毎月のキャッシュフローが生まれ、次世代の子や孫たちのためになる土地活用を、検討する時機かもしれません。また贈与税と一体化した相続税体系の見直しも本格化の兆しがあり、資産の管理や継承には注意が必要です。
私がFP相談の実務で実感しているのは、子どもへの愛情表現(=喜ばれるプレゼント)として多いのが、毎月の家賃収入がある「賃貸住宅経営」。次世代から感謝されている、ということを申し添えておきます。特に長寿傾向の女性が、長生きに備えて賃貸住宅経営を始められる方も増えており、iDeCoなどの金融資産だけでなく、各自が家賃収入などの私的年金で備えることが必要な時代なのだ、との思いを強くしています。
ファイナンシャル
プランナー
企業セミナー講師 乾 晴彦いぬい はるひこ
1956年生まれ。東京経済大学(特待生)卒業後、都市銀行、損害保険会社で富裕層のコンサルティング業務を担当。
大手証券会社のFPや管理者向けの教育責任者として、グループ内の金融機関の講師を務める。2011年に企業研修の講師として独立、全国の金融機関や事業会社でFPとして活躍中。個別相談業務にも定評があり、全国にファンも多い。
FP1級、CFP、宅地建物取引士、プライベートバンカー資格をはじめ終活カウンセラー、管理業務主任者等 多数の資格を保持。