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市場動向(2023年7月号)数字で読む ポストコロナの
賃貸住宅マーケット

  • 賃貸住宅経営

コロナ禍により人々の働き方や生活意識が大きく変わったこの3年。
賃貸住宅マーケットにも興味深い動きが見られました。今回は不動産市況分析の
専門家としてご活躍の、ライフルホームズ総研 中山登志朗チーフアナリストに、
“移動人口”に注目した賃貸住宅マーケット分析を解説いただきます。

◆はじめに

賃貸住宅ユーザーの動向を知る上で重要な指標が“移動人口”です。これは、人の生死による人口の自然増減とは別に、入学・就職などに伴ってある地域から別の地域へと転居する社会増減の人口を示したもので、住⺠票の記録を基に総務省統計局が月次および年次で公表しています(外国籍含む)。コロナ禍のまっただ中は、テレワークやオンライン授業の実施によって、賃料が比較的安く生活圏としては不便を感じない程度の郊外へと転出するケースが多かったのですが、2023年に入ってからはその揺り戻しが既に発生し始めています。

都市圏とその中心部への
一極集中だったコロナ前

コロナ前の2019年以前は、三大都市圏や地方四市(札幌市/仙台市/広島市/福岡市)と言われる地方圏の政令市などに毎年多くの人が流入し続け、流出する人の数を大きく上回る“転入超過”が発生していました。例えば、2019年の首都圏(1都3県)では148,783人という大量の転入超過を記録しています。わずか1年で新たに15万人も人口が増えるということは、その受け皿となる住宅の供給・確保が課題となり、住宅を建てても足りないという状況が続きました。また、近畿圏および中部圏では圏域全体の移動人口は増えないものの、中心部である大阪市および名古屋市への流入が拡大。“中心部への一極集中”が発生していました。

コロナ禍に突入して
首都圏の移動人口は
大きく郊外化

しかし2020年に入るとコロナ禍の拡大が本格化し“緊急事態宣言”の発出などによって事実上の移動制限が実施され、移動人口の動きは大きく変化します。東京都全域も23区も、2020年7月以降は6ヶ月連続の転出超過を記録。年間転入超過数は東京都31,125人(前年比⬇62.5%)、東京23区は17,279人(同⬇73.1%)に留まりました。社会増はあったものの、前年からは一転して7割程度の大幅な転入者数の減少を記録したことになります。
さらに、2021年に入ると緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置が相次いで発出された(合計252日間:年間7割に相当)ことで、東京都への人口流入の動きも急激に鈍化。2021年の移動人口は、東京都で5,433人(対前年比⬇82.5%)、東京23区に至っては▲14,828人と年間を通じての転出超過となり、対前年比では⬇185.8%という急減を記録。全国23の政令市および特別区では最下位となりました。まさに都心から人口流出するイメージでした。

東京都ではコロナ禍で、人口流入が急激に鈍化

近畿圏では
大阪への一極集中、
中部圏は
コストプッシュによる
郊外化

このように、首都圏では賃貸住宅ニーズの郊外化が発生し都心部の賃料が頭打ちになっている状況が想定されますが、他の圏域では異なる推移を示しています。近畿圏(2府4県)ではコロナ禍に突入した2020年以降も、移動人口は大阪府および大阪市への一極集中が継続。兵庫県および京都府は年間を通じて転出超過が続きました。“大阪の独り勝ち”となった要因としては、下図のようなことなどが挙げられます〈図1〉。
一方の中部圏(3県)では愛知県を中心に、名古屋市が転出超過=郊外化の傾向が顕著になっています。ただし、これは消費者物価高騰が始まった2022年春以降に目立つ変化であり、テレワークによる生活様式の変化によるものと言うよりは、生活コストの上昇が背景にあるものと考えるべきです。

首都圏と近畿圏との社会的差異要因首都圏と近畿圏との社会的差異要因

2023年に入って
移動人口に更なる変化が発生

2023年に入って海外渡航やマスク着用などが緩和され、本格的に“コロナ後”に向けて日本の社会・経済が動き出しました。高齢者や持病を抱えているなど重症化リスクの高い方は引き続きコロナへの注意が求められますが、行楽シーズンを迎えて海外・国内を問わず観光客も各地で増加。コロナ前の自由な雰囲気が戻って来ています。
それに呼応するかのように首都圏に流入する人口も増加し始め、特に東京23区では2022年5月以降8ヶ月連続して転出超過だった移動人口が、2023年1月以降、明らかな転入超過傾向を示し始めました。例年3月は大学や専門学校への新入学、および新入社員が大量に流入するため、今年も一桁多い68,987人の転入超過が発生。これは2年前の57,970人と比較すると1万人超、19.0%の大幅増ですから、本格的に首都圏流入が回復したという見方ができます。3月の内訳〈図2〉を見ても、大学や企業が集中する都内への流入が過半を占めていて、人流が回復していることが明らかです。

首都圏転入超過の内訳(2023年3月)

年齢・世代別では
特徴的な動きが見られる

ただし、この3月の転入超過を年齢・世代別に少し掘り下げてみると様相が大きく変わります。東京都では20〜34歳が37,419人の転入超過を示しているのに対して、35〜59歳が▲1,619人とわずかながら転出超過となっているのです。つまり、主に若年勤労層である単身者が新入学・新入社などで数多く流入しているのに対して、35歳以上の主にファミリー層は東京都から転出しているのです。東京都では親世代と一緒に動く0〜4歳も▲1,210人と転出超過を記録しています。
転出先はというと、神奈川県で395人、千葉県で740人、埼玉県では最も多い1,151人の転入超過を記録。東京都から専ら周辺3県に転出していることがわかります。
これは例年の転入増加に加えて、コロナ後を見据えた東京都での若年勤労層の居住ニーズが急激に高まったことを示しています。コロナ禍では周辺3県での新生活を前提としていた若年層は、今年は東京に積極的に流入、それに対してファミリー層は賃料および物件価格の上昇、さらには円安による物価上昇もあって、結婚や出産をきっかけとして、郊外方面へと転出する状況になっているのです。

〈参考〉年齢別 転入超過数の多い上位5都道府県(2023年3月)

近畿圏&中部圏は
首都圏と異なる動き

一方、近畿圏の移動人口は2023年3月に▲563人と転出超過になりました。大阪府が4,479人の転入超過となったものの、兵庫県では▲2,189人、京都府でも▲677人と転出超過を記録。同様に滋賀県、奈良県、和歌山県も転出超過です。全国から人口が流入する首都圏とは異なり、近畿圏では行財政の中心地である大阪府には一定の流入が見られるいっぽう、大規模政令市を抱える兵庫県・京都府であっても東京や大阪に若年層が転出し、移動人口がマイナスになるのです。大阪府では20〜34歳の転入超過(2,779人)に加えて、35〜59歳のファミリー層も174人の転入超過となっていますから、東京都とは違って賃料や物価の高騰も大きな障害にはなっていません。

また、中部圏でも▲3,835人と転出超過を記録しています。愛知県では0〜19歳の若年層が436人および20〜34歳の若年勤労層が135人とわずかに増えていますが、35〜59歳のファミリー層は▲534人と転出超過で、合計+43人と辛うじて転入超過となりました。三重県、岐阜県はともに転出超過で、愛知県および東京・大阪への転出が目立ち、愛知県からは専ら首都圏と大阪への転出が発生しています。
このように、移動人口の足元のデータを見ると、首都圏中心部では単身者向け、準近郊・郊外ではファミリー向けの需要が今後活性化する可能性が高く、近畿圏ではほぼ全世代に渡って賃貸住宅ニーズが大阪一極集中。中部圏でも若年勤労層を中心とする名古屋一極集中となり、ファミリー層は限られる状況です。
地域ごとにまた年齢・世代ごとに移動人口は転入・転出状況が異なっていますから、エリアごとのニーズを的確に把握して、所有される賃貸住宅物件の運営・開発に生かしていただきたいと思います。

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LIFULL HOME’S総合研究所 副所長 チーフアナリスト 中山 登志朗 なかやま としあき

LIFULL HOME’S
総合研究所
副所長
チーフアナリスト
中山 登志朗なかやま としあき

出版社を経て、1998年よりシンクタンクにて不動産マーケット分析、知見提供業務を担当。
不動産市況分析の専門家として幅広くメディアへのコメント提供、寄稿、出演を行うほか、不動産市況セミナーで講演多数。
2014年9月にHOME’S総研(現:LIFULL HOME’S総研)副所長に就任。
国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任。(一社)安心ストック住宅推進協会理事。

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