住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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高齢化が急速に進む日本。認知症は加齢とともに発症率が高くなり、
2025年には65歳以上の『約5.4人に1人』が認知症になる、との予測データもあります。※1
ご所有の資産を守り、次の世代へ引き継ぐにあたり、認知症リスクは決して他人事ではありません。
その問題点と解決策をご紹介しましょう。
※1.厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」より
認知症の発症による最大のリスクは資産凍結です。本人の判断能力が低下・喪失した場合、金融機関の判断により預貯金口座が止められ、「本人の資産」を活用できなくなってしまいます。2030年には認知症患者の保有する金融資産額は215兆円に達する調査結果※2もあります。この額はなんと日本国民全体の個人金融資産の10%を占め、経済にも影響を及ぼしかねません。
※2.第一生命経済研究所 認知症患者の金融資産200兆円の未来 〜2030年度には個人金融資産の1割に達すると試算〜
この問題に対するひとつの解決策が「家族信託」です。家族信託とは信頼できる家族間で財産の管理や運用を任せる仕組み(契約)のこと。財産の所有者が、老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法です。委託者(例:父親)に代わり、受託者(例:子ども)による契約行為が可能になるため、認知症対策や相続対策として近年、関心が高まっています。家族信託では、受託者(例:子ども)が託された金銭を管理する口座として、『信託口口座(しんたくぐちこうざ)』を開設する必要があります。信託口口座は、委託者(例:父親)から託された金銭を、受託者(例:子ども)が安全に管理・運用できるよう、連名で開設され、受託者個人の財産と託された財産を明確に分離することができるようになっています。
父が先代から相続した土地があり、古家も残っています。そこに土地活用で賃貸マンションの建築を計画しています。建物の完成までには2年ほどの期間を要すると言われており、その間に父の判断能力が喪失した場合、マンション建築はどうなるのでしょうか。
ご本人の判断能力が喪失した場合、借入れが困難となり、計画が頓挫してしまう可能性があります。その他の相続対策を講じることも不可能となってしまいます。
土地の調査・測量から竣工・完成・建物の管理まで、長い期間の途中で父が認知症を発症しても、問題ありません。
信託口口座とは、信託契約に基づき受託者(子)が委託者(親)から信託された金銭を管理するための口座です。委託者(親)の認知症に関わらず、受託者(子)の判断で日常生活費の送金など、信託契約で決めた目的に従って受託者である子が入出金管理を行うことができます。
信託口口座は受託者の個人財産ではありません。受託者個人の口座とは分別されており、仮に受託者個人の債務(借金等)についての預金口座への差押えがあったとしても、信託口口座の預金は守られます。
委託者兼受益者(親)が認知症や死亡してしまった場合でも信託口口座は凍結されません。一般的に個人の口座は銀行が本人の認知症や死亡を知るとその時点で凍結されますが、信託口口座は凍結されません。
また、受託者を債務者とする信託口口座への融資は委託者の相続発生時に要件があえば相続税の債務控除を受けられます。なお、お借り入れについては、信託外借入と信託内借入の2通りの扱いがあります。
債務控除の可否について、信託外借入の場合は可能ですが、信託内借入の場合は内容により異なります。家族信託において確実に債務控除したい場合には、信託外借入にするか、信託内借入で債務控除が受けられる内容にするかのいずれかが良いでしょう。ただし、手続きは慣れないことが多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めることはとても手間も時間もかかる作業です。かつ的確な知識も必要になりますので、経験豊富な専門家へのご相談をおすすめいたします。
家族信託契約の範囲外とする借入金。
債務者が父であるケースが信託外借入です。
家族信託契約の範囲内とする借入金。
債務者が子(受託者)であるケースが信託内借入です。
認知症などで判断能力が不十分になった人をサポートする仕組みとして、『成年後見』制度もあります。
有効な方法ではありますが、デメリットもあり広まっていないのが実状です。
成年後見 制度 |
家族信託 | |
---|---|---|
財産の 管理者 |
管理者 : 成年後見人 専門家が選任されることが多い (弁護士、司法書士、社会福祉士など) |
管理者 : 受託者 ご本人が信頼している家族や友人 |
管理者の 選任者 |
家庭裁判所 |
本人 |
裁判所の 関与 |
あり |
なし |
不動産の 売却 |
家庭裁判所の許可が必要 ご本人居住用不動産以外は |
受託者の判断で売却できる 信託契約で売却権限を与えておく必要あり |
存続 期間中の コスト |
発生する 成年後見人への報酬額は家庭裁判所が決定 |
受託者に報酬を |
メリット |
ご本人の財産について |
家庭裁判所の関与なく |
デメリット |
ご本人の生活に必要最低限の |
受託者に身上監護権がないので |
ファイナンシャル
プランナー 山本 祐一やまもと ゆういち
一般社団法人相続FP協会 相続FPの学校 代表理事
1973年 神奈川県横浜市生まれ。
大学卒業後、大手ハウスメーカーにて営業店⻑職を11年経験。生命保険会社で営業とマネージャーを計14年経験。
「家族信託を知らなくて困る人を無くしたい」との想いから、2022年に独立。
その後、相続FPの学校を運営するとともに全国で家族信託セミナーや個別相談会を開催し普及に努めています。