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パナソニック ホームズ トップ > 土地活用 > 役立つ専門家コラム > 税金(2024年9月号)賃貸住宅経営の事業承継

税金(2024年9月号)
親子で考えましょう
賃貸住宅経営の事業承継
税理士が考える
ポイントとアドバイス

  • 賃貸住宅経営

税理士 稲場 広宣

このコラムの内容は、2024年(令和6年)9月現在のものです。

賃貸住宅経営を成功させるためには、知識、経験はもちろん必要ですが、将来の相続のために
最も重要なことは、生前から経営の状況を承継者であるお子さまが把握しておくことです。

相続発生後に、賃貸住宅経営の経験がなく状況を全く知らない後継者が、
スムーズに事業を引き継ぐことは困難です。
相続が起こるまで賃貸住宅経営にご家族が全く関与しておらず、混乱するケースを何度も見てきました。

相続実務で遭遇した残念な事例

Case A

所有不動産の実査のため、ご自宅近くの現地へ案内してもらったはずが、他人が所有する別物件。賃貸住宅経営に子は全く関与しておらず、所得税の準確定申告は資料が揃わず期限後申告に。遺産分割協議は迷走してまとまらずに数年経過。結局、小規模宅地等の評価減特例も受けられず、高額の相続税負担が確定してしまいました。

3年以内に分割がまとまれば特例の適用を受けられたのに…

Case B

高齢の親が単独で行った資産の組み替えによる相続対策で判断を誤り、税負担が大幅に増加するなど大変な事になっていたことが相続後に発覚!

親子で一緒に相談しながらやっていればこんなことには…

Case C

相続後に賃貸経営の書類を整理したところ、リフォーム詐欺と疑われるような不自然な請求書や振込票の控えが見つかりました。

親子で一緒に経営していれば被害は防げたかも…

Case D

賃貸物件3棟に対して引き継ぎ希望の子が4名おり、遺産分割協議の調整が難航。

生前にもう1棟を新築していれば、節税対策、遺産分割対策も出来たのに…

お元気なうちに親子で賃貸住宅経営に関する情報等を共有し、
時間をかけて一緒に業務を行うなど、引き継ぐための準備、助走を行う事が大切です。
今回は実務で遭遇した残念な事例の紹介と、それらを踏まえて賃貸住宅経営のスムーズな
事業承継のために行うべきことを税理士目線でまとめました。

やるべきこと7カ条

その1まず承継者を決めること

相続に向けて引き継ぐ子が明確になれば、子に自覚と責任感が生まれます。
引き継ぎの準備も具体的に進みます。
物件ごとに引き継ぐ複数の子がいる場合には、
相続時に分割しやすいように敷地の測量、分筆等を行い土地の区割りを明確にすること。
また借入の担保についても物件ごとに付け替えるなどの整備をしておくことをおすすめします。

その2物件の状況を
承継者と共有すること

隣地との境界やブロック塀など構築物の帰属、建物の状況など現状の問題点、
修繕履歴や今後の修繕計画などの情報を親子で共有すること。

その3入居者の状況を
承継者と共有すること

賃貸契約書の内容、預かり敷金の有無、入居者の状況、
特に古くからの入居者との過去の経緯やトラブル等の有無などの情報を親子で共有すること。

その4事業資金の状況を
承継者と共有すること

事業資金に関してどこの金融機関と取引があり、
いくらの残高があるのか、また借入がある場合は、
契約内容(金利、借入期間、担保、返済条件など)を確認し親子で共有すること。

その5グッドパートナーとの
繋がりを共有すること

賃貸住宅経営には、良き①建築会社、②賃貸管理会社、
③税理士、④金融機関(資金需要のある方)の協力が必要です。
(これを私はグッドパートナーと呼んでいます。)
子にこれらの担当者を紹介し、業務に一緒に取り組むことで業務を覚えますし、
担当者との人間関係も築くことができます。

その6賃貸経営に関する税金や
法律の知識を学ぶこと

賃貸住宅オーナーとして、所得税、相続税、固定資産税などの税金、
宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法などの
法律の基礎知識を書籍やセミナーに参加するなどして、深めていくことをおすすめします。

その7相続の事を親子で相談し
必要なことを具体的に進めること

相続対策は生前の準備でほぼ成否が決まります。
税金や法律の知識を親子で深め、相続税の節税対策、
納税資金の調達方法や遺産分割の方法などを税理士などの専門家を交えながら検討し、
お元気なうちに具体的に進めることが大切です。

まとめ

親への遠慮や他の兄弟との微妙な緊張感があることなどから、
相続や事業承継について子から話を切り出すことはハードルが高いことがあるように思います。
残念な事例にならないように、是非親から子へ積極的な声掛けをお願いしたいと思います。

パナソニック ホームズでは、各種セミナーや相談会等を定期的に各地で開催しています。
これらのセミナー等を声掛けの機会として是非ご利用いただければと思います。
私も毎年各地で「不動産所得の有利な確定申告セミナー」、相続税に関するセミナーや相談会を担当しております。
現在、「親子で考える相続対策シリーズ」として、
「相続税の計算方法と対策の三つの視点」や「一次二次相続対策セミナー」を開催中です。
セミナー等の最新情報は、パナソニック ホームズの各営業拠点にお問い合わせいただくか、
「イベント・セミナー情報」のページをご確認ください。

イベント・セミナー情報

税理士 稲場 広宣いなば ひろのぶ

税理士法人・四谷会計事務所パートナー税理士。
1985年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入行。
金融資産運用・ローン・遺言信託などのコンサルティング、銀行経理・税務など幅広い業務を経験後退職。
現在、四谷会計事務所パートナーとして税務全般の業務を担当。
不動産税務を中心に資産税に豊富な経験実績があり、自らもアパートオーナーとして地主・オーナーと同じ視点で考える不動産の有効活用、賃貸経営の法人化、所得税・相続税の節税対策などに定評がある。
パナソニック ホームズの研修会等の担当講師としても活躍。

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