住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
アパート経営や賃貸マンション経営を考える際、最初に重要なのはエリア分析、つまり市場調査です。
市場調査では、需要と供給のバランス、家賃相場、競合他社の賃貸住宅状況、周辺環境を把握、考慮することが一般的です。しかし、住まいは地域社会との関わりを反映する場所でもあり、自治体のまちづくりや地域の社会的課題など、多角的に調査することも重要。周辺エリアを深く理解することは、地域共生型の住まいを可能にすると同時に、他の賃貸住宅にはない魅力を備えた建物やプランの創出にもつながります。
子育て世帯を中心に「郊外暮らし」の人気が高まるなか、住まい選びの選択肢として注目されているエリアのひとつが、東京都の多摩地域です。市場調査では、行政の取り組みを調査するのはもちろん大切ですが、多摩地域の東京都における位置付けや将来性の理解も不可欠です。
「新しい多摩の振興プラン(東京都)」によると、自然と都市が調和し、多面的な魅力にあふれた多摩地域は、東京の持続的発展に欠かすことのできない地域として位置付けられています。また、多摩といっても地域によって特性や課題はさまざまなため、多摩地域は5つのエリアに区分され、エリアごとの課題も取りまとめられています。
今回は、その多摩地区の中から、東京23区に隣接する北多摩北部エリアの「西東京市」と北多摩南部エリアの「武蔵野市」を取り上げ、賃貸住宅経営を失敗しないためのヒントを紹介。地元密着の視点に加え、広い視野で論理的に考えることで、オーナーさまが提供したいライフスタイルの方向性が見えてくるかもしれません。多摩地域の豊富な情報をもとに、エリアの特性をよく調査しましょう。
まずは、西東京市のエリアの特性を見ていきます。
西東京市は、2001年1月に田無市と保谷市が合併して誕生しました。23区の練馬区や埼玉県新座市と隣接しており、市内には西武池袋線と西武新宿線が通っています。ひばりヶ丘駅から池袋駅まで急行で約16分、東京メトロとの直通運転により、渋谷や有楽町などの都心部へのアクセスも良好。また、田無駅から新宿駅までは約20分と、通勤・通学に便利なベッドタウンとなっています。
一般的にワンルームが6.4万円、1DKが8.2万円、1LDKが9.8万円、2LDKが12.1万円程度と言われています(いずれも新築かつ駅から徒歩5〜10分以内)。築年数が20年〜30年の場合になると、前述した金額よりそれぞれ2万円程度安くなることが多いです。
ファミリーや単身者どちらも暮らしやすいエリアではありますが、単身者向けの住居が供給過多なのに対し、ファミリータイプの供給が不足傾向にあるとも言われています。そのため、西東京市でアパート経営をはじめる場合、ファミリータイプの住居の提供が堅実かもしれません。もし敷地面積の関係上ファミリータイプが難しい場合は、競合との差別化を図った単身向け住宅も視野に入れると良いでしょう。
少子高齢化による人口減少は、多摩地域全体の課題です。西東京市が公表している人口推計によると、2027年までは増加し続け、その後は緩やかに減少すると推計されています。
課題解決に向けて、西東京市では「子どもがど真ん中のまちづくり」を掲げ、保育施設の整備や学校教育環境の向上に注力しています。シニア層には、加齢による虚弱(フレイル)をなるべく抑える「フレイル予防」に取り組んでおり、他にも「ゼロカーボンシティ宣言」や「都市農業の推進」など、多角的な取り組みを進めています。さらに、小中学校の生徒が西東京市産の農作物を使用したメニューを考え、学校給食や市内の飲食店での販売につなげるなど、市民参加型のユニークな取り組みも実施。
アパート経営において、地域活動が重要なヒントにもなることも少なくありません。子ども中心の政策を掲げている西東京市では、アパートの間取りに加え、行政の施策も若手ファミリー向けのアピールポイントとして活用することができます。行政の取り組みやコミュニティ活動などの情報をこまめにチェックしておきましょう。
次に、武蔵野市のエリアの特性を見ていきます。
武蔵野市は多摩地域の東部にあり、杉並区、練馬区に接しています。市内はJR中央線に沿って3つの駅圏(吉祥寺、三鷹北口、武蔵境)があり、それぞれ「都内有数の商業地である吉祥地エリア」「三鷹駅北口の文化・行政機能が集まる中央エリア」「医療・文教ゾーンの武蔵境エリア」という特色を形成しているのが特徴です。
JR中央線以外にも、JR総武線・東京メトロ東西線・京王井の頭線が通っており、都心への移動がとても便利。その利便性に加え、緑豊かな落ち着いた住環境や多彩な市民文化・都市文化が息づく環境により、「住みたい」「住み続けたい」まちとして長年高評価されています。
吉祥寺を擁する武蔵野市は若者に人気のエリアというイメージがありますが、三鷹駅北口や武蔵境駅周辺の再開発で、ファミリー層の人気も高まっています。武蔵野市の人口推計では、生産年齢人口は緩やかに減少することを前提としながらも、しばらくは増加傾向が続くと見込まれています。
そのため、武蔵野市でアパート経営を行う場合は、若者層かファミリー層か、ターゲット像を明確に設定し、どのようなコンセプトで展開するのか、広い視点で知恵を絞ることが大切になると考えられます。エリアも重要な判断材料になるでしょう。
プランニングにおいては、武蔵野市が目指す「未来の姿」を参考にするのもよいでしょう。
武蔵野市が第六期長期計画において設定している、10年後に目指すべき姿は、「誰もが安心して暮らし続けられる、魅力と活力があふれるまち」。その実現に向けて、「多様性を認め合う支え合いのまちづくり」や「未来ある子どもたちが希望を持ち健やかに暮らせるまちづくり」など、細部に目を行き渡らせる基本目標が設定されています。
とりわけ興味深いのは、武蔵野市では、昭和46年(1971年)の第一期基本構想・長期計画から、市民委員による策定委員会を中心に、市民自治による政策を実施してきたことです。まちづくりに市民が実質的に関わることで、まちづくりを楽しみ、まちに愛着と誇りが持てるようになり、より魅力的で活気あふれるまちになる。
武蔵野市でアパート経営をすることも「まちづくり」の一環として捉えることで、周辺環境を向上させる外観デザインや交流スペースの作り方など、武蔵野暮らしを楽しむためのさまざまな発想が浮かんできそうです。
西東京市と武蔵野市は、東京23区に隣接し、自然が豊かでありながら都心にも近いという、バランスのよい住環境が特徴で、アパート経営には有力なエリアと考えられます。
タブレットやインターネットを駆使する教育のデジタル化、ICT教育の推進により、家庭にいても学校教育ができる住環境を意識した住まいを検討することは必須になりつつあります。西東京市では、ファミリー層を意識して親子で調理を楽しむカウンターキッチンの他、在宅ワーク、在宅学習で使えるデスクスペースなどを確保するのもおすすめです。
武蔵野市の場合は、住居の充実に加え、多様性や文化という観点から、共用部にライブラリーやギャラリー、テラスラウンジなどを設け、入居者間の交流を促す場所をつくる方法もあります。市の政策と同じく、住民と一緒に住みやすい環境をつくりあげるという視点を取り入れることで、住まいや街への愛着が湧き、長期的な入居につながる可能性があります。
【まとめ】
今回は、東京都の多摩地域東部に位置する、西東京市と武蔵野市に焦点を当てエリアの特性やターゲットを探ってきました。両市とも人口減少という課題に対し、新しい時代のニーズに合わせた政策を展開していることもあって、若いファミリー層に人気と言えるエリアです。
アパート経営を失敗しないためには、十分なエリア分析と明確なターゲット像の確立に加え、「長く住み続けたい」と思ってもらえる魅力が必須。
オフィスの都心回帰や出社割合も高まっていますが、テレワークがなくなることは考えにくく、今後はハイブリッドな働き方が追求されるでしょう。未来創造には人々の暮らしのあり様がとても大事です。両市の政策を参考に、どのターゲットにどのような暮らしを提供していきたいのか。オーナーさまの得意分野も生かせる賃貸住宅経営の方法を見つけてください。