住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】

相続人が相続の権利を得ると、原則として「すべて受け継ぐ単純承認」および「限定的な承認」、もしくは「相続放棄」を選択することになります。相続放棄は、被相続人が所有していた権利や資産を一切受け継がないことを宣言するものです。
相続放棄および限定承認を選択した相続人は、家庭裁判所にその旨を申述する必要があります。手続きを行い相続放棄が認められた場合は、最初から相続人ではなかったとみなされ、それ以降は撤回することができません。なお、他に相続人である兄弟がいたとしても、相続放棄について同意や許可を得る必要はなく、各相続人が自由に意思決定することができます。ただし、後述のとおり相談せずに相続放棄を選択するとトラブルに発展する可能性もあるため、相続放棄の選択は慎重に行いましょう。
相続放棄をすると、その人は相続人としての権利や義務を失います。他に兄弟姉妹がいる場合は、他の相続人に相続するための権利が譲渡されることになります。例えば、相続人となった兄弟が3人いた場合、全員が相続する場合は1人あたりの相続分は三分の一です。もし3人のうち1人だけが相続放棄をすると、残りの2人が二分の一の相続分を受け取ることになります。

原則として被相続人が存命中の場合は、相続についての手続きは行えないものの、何も準備ができないままいざ相続の手続きが始まってしまうと、思ったよりも時間に猶予がなく、うまく事がまとまらない可能性があります。そのようなトラブルを防ぐためにも、相続について考えをまとめている場合は、あらかじめ自身の意思を伝え、トラブルを回避しましょう。
また、土地や不動産を被相続人が所有している場合は、遺言書に相続についての文言を盛り込んでもらうようにあらかじめ伝えておくと、実際に相続が発生した場合に遺言書の意向が最優先されるため、こちらも相続人の間で起こりうるトラブル防止につながります。
確実に遺言書を作成し相続の準備をしたい場合は、「遺言信託」のサービスを利用するのもおすすめです。遺言信託とは、信託銀行などが遺言書の作成から管理、そして実際に相続を進める際の手続きを実施するサービスのことです。相続人同士のトラブル防止にもつながり、被相続人の生前から準備することが可能です。
土地や不動産は、「誰が利用・管理しているのか」という点が非常に重要になります。相続の対象となっている土地や不動産に兄弟のうち誰かが住んでいる、もしくは管理をしている場合は「現占有」しているとみなされ、管理の責任を負う必要があるため、現占有しているにもかかわらず安易に相続放棄をしないようにしましょう。反対に、現に管理・占有していない人が相続放棄をした場合、管理義務も放棄することになります。
兄弟間で占有している人が誰もおらず、さらに全員が相続放棄を選択した場合、相続人がいないということになります。この場合は、家庭裁判所にて土地や不動産を管理するための相続財産管理人が選任され、その後の手続きを行います。相続人の手から離れた土地や不動産は現金化され、最終的には国庫に帰属されます。
相続放棄に限らず、遺産分割協議の内容を後から変更することは簡単ではありません。もちろんトラブルが発生する原因ともなるため、被相続人の遺言の有無をしっかりと確認したうえで、なるべく早い段階で自分の意思を明確にしておくことが重要です。
相続放棄の申述をには期限が設けられています。「相続の開始があったことを知ったときから」3ヶ月以内と定められているため、期限内に速やかに手続きを進めるためにも、相続人全員が納得のうえで相続放棄を進めるのが望ましいでしょう。
このとき、他の兄弟も相続放棄を検討することになった場合は、まとめて手続きを進めると、その後のプロセスがスムーズになるだけでなく、弁護士を雇う費用などを抑えられる場合もあります。
被相続人が賃貸住宅を経営していた場合、借家権も相続の対象となるため、相続人は賃貸住宅を引き継ぐことになります。一方で、賃貸アパートのみを選んで相続放棄をすることはできません。相続放棄の申請をするということは、被相続人から引き継いだすべての財産と負債を放棄するとみなされるためです。
そのため、被相続人の財産と負債の割合や、資産価値の見極めを行ったうえで、賃貸アパートを含めた資産を相続すべきかどうか判断することが重要です。
兄弟とともにご自身も相続人になっている場合、自分ひとりだけが相続を放棄すると、他の兄弟に相続の対象が移ります。相続放棄をすると、賃貸アパートを含めた財産や負債をすべて放棄することができますが、一度相続放棄の手続きを済ませると取り消せない点には注意しましょう。
また、賃貸アパートの入居率や築年数やメンテナンスの度合いなどによっても、相続人が賃貸アパートを経営すべきかどうかの答えが大きく異なります。築年数が古ければ、大規模な修繕やリフォームなどに多くのコストがかかるため、入居率が低いままでは負債が重なる一方になってしまいます。
兄弟全員が相続放棄をするのであれば、自動的に相続順位の下位にあたる人物に相続権が移る仕組みになっています。
しかし、相続について意見が分かれた場合、事前に兄弟間で話し合いをし、アパート経営のメリットやデメリットについて意識をすり合わせておくと、相続後にトラブルが発生することを防止できるでしょう。
では、相続対象に賃貸アパートが含まれていた場合、相続をするべきかどうかを判断するにはどのような点を見極めるとよいのでしょうか。
まずは、アパートの建築にかかったローンの残高が少なかったり、もしくは被相続人がすでに完済していたりする場合です。賃貸アパートが相続対象となっていた場合、ローン残高が残っていると完済するのは相続人の義務となります。そのため、ローン残高が高額で相続するには負担が大きい場合は相続放棄を検討するのも良いでしょう。一方で、負債が少ない賃貸アパートは、相続後にそのまま運用するか売却などの他の手段をとるかは相続人に委ねられ、相続放棄をした人はその権利を得られないため注意しましょう。
また、「立地がよい」「築浅」など、賃貸アパートの付加価値が高い場合です。これは相続人が負債を抱えることなく運用を進めやすいという理由で、空室対策をとることで大きな収入源につながる可能性もあるためです。さらに、「アパートの運用は負担」と感じる場合でも、相続後に売却や不動産会社への買取を依頼するなどの方法を検討することもできます。
負債が多い場合など、相続放棄をすることがメリットになるケースもありますが、兄弟が複数いる人は独断で相続放棄の手続きを進めると、他の相続人とのトラブルに発展しかねません。また賃貸アパートを相続する場合、ローンの状況やアパートの資産価値によっては、相続をすることでうまく活用できる場合もあるでしょう。
兄弟間でのトラブル回避のため、被相続人のもつ資産価値を早めに見極め、あらかじめ自身の意思を伝えておくことをおすすめします。
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