住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
「ゼロエミ」とは「ゼロエミッション(ZERO EMISSION)」の略で、「東京ゼロエミ住宅」は東京都が掲げる「ゼロエミッション東京」の戦略のひとつです。東京都は2021年1月に2050年までに世界のCO₂排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を宣言しました。2030年までに2000年と比べて温室効果ガス排出量を50%削減する「カーボンハーフ」を表明し、その実現のためにさまざまな取り組みを行っています。
東京都内の温室効果ガス排出量のうち家庭から排出されたものは、コロナ渦で一旦減少したものの、2022年度にはコロナ渦以前に近い、全体の約3割程度の水準に戻っています。インパクトの大きい家庭からの排出量を減らすためには、生活する空間である住宅の省エネ性能などを向上させることが必要です。しかし、東京都内に住宅を建てる場合、他の地域と比べて地価が高いだけでなく、昨今の材料費や人件費の上昇に伴い、建設費も高額になる傾向にあります。また、狭小な土地を利用する場合が多く、風通しや採光を確保するための斜線制限で屋根の形状が制限されるため、太陽光発電システムなどの再エネ設備の導入が進みにくいなどの課題がありました。
そこで東京都は、温室効果ガス排出量を減らす「ゼロエミッション東京」の一環として、「東京ゼロエミ住宅」の取り組みをスタートさせました。「東京ゼロエミ住宅」とは、東京都が定めた省エネ性能の高い住宅基準を満たした住宅のことです。「東京ゼロエミ住宅」は、断熱性能の高い断熱材や窓を使用したり、省エネ性能の高い照明やエアコンなどを導入したりすることで、住む人だけでなく環境にもやさしいというメリットがあります。
狭小な土地も多く太陽光パネルの設置が困難な住宅も多い東京都の地域特性を考慮して、「東京ゼロエミ住宅」の基準は再生可能エネルギー(太陽光発電システムによる削減量・「エネファーム」等の設備における売電量)を活用せずとも充分な消費エネルギー削減が行えるように設定されています。そのため、家庭で使用するエネルギーと、太陽光発電などで発電したエネルギーのバランスをとって、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする国のZEH (ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準よりも住宅の省エネ性能が高いことが特徴です。また、住宅内の設備機器の基準は、消費エネルギーを熱量に換算した一次エネルギー消費量の削減率を、国の建築物省エネ法の基準一次エネルギー消費量と比較して30%以上の削減を達成できるもの、という比較的高い基準を設けています。
「東京ゼロエミ住宅」が普及すると、高性能な建材や設備への需要が高まることで、導入コストが相対的に下がることが予想されます。東京都民が「東京ゼロエミ住宅」を選択しやすくなり、さらに普及が進むという好循環を東京都では目指しています。また、「東京ゼロエミ住宅」として認証を受けると、助成金(補助金)を受けることができることも、普及の大きな後押しとなっています。
ここからは、「東京ゼロエミ住宅」の基準をクリアするための住宅の仕様や設備についてくわしく解説していきます。
「東京ゼロエミ住宅」の助成対象となる住宅は、都内に建設する新築住宅(戸建住宅・集合住宅等)で、床面積の合計が 2,000平方メートル未満のものです。助成対象者は新築住宅の建築主(個人・事業者)、または太陽光発電設備・蓄電池及びV2H(住宅から蓄電池を搭載している乗用車に電力を供給するための設備)のリース事業者になります。
東京都は2024年10月から、これまで「水準1、水準2、水準3」の三段階に分けていた基準を、「水準A、水準B、水準C」に変更しました。水準1と水準2を水準Cに統合し、水準3を水準Bに移行、より高い数値が設定された水準Aを新設しています。さらに、再生エネルギー設備(太陽光発電設備等)を設置することを新たな要件としました。ただし、例外として屋根の面積が狭小な場合など、物理的に太陽光発電設備の設置が難しい場合は要件としていません。
| 断熱性能を示す外皮平均熱貫流率(単位w/㎡・K)※ | 省エネルギー基準からの削減率(再エネ除く) |
水準A | 0.35以下 | 45%以上 |
水準B | 0.46以下 | 40%以上 |
水準C | 0.60以下 | 30%以上 |
(参考)ZEH水準 | 0.60以下 | 20%以上 |
※外皮平均熱貫流率=建物の熱損失量の合計÷外皮面積……住宅から逃げていく熱量を外皮等面積あたりで表したもの。そのため数値が小さいほど断熱性能が大きい。
上記のように、ZEH水準を大きく上回る性能である「水準A」は、外皮平均熱貫流率(住宅の断熱性能を表す数値)が0.35w/㎡・K以下、再エネルギーを除く省エネルギー基準45%以上の基準を満たすことが必要です。
また、基準の変更にともない、助成額も増額されました。「水準A」を満たすと集合住宅等の建築主には最大200万円、戸建住宅の建築主には最大240万円の助成金が支給されます。さらに太陽光発電設備(オール電化住宅・3.6kW)を導入した場合は上限39万円、蓄電池の設置費については蓄電容量によって上限があるものの、機器費、材料費及び工事費等の3/4が助成されます。V2Hの設置費についても、50万円の上限つきで機器費等の1/2が助成されます。これらにより建築主が再エネ設備を導入するハードルが低くなり、「東京ゼロエミ住宅」の普及が進みやすくなることが予想されます。
「東京ゼロエミ住宅」の認証を受けるためには、水準A~Cを満たす断熱性能を建物に持たせる必要があります。さらに東京都では「必ず適合すべき仕様」として、以下のような規定を設けています。
照明器具
全室LED照明(玄関、トイレ、洗面・脱衣所、廊下、階段及び階段のうち1箇所以上は人感センサー付)
冷暖房設備
省エネラベル★4または★5の高効率エアコン設置(リビングなど主たる居室に必ず設置)
原則として太陽光発電システムなどの再エネ設備を設置すること(設置が困難だと認定された場合は免除)。
なお、令和5(2023)年度までは扉や窓、給湯設備についても詳細な規定がありましたが、設計・審査側の両者から基準の簡素化について要望が相次いだことから、それらの規定は令和6(2024)年から撤廃されました。
扉や窓、給湯設計については、いずれも計算上の性能によって基準を満たしていれば規定を満たしていることになり、設計上の自由度が増すことになりました。
パナソニック ホームズでは「東京ゼロエミ住宅」のもっとも高い「水準A」をクリアする断熱性能や設備が採用された多層階住宅「NEWビューノ」をラインナップしています。基準をクリアするだけでなく、オーナーさまにとってより価値が持続する賃貸住宅を目指した設備や設計がなされています。
高断熱仕様の多層階住宅「NEWビューノ」の特長
ここまで、東京都が普及を進めている「東京ゼロエミ住宅」の理念や基準について紹介してきました。前述のように「東京ゼロエミ住宅」は新築の賃貸住宅にも適用されます。ここからは「東京ゼロエミ住宅」の基準を満たした賃貸住宅を建てた場合のメリットについて解説します。
「東京ゼロエミ住宅」は建物の断熱性能が高いため、夏と冬の気温変化の幅を抑えられ、1年を通じて快適に暮らすことができます。また、断熱性が高まることで部屋ごとの温度差だけでなく、部屋の上部と足元の温度差が小さくなるため、冬場の起こることが多い「ヒートショック」の軽減効果もあります。
省エネ性能が高い設備の導入でエアコンや給湯器などの効率が高まり、入居者が毎月負担する光熱費を抑えることができるのも大きなメリットです。
上記のような入居者のメリットがある「東京ゼロエミ住宅」の基準を満たした賃貸住宅は、周囲の賃貸住宅との差別化という側面でオーナーさまのメリットにもつながります。入居者が賃貸住宅を選ぶ際に魅力的に感じてもらえ、客付けがスムーズになる効果が期待できます。
断熱性の高い建物は壁や窓の表面温度の低下が防げるため、結露を抑制することができます。ダニやカビが繁殖しにくくなるだけでなく建物の劣化も防ぐことができるため、老朽化のスピードを緩め、修繕費の削減につながります。
太陽光発電などの再エネルギー発電設備や省エネ性能が高い設備を導入は、オーナーさまの負担となる共用部分の光熱費を抑えることが可能です。オーナーさまの自宅と賃貸住宅を組み合わせた賃貸併用住宅にした場合は、オーナーさま自身も快適性や光熱費削減のメリットを享受できるでしょう。
「東京ゼロエミ住宅」の基準を満たすことで受けられる助成金も大きな魅力です。助成金により断熱性の高いワンランク上の賃貸住宅を建てることができ、省エネ性能の高い設備を導入する費用の負担を軽減することが可能です。
土地を買って新築する場合に限られますが、一定の要件を満たす新築の「東京ゼロエミ住宅」について、不動産取得税が大幅に減免されます。共同住宅の場合は以下の計算式が適用されますが、建物全体で水準Aの基準を満たすと全額免除となるのは大きなメリットです。
<共同住宅の不動産取得税の減免割合>
一棟の減免割合=(水準Aの床面積×10+水準Bの床面積×8+水準Cの床面積×5)÷(水準Aの床面積+水準Bの床面積+水準Cの床面積)×10
【まとめ】
「東京ゼロエミ住宅」は、環境への負荷を抑えるこれからの住宅に必要な機能を持った住宅です。賃貸住宅に採用する場合も、入居者とオーナーさま、それぞれにメリットが多く、検討する余地は多いにあるといえるでしょう。ハウスメーカーや建築会社を選ぶ際は「東京ゼロエミ住宅」の基準を熟知し、基準をクリアする建物の建築実績が豊富なところに依頼することが大切。慣れている会社は申請手続きもスムーズに行ってくれるでしょう。