住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
回遊動線を取り入れた間取りにはさまざまなメリットがあります。一方で、上手に取り入れないとデメリットになってしまう可能性もあります。
本記事では、回遊動線のある間取りについてメリットやデメリット、失敗しないためのポイントを解説しています。回遊動線を取り入れて設計された住宅の事例も紹介していますので、間取り検討時にぜひお役立てください。
動線とは家の中を移動する経路のことです。一般的な間取りでは、部屋や廊下の突き当りまで行ったら引き返す動線になっているのに対し、行き止まりがなく、ぐるりと回って移動できるのが回遊動線です。ただし、ただ単に行き止まりがなく、ぐるぐると移動できるだけの構造では回遊動線があるとは見なされません。生活をしやすくするために、あえて回れるようにしている間取りが回遊動線です。
回遊動線に関連して、知っておきたい言葉が「家事動線」です。
家事動線は、食事の準備や洗濯などの家事を行う際の移動の経路です。家事動線に配慮した間取りにすることで、家事を効率的にこなせるようになります。家事を行う際、できるだけ移動を少なく、移動するときもスムーズに行えるような間取りにするのがポイントです。たとえば、1階に洗濯機、2階に物干し場があると、洗濯のたびに階段を上り下りしなければなりませんが、洗濯機の近くに物干し場を設けることで、身体的な負担も作業時間も減らすことができます。
家事動線が充実していると、ひとつの家事をノンストップで進められたり、複数の家事を同時にできたりします。
回遊動線の概要がわかったところで、ここでは具体的にどのようなメリットがあるかを解説します。
回遊動線の第一のメリットは、家の中の移動距離を短くできることです。たとえば、水回りに回遊動線を採用すれば、キッチンで食事の準備をしながら、すき間時間に洗濯機を回したり、料理と洗濯を同時進行しやすくなります。
回遊動線は、部屋の出入り口が複数になり、各部屋へのルートが増えるので、家族の人数が多くても混雑しにくくなります。
特に朝の出勤時など、人の流れが集中する時間帯でも渋滞することなくスムーズに移動しやすくなります。
他にも、小さな子どもがいる家庭では子どもが走り回ることもあるため、大人とのすれ違いで転んだりぶつかったりする可能性があります。そのようなときにも複数の経路があることで、事故のリスクを減らせるかもしれません。また、緊急時の避難ルートも複数確保できるので、もしものときも家族が速やかに避難できて安心です。
回遊動線は行き止まりがないので閉塞感が少なく、開放感のある空間になるのもメリットのひとつです。
各部屋にアクセスしやすく開放感のある家は、家族のコミュニケーションも増えるかもしれません。
前にも少し触れましたが、家事の効率を上げられるのもメリットです。
たとえば、キッチンで料理しつつ合間に洗濯を回したり、買い物荷物を片付けてすぐに調理に取り掛かったりできれば、同時に複数の作業を進めるのもラクです。キッチン・ランドリースペース・勝手口を回遊できる設計にしておくと、すべての動作を滞りなく進められます。
回遊動線のデメリットについても理解しておきましょう。デメリットを踏まえて間取りを考えると、回遊動線の良さを生かしつつ、トータルで暮らしやすい住まいをつくれます。
回遊動線を取り入れるには、どうしても通路が必要です。しかし、通路が増えると本来なら収納になる部分も削られてしまいます。クローゼットや押し入れとして利用できる場所も、通路にしなければならないケースも出てくるでしょう。
子育て中で子ども用品が多い世帯や、趣味のものを多数保管している世帯では収納スペースが不足するかもしれません。収納の位置も制限されるので、収納量だけでなく使い勝手も悪くなる可能性があります。
そのため、家族にとって必要な収納量をあらかじめ決めておいたうえで、回遊動線を検討することが求められます。
収納スペースと合わせて、居住空間が削られる点も回遊動線のデメリットです。
特に、回遊動線でよく採用されているアイランドキッチンは、特徴をよく把握したうえで導入を検討しましょう。
アイランドキッチンは、キッチンを壁につけず独立した状態で設置するタイプです。キッチンの周りをぐるりと回ることができる反面、通路を広めに確保するために、他のキッチンよりも大きなスペースが必要になります。
LDK内でキッチンの占める割合が増えれば、当然ながらダイニングやリビング部分にも影響が出ます。たとえば、広々と大人数でくつろげるような大きなソファを設置したくても、リビングのスペースが狭くて設置できないケースも出てくるでしょう。あるいはLDKの広さを確保するために、他の居室を削る必要があるかもしれません。
そのため、回遊動線を採用するとどこかの居住スペースが削られる点は念頭に入れておきましょう。
回遊動線のデメリットとして、見落としがちなポイントがプライバシー問題です。回遊動線は、各部屋にアクセスしやすいのがメリットですが、プライバシーの確保の面ではデメリットになるかもしれません。
常に動線を共有するのが落ち着かないという家族がいるかもしれません。多世帯同居では人の行き来が多くなるので、余計に気になるかもしれません。
もちろん、動線が増えれば家族と顔を合わせる機会も増えて、家族間のコミュニケーションが活発になるでしょう。しかし一方で、一人でゆっくりと過ごしたいときや、仕事や家事に集中したいときに、動線の多さが気になってリラックスできなかったり、集中できなかったりするかもしれません。
そのため、ライフスタイルや家族の考えを考慮して、リビングから各居室へのつなぎ方は工夫しましょう。
回遊動線は複数の出入り口を設置しますが、暮らし方の変化により、全く使わない出入口が出てくるかもしれません。
洗濯物を干すために中庭への勝手口を動線内に設置しても、住んでいるうちにベランダに干す方が楽だと感じるようになり、中庭への勝手口は使われなくなってしまうかもしれません。出入口の設定にあたっては、家族の暮らし方を十分把捉したうえで検討しましょう。
回遊動線は通路のスペースが必要なので、その分家具の配置にも制限が生じます。
家を建てる前から大切にしている大型家具や、こだわりがあって取り入れたい家具がある場合には、配置するスペースを確保しておいてください。
回遊動線のデメリットを理解したうえで、採用にあたって注意すべきポイントを解説します。ぜひ参考にしてください。
家族全員が快適に暮らせるような回遊動線を設計するには、家族の生活リズムや家庭内での行動をよく理解しておくことが大切です。
例として洗濯を挙げるなら、洗濯してからどこで干すのか、干したらどこで畳んでどこへしまうのか、といった一連の流れを家族全員でシミュレーションしてみましょう。
ほかにも帰宅時の行動や調理、浴室から寝室への移動などさまざまな場面を想定して、必要な動線とルートを洗い出していくと、どのような回遊動線が役立つかが見えてきます。
収納スペースの問題については、必要な収納空間を事前に十分確保しておくことが対策につながります。
家族全員の衣類や布団・季節用品・ペット用品などをしまうには、どの程度の収納があればスッキリとした空間を保てるかを考えてみましょう。ライフイベントの発生による家族構成・生活スタイルの変化も想像しながら、長期的な視点で余裕を持った収納スペースを確保できると安心です。
また、回遊動線上に収納スペースがあることで、かえって家事効率を悪くしてしまう可能性もあるため、収納スペースの量だけでなく配置についてもよく検討しましょう。
最後に、回遊動線を取り入れた事例を紹介します。回遊動線を検討する際の参考にしてください。
三世代での暮らしを想定して設計されたこのお宅では、世代が異なっても家族全員が快適に過ごせるよう回遊動線を取り入れています。
たとえば、親世帯・子世帯双方のLDKでアイランドキッチンを採用しており、開放的な印象です。特に子世帯のほうでは出入り口を2つ設けており、水回りや居室への移動もスムーズなため、家事もしやすくなっています。また、内装もホワイトとブラックでモダンな雰囲気に統一され、スッキリした印象にまとめられています。
回遊動線のある家にこだわりを持って建てられたこのお宅では、LDK内にスタイリッシュで機能的なアイランドキッチンを採用しました。不足しがちな収納は、壁面に大容量のカップボードを設置することで解消できました。またインテリアは、生活感を抑えるためにモノトーンなグレーの色調でまとめ、空間全体をシックに仕上げています。ほかにも、LDK内は勾配天井が採用されており、室内全体が広々とした印象です。
アイランドキッチンで回遊動線を取り入れた住まいの建築実例を見る
こちらのお宅は、LDKに居間と和室を設けて、和モダンなインテリアにリフォームされました。
オーナー様がゲストを招いて料理ができるよう、使い勝手の良いアイランドタイプのキッチンを採用しました。回遊性の高いアイランドキッチンでは、料理をしながらゲストと楽しくおしゃべりしたり、いっしょに料理することもできます。
また、リフォーム前は仕切りの多かった空間もひとつの大きなLDKになったことで、不要な通路が減り動線も改善されました。内装は、和室コーナーともマッチするホワイトを基調としたあたたかなデザインです。
回遊動線は、室内の移動をスムーズにし、家事を効率的にこなすためにおすすめの間取りです。
しかし一方で、デメリットもあるので、自分たちの暮らしの動線を洗い出し、家族でよく話し合って検討してください。
本記事で紹介したポイントを参考にして、失敗のない回遊動線を完成させましょう。