住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
都市部などの人気エリアで家を建てようとすると「土地が狭い」「土地の形が悪い」など、さまざまな課題に直面することがあります。限られた敷地を最大限に活かすためには、空間を立体的に使う工夫が求められます。そこで注目されているのが、上階が下階よりも外側に張り出した構造の「オーバーハング」です。
この記事では、オーバーハングの基本的な意味や構造の違い、採用するメリット・デメリット、そして実際の建築実例まで詳しく解説します。
ここでは、オーバーハングの基本的な意味や建築上の特徴について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
建築における「オーバーハング(overhang)」とは、上階の床や屋根などが、下階の外壁ラインよりも外側に張り出している構造のことです。建物を外から見たときに、2階部分が1階よりも外に出ている形状になっており、都市部など土地の広さに限りがある地域の住宅に多く見られます。
「オーバーハング」と似た言葉に「キャンティレバー(片持ち梁)」がありますが、両者は厳密には構造の捉え方が異なります。キャンティレバーとは、構造力学的な視点で使われる用語で、片側だけで支える梁や床のことです。
オーバーハングは、建物の外観や設計として「張り出している状態」を指す建築用語であり、構造に限らず、住宅の外観や機能面にも言及されます。つまり、キャンティレバーは構造上の仕組み、オーバーハングは建築上の形態という違いがあります。
建物の構造説明や設計図の中では両者が併用されることもあるため、意味の違いを理解しておくと打ち合わせもスムーズです。
「狭い土地でも快適に暮らしたい」「都市部で個性的な家を建てたい」という方にとって、オーバーハングは魅力的な選択肢です。ここでは、代表的なメリットを解説します。
オーバーハングは1階よりも2階を張り出すため、敷地面積は変えずに延床面積を増やせる点がメリットです。特に都市部のように土地が狭い・変形している場合でも、より広い居住空間を確保できるため、無駄のない間取りが可能になります。敷地が狭くて希望通りの間取りが難しい場合でも、オーバーハングなら家族のニーズに応えられます。
オーバーハングによって上階を拡張する場合でも、張り出した部分が構造的に支えられていれば、1階の基礎や構造材を増やす必要がないケースがあります。そのため、基礎工事や地盤改良の費用を抑えながら、空間の広がりを得ることが可能です。ただし、張り出しの幅や構造の種類によっては補強が必要になる可能性があります。コストが増す場合もあるため、設計段階で確認しておきましょう。
オーバーハングで張り出した部分の下は、「軒下スペース」として利用できます。「建物に雨除けをつけたいが、軒を伸ばすスペースがない」という場合にもぴったりです。例えば、玄関の上部に設計すると雨天時も濡れずに出入りできます。自転車やベビーカーの一時置き場、宅配ボックスの設置スペースとしても活用できるでしょう。
オーバーハングによって2階部分がせり出すことで、1階部分は直射日光の差し込みを和らげ、夏場の室温上昇を抑える効果が期待できるのもメリットです。特に南向きに設計されたオーバーハングは、冬は日差しを取り入れ、夏は日差しを遮るといったパッシブデザイン的な役割を果たします。結果として、冷暖房の効率が高まり、光熱費の節約や快適な室内環境づくりが可能です。
1階部分を奥まった形にすることで、そのスペースを駐車場や通路、玄関前のアプローチとして活用できます。狭小地で車の駐車スペースの確保が難しい場合におすすめです。また、張り出した2階部分が屋根代わりとなるので、雨の日も濡れずに車の乗り降りが可能です。玄関までの導線を最適化すれば、荷物を効率よく運び込めるため、家事効率も高まります。
オーバーハングは、平坦になりがちな住宅の外観に奥行きや立体感をもたらす効果もあります。一般的な箱型住宅よりも、動きのある印象的なデザインに仕上げることができ、外観のアクセントとして人気です。シンプルモダンをはじめ、和モダンや北欧風、インダストリアル系のデザインなど、幅広い建築スタイルと相性がいいのも魅力です。
オーバーハングにより、狭小地や変形地でも希望の間取りを実現しやすくなります。例えば、前面に余裕がない敷地でも、2階をギリギリまで張り出すことで必要な居住空間を確保できるため、理想の間取りを実現しやすいでしょう。「建てられる土地」が広がるというメリットは、土地探しの幅を広げるとともに、エリアや予算の選択肢を増やすことにもつながります。
オーバーハング建築には多くの魅力がありますが、採用する前に知っておきたい注意点も少なくありません。法規制、構造、安全性、メンテナンス面など、見落とすと後悔につながる可能性もあります。ここでは、設計時に気をつけたいポイントを具体的に紹介します。
オーバーハングは敷地を有効活用できる反面、建ぺい率や容積率の計算に影響するケースがあるので注意が必要です。例えば、張り出した部分の下に柱などがあって建物を支えている場合は注意が必要です。このケースでは、1階の床面積として算入される可能性があり、結果として建ぺい率オーバーになるリスクがあります。
容積率についても同様です。設計時に床面積の扱い方を誤ると、建築許可が下りない恐れがあります。設計を進める際は建築基準法だけでなく、自治体ごとのルールも事前に確認し、法的な条件を十分に考慮したうえでプランを練ることが重要です。
オーバーハングは上階の張り出しによって建物の重心が偏るため、構造上、耐震バランスが取りにくいという欠点があります。地震時の揺れに弱くなるリスクもあるため、張り出しの大きさ、柱・梁の配置、構造材の強度について、設計段階で十分な検討が必要です。
特に木造住宅では構造計算が重要で、耐震等級の確保ができるか事前に確認しておきましょう。予算が合うなら、RC造や鉄骨造にするのがおすすめです。
オーバーハングは構造上の負荷が大きくなるため、3階建て以上の住宅では採用が難しくなるケースがあります。特に木造住宅では、張り出し部分にかかる荷重やバランスの取り方がシビアになり、耐震性・構造強度の観点から、設計上の制限が大きくなる可能性があります。建築条件や地盤の状況によっては、構造計算の結果としてオーバーハングを断念するケースも少なくありません。
オーバーハングは立体感のある個性的な外観を実現できる一方、設計のバランスを誤ると、不安定で重たく見えてしまいます。特に2階部分だけが極端に張り出している場合、アンバランスな見た目になるため注意が必要です。外観デザインにこだわりたい方にとっては「思ったよりもゴツく見える」「圧迫感がある」と感じられるかもしれません。
その場合は、外壁の素材の選び方や色使いで視覚的な重さを軽減できます。バランスを意識した設計によってスッキリとした印象に仕上げることも可能です。オーバーハングの魅力を活かしつつ、スマートかつ安定感のある外観を目指しましょう。
オーバーハング部分の構造的な制約により、大きな窓を設置できなかったり、窓の位置が制限されたりするケースもあります。例えば、張り出し部分の梁や柱との兼ね合いで、希望していた位置に大きな窓が取れないといった問題です。
また、張り出し部分の真下は軒下になるため、日当たりや採光の面でも影響を受ける可能性もあります。窓の配置を重視する場合は、事前にプランナーや設計士に相談しましょう。
張り出した構造部分は雨風の影響を受けやすく、劣化の進行が早くなるリスクも無視できません。外壁の継ぎ目や軒下部分の防水処理が不十分な場合は、雨漏りの原因になる可能性もあります。
また、オーバーハング部分は足場の設置が難しく、場合によっては特殊な足場が必要になることもあるので、将来的な補修・塗装などのメンテナンス費用が通常より高くなりやすい点も頭に入れておきましょう。
オーバーハングの構造には高い施工技術が求められるため、すべての施工会社が対応しているわけではありません。特に規格住宅やローコスト住宅を提供する一部の会社では、オーバーハングが「対応外」なっているところもあります。また、対応できるとしても、経験の少ない施工会社では心配な部分が多いでしょう。
特に構造上のバランスや法規制への対応など、特殊な要素が多いため、依頼先の検討は慎重に行いたいところです。施工するのが難しい場所だからこそ、実績のあるハウスメーカーや工務店を選ぶことが大切です。
ここでは、パナソニックホームズが手掛けたオーバーハングの建築実例を紹介します。狭小地や都市型住宅において、オーバーハングがどのように機能し、デザイン性や住み心地にどのような影響を与えるか、実際の施工例を通して具体的にイメージしてみましょう。
玄関部分に設けたオーバーハングと、シンプルな切妻屋根が印象的な外観の2階建て住宅です。ホワイトとブラウンのキラテックタイルで張り分け、スタイリッシュな印象に仕上げています。
1階にはカフェのようなおしゃれなLDKと使いやすい水まわり、玄関からすぐの場所には奥さまのネイルサロンを配置し、暮らしの楽しさと機能性を両立した間取りになりました。空間ごとに印象を変えながらも統一感を持たせた魅力的なデザインです。
ドアを開けるたびにワクワクするこだわりいっぱいの住まいの建築実例を見る
2階のオーバーハングや連なる小窓が印象的なモダンな外観の住宅です。外壁はモノトーンのキラテックタイルを張り分け、住宅全体が洗練された雰囲気になっています。
また、16.66kWの大容量太陽光発電を搭載し、エコで心地よい三世代同居の暮らしを実現している点も特徴です。張り出し構造により得られた空間を、デザインと実用性の両面で活かしている好例です。
モダンな外観が目を引く大容量発電がある住まいの建築実例を見る
ブラックのスクエア型キラテックタイルとオーバーハングにより、個性的で洗練さが際立った外観です。玄関の真上にオーバーハングが大きくせり出しているため、雨除けとしても十分に機能しています。
屋内は、施主のこだわり抜いたデザインにより、生活感がなくスタイリッシュかつ上質な雰囲気に仕上がりました。10.47kWの大容量太陽光発電も搭載したことで省エネ効果も抜群です。
オーバーハングは、敷地条件に制約がある場合や、住まいに個性を求める方にとって有効な手法です。ここでは、オーバーハングが特におすすめの人の特徴や暮らしのスタイルを紹介します。
限られた土地を有効に使いたい、延床面積を確保したい方にとって、オーバーハングは強い味方です。建ぺい率の制限があるエリアでも、上階を張り出すことで広々とした住空間を実現できます。
オーバーハングは見た目にもインパクトがあり、立体感のある洗練された外観を演出できます。デザインのアクセントとしても効果的なので「人とは違うデザインにしたい」「シンプルモダンな家が好き」という方にもぴったりです。
玄関ポーチや駐車スペースの上部に2階を張り出すことで、自然と“屋根のある空間”が生まれます。雨に濡れずに車の乗り降りができたり、自転車置き場を兼ねられたりと重宝します。無駄のない敷地利用ができるため、生活動線を重視したい方にもおすすめです。
オーバーハングを活用すれば、通常は「狭くて無理かも」と思っていた土地にも可能性が広がります。狭小地や変形地でも理想の家づくりが可能です。土地選びの幅が広がり、予算や立地条件とのバランスも取りやすいでしょう。
オーバーハングは、狭小地や都市部でも空間を最大限に活かせる優れた手法です。限られた土地でゆとりある暮らしを実現したい、個性的な外観にしたいと考える方には魅力的な選択肢といえます。
一方で、建ぺい率や容積率の制限、耐震性、施工の難易度など、見落とせない注意点もあります。こうした点をしっかり理解したうえで、構造や法規制にも詳しい設計者と相談しながら計画を進めることが、後悔のない家づくりへの近道です。
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