住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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【目次】
断熱性能の高い賃貸住宅は、空調にかかる電気代を節約できることや、就寝時・起床時などに感じる寒暖差などを低減することで、健康面でのメリットもあります。そのため近年入居者の人気を集めていて、オーナーさまにとって近隣物件との差別化要素にすることができます。
入居者側の人気の高まりもありますが、近年断熱性能が重視されるようになったのは、やはり政府が推進している住宅部門での二酸化炭素排出量削減を目指した、「ZEH」の基準の策定が大きな要因となっています。
「ZEH」は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、壁や窓の高断熱による室内の温度変化低減と、省エネ性能の高いエアコンなどの空調機器、そして場合によっては太陽光による自家発電を用いることで、消費エネルギーを実質ゼロにした住宅のことを指します。
ZEH基準によって、断熱性能が明確に決められたことで、断熱性能の高い住宅の普及が現在進んでいます。
政府が住宅部門について掲げた目標は、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」というものです。
そこにはもちろん賃貸住宅も含まれており、ZEHの賃貸住宅・集合住宅向け基準として、ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)が2018年に基準が明確化して以降、新築賃貸住宅でもZEH-Mの基準を満たした物件が増加しています。
一方で、賃貸住宅経営を検討されているオーナーさまにとって、ZEH-M基準を満たすなど、省エネ・断熱性能にすぐれた賃貸住宅物件を建てるメリットは、明確にイメージしにくいかもしれません。
そんな中、2024年9月にパナソニック ホームズが行った調査によると、多くの賃貸住宅入居者が光熱費の削減や快適性といった断熱性能が高いことによるメリットを理解しているという結果が出ました。
賃貸住宅への転居意向者を対象に『省エネに関する認知調査』を実施
高断熱賃貸住宅のメリットは分かるが、探す方法を知らない
~断熱・省エネ性能を示す「ZEH」や「省エネ性能ラベル」の認知不足が要因~
(https://homes.panasonic.com/company/news/release/2024/0902.html)
このように、「ZEH」の具体的な内容や、省エネ・断熱性能を知ることができる「省エネ性能ラベル」について入居者は知らなくとも、賃貸住宅入居者は断熱性能による快適性などのメリットを理解しているようです。
しかし、そういった賃貸住宅は、入居者だけでなく、オーナーさまにとってもメリットがあります。
高断熱性能の賃貸住宅は、夏場の熱中症対策や、冬場に起こる入浴後の浴室内と室内の温度差によって起きる「ヒートショック」対策に有効なだけでなく、冬場の起床時などの寒暖差によって起こる急激な血圧の変動などを抑え、日々の健康維持にも有効です。さらに室内の湿度変動が少ないことで、湿度が高い季節でも入居者は快適な生活を送ることができます。快適な生活によって物件を気に入ってもらうことや、健康維持によって、長期間の入居が期待できます。
断熱性能を高めるために、建築時の内装材を撤去して室内の壁の間や天井や床に断熱材を充填するタイプの改修を行った場合、断熱性能の向上だけでなく、副次効果として遮音性能の向上ももたらします。入居者同士の生活音をめぐるトラブルを低減できるだけでなく、床下に断熱材を充填した場合は、子どもの立てる足音を気にするファミリー層へアピールすることもできます。
断熱性能の高さや省エネ設備などによって、入居者の光熱費がある程度削減されることが期待できます。そのため省エネ・断熱性能を高めたり各種設備を導入するためのコストによる家賃の高さも、光熱費が削減されやすいことを挙げることで、入居者には納得してもらいやすくなります。
また、賃貸併用住宅であればオーナーさまも光熱費を節約することができます。
ZEH-M基準を満たすことで、国による「長期優良住宅」の認定基準も満たせます。認定されると固定資産税の減税措置の延長、登録免許税の税率引き下げなど各種優遇措置がつくため、税制面でもメリットがあります。
政府が掲げる、2030年を目標としたZEH水準の賃貸住宅の普及だけでなく、今後も地球温暖化による夏の最高気温が高い状態が続く可能性があることや、ヒートショックの危険性が気になる高齢者の方が増えていくこともあり、今後さらに断熱性能を重視する入居者も増えていくでしょう。
前項にて、賃貸住宅入居者は高断熱性能住宅のメリットは認識しているが、ZEHなど省エネ・断熱性能を探す方法がわからないという調査を紹介させていただきましたが、2024年4月からスタートした「省エネ性能表示制度」により、入居者にとって省エネ・断熱性能に優れた住宅を選ぶことがより簡単になりました。まずは、制度に基づくラベル(以下、「省エネ性能ラベル」)の見方を確認していきましょう。
1.「エネルギー消費性能」
星印が多いほど省エネ性能が高いことを示します。国が定める省エネ基準を満たしていると星が一つ表示され、そこから消費エネルギーを10%削減するごとに星が増えていくという表示になっています。
なお、「国が定める省エネ基準」とは、地域ごとの気温などに応じた標準的な仕様による暖房・冷房・換気・照明・給湯・家電などの合計エネルギー消費量で、その物件の合計消費エネルギー量が少しでもそれを下回れば基準を満たしていることになります。
太陽光発電などの再エネ設備がない場合は、基準を満たし30%以上消費エネルギーを削減している星4つが上限となり、再エネ設備がある場合は自家発電による差し引きも合算した、実質50%以上の削減による星6つが最大となります。
2.「断熱性能」
建物からの熱の逃げやすさを示すUA値と、建物への日射熱の入りやすさを示すηAC値それぞれの数値で評価します。熱の逃げやすさで暖房時の等級、日射熱の入りやすさで冷房時の等級を評価しています。もちろん、それぞれの数値には日本を気温ごとに8地域に分けた基準を設けており、北海道から沖縄までできるだけ公平な基準になっています。
熱の逃げやすさと日射熱の入りやすさはそれぞれ7段階の等級で評価され、両者のうち評価の低い側が、赤い家のアイコンによる等級で省エネ性能ラベルに表示されます。
3.「目安光熱費」
住宅面積30平方メートルあたり一人が居住していると仮定し、日本を気温ごとに8つの地域に分けた基準によるエネルギー消費量と、全国統一の電気・ガス代と灯油等の燃料費を掛け合わせることで、年間の目安光熱費を算出します。入居者の生活スタイル、電気・ガス・燃料代の変動、自家発電による売電分などは反映されないためあくまでも目安ですが、入居者は金額を通して具体的に省エネ性能を知ることができます。
4.「評価機関」
「省エネ性能ラベル」は「自己評価」と「第三者評価」によるものが掲載できます。「自己評価」はハウスメーカーなどの販売・賃貸事業者が一般社団法人 住宅性能評価・表示協会が指定した基準によって自ら計算した結果によるラベルで、「第三者評価」は一般社団法人 住宅性能評価・表示協会に登録している専門の評価機関が評価した結果に基づくラベルです。
5.「ZEH水準」…「エネルギー消費量」の星が3つ以上かつ断熱性能が家アイコン5つ以上であれば、国のZEH水準を満たしていると表示することができます。なお、この表示ができるのは第三者評価による省エネ性能ラベルのみです。
6.「ネット・ゼロ・エネルギー」…ZEH水準を達成しつつ、太陽光発電の売電分なども合わせて最終的に年間のエネルギー収支がゼロ以下の場合、ネット・ゼロ・エネルギー=ZEHと表示することができます。こちらも第三者評価によるラベルのみの表記です。
このように、「省エネ性能ラベル」は、省エネ性能と断熱性能を一度に確認することができます。第三者評価によるラベルであれば、ZEH水準を満たしているかどうかや、その延長として「ネット・ゼロ・エネルギー」を達成しているかどうかも確認することができます。
ラベルによる性能表示は、現状は「建築物の販売または賃貸を行う事業者」による努力義務であり、新築物件でもラベルを掲示しないことによる罰則はないと考えられています(優遇誤認等を目的とした不当表示は罰則あり)。とはいえ新築やリノベーション物件で省エネ・断熱性能が評価されている場合、各種広告媒体やパンフレットなどにラベルを掲載することが可能なため、入居者集めにおいては、基本的にはラベルを表示しないより表示するメリットが勝るでしょう。
なお、「建築物の販売または賃貸を行う事業者」という規定ですが、いわゆるサブリース会社や「反復継続的に賃貸を行っている」オーナーさまも対象となります。
さらに、建築物省エネ法の改正により、2025年4月以降に着工される新築住宅は全て一次エネルギー消費量基準への適合(ラベル上での星一つ相当)と、断熱等級4以上が義務化され、満たさない住宅は着工できなくなってしまいます。
つまり、2025年4月以降に着工した新築賃貸住宅は、全て一定の省エネ性能と断熱性能を持っていることとなり、入居者の賃貸住宅選びに大きく関わってくると考えられます。
今後は新築賃貸住宅の間で、基準引き上げ前の物件が選ばれにくくなる可能性があるなど、賃貸住宅市場への大きなインパクトがある制度変更です。そのためオーナーさまにとっても、無視できない制度といえるでしょう。
2025年から新築物件の省エネ・断熱性能が引き上げられることによって、「省エネ性能ラベル」による性能アピールはますます入居者集めに重要になっていくとみられます。
また、「省エネ性能ラベル」は省エネ性能がはっきりしている物件が、2024年4月1日以降に再賃貸される場合、既存物件でも表示が可能です。そのため、既存物件の競争力確保のために、省エネ・断熱性能を高めるリフォーム・リノベーションを行うのもよいでしょう。新築賃貸物件に負けない設備を備え、省エネ性能ラベルで入居者にアピールすることができます。
【まとめ】
2024年4月から始まった「省エネ性能ラベル」制度。2025年4月から賃貸住宅の省エネ・断熱性能の基準が引き上げられ、並行してラベルの存在や省エネ・断熱性能について入居者への周知が進んでいくと思われます。
今後ラベルを活用した性能アピールが活発になるほど、入居者にはしっかりと物件の性能をアピールすることが重要になります。
パナソニック ホームズ不動産では、ハウスメーカーのパナソニックホームズ ホームズと連携し、省エネ性能ラベルの表示から入居者への周知までしっかりと対応。省エネ・断熱性能の水準が上がる中、安心して物件を任せられることができ、すぐれた性能の賃貸住宅を求める入居者へのアピールを行えます。