住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
健やかに暮らせる
「健康快適な住まい」を目指して
もくじ
「住環境による健康リスク」は
世界規模の課題
2018年11月、WHO(世界保健機関)により「住宅と健康に関するガイドライン※」が発表されました。この資料では、国レベルでの取り組みにおいて、「住宅環境の改善は命を救い、病気を減らし、生活の質を高め、貧困を減らし、気候変動の影響を和らげ、SDGsの達成すべき目標にゴール3(すべての人に健康と福祉を)およびゴール11(住み続けられるまちづくりを)の側面で貢献する。」という要旨から始まります。
このように住まいと健康は密接な関係にあるという前提を基に、ガイドラインには住まいの過密性、寒さ、暑さ、事故、ユニバーサルデザイン、水質、空気の質、有害物質といったさまざまな項目別に方針や推奨値などが記載されており、寒い室内環境が身体に与える影響については日本の研究結果が報告されています。
このガイドラインに関しては2021年度にもWHOによる見直しが行われるなど、現在進行形の取り組みです。住む人の健康に大きな影響を及ぼす住環境の改善は、世界全体で取り組まなければいけない課題のひとつです。
※引用:WHO “Housing and health guidelines”(2018年11月23日発行)
半世紀前から続く
パナソニック ホームズの取り組み
パナソニック ホームズでは、健やかで安らかな暮らしを実現する「健康快適な住まい」を目指し、創業当初から取り組みを進めてきました。特に日本の住宅において大きな課題である温熱環境と空気環境に関しては、近年、専門家とともに産学共同研究および実証実験も行っています。
PM2.5を低減させるHEPAフィルターの
性能・効果の実証研究
当社の戸建住宅に採用するオリジナルの換気システム「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」におけるPM2.5の除去性能について、慶應義塾大学 医学部(化学教室)教授 井上 浩義氏と共同研究を実施しました。
■共同研究の概要
今回の共同研究では、 (1)パナソニック製「HEPAフィルター」の性能を確認するとともに、 (2)同フィルターを採用した当社オリジナルの換気システム「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」を導入した実邸の室内外でPM2.5の濃度を測定し、効果を検証しました。
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(1) パナソニック製「HEPAフィルター」の性能確認
50cm四方のアクリル箱を用意し、濾紙を燃焼させることで生じた煙を継続的に40分間にわたりアクリル箱に入れ、「HEPAフィルター」を透過したPM2.5の除去率を測定。箱内のPM2.5は高濃度(200万particles/m3)にしました。結果、一部の透過は許したものの、最終的に90%以上の除去率を維持しました。同フィルターはガラス繊維を編み込んだ形状をしており、今回使用したパナソニック製「HEPAフィルター」は、二重のガラス繊維構造になっており、PM2.5のような小さな微小粒子も効果的に捕捉することが検証できました。
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(2) 「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」の効果検証
同システムを導入した神奈川県内(3邸)と福岡県内(3邸)の戸建住宅 全6邸において、2015年10月から2016年1月までの期間内で各邸約30日間測定を実施。屋外と屋内(1階リビング・2階居室)にPM2.5測定器を設置しました。
結果、実生活環境において、PM2.5の濃度は、屋外に比べ屋内では大きく低減。約30日間における濃度の累計においては、屋外を100%とすると、1階リビングは約16%に、2階居室は約5%にまで低減されており、「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」の導入による効果が明らかとなりました。
また、1日の生活における濃度変化においても、居住者の不在時には濃度がゼロに近い数値になったほか、人の活動が少ない2階居室は濃度が非常に少ない値となりました。
一方、窓開け時をはじめ、調理や掃除に伴う室内でのPM2.5発生により1階リビングにおいては濃度が高くなる場合もありますが、1?2時間程度で低減することも判明し、同システムの空気浄化性能の高さが検証できました。
■PM2.5低減の検証 測定結果(30日間の累積値)
■1日の生活におけるPM2.5の濃度変化
窓開けにより室内のPM2.5濃度は屋外の値に近づくものの、閉じた後1?2時間で5μg/m3以下に。居住者の不在時はLDK・2階居室とも濃度はほぼゼロ。
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<PM2.5濃度測定の概要>
- 対象
- 「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」を採用した神奈川県内(3邸)と福岡県内(3邸)のパナホーム戸建住宅 全6邸
- 測定期間
- 2015年10月から2016年1月までの期間内で各邸約30日間
- 測定場所
- 屋外・1階LDK・2階居室 全3ヶ所
- 測定器
- 吸引型デジタル粉塵計[柴田科学(株)製]
■「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」について
「エコナビ搭載換気システム HEPA+(プラス)」は、工業化住宅業界で初めて「HEPAフィルター」を標準搭載した換気システム。外気をベース空間(床下)に取り込み、沈降作用で浄化し、さらに「HEPAフィルター」を通したきれいな空気を各居室に直接給気し、家中に巡らせます。
取り込まれた外気に含まれる花粉や埃は、ベース空間(床下)を通過する間に沈降していきます(沈降作用)。さらに、0.3μm(マイクロメートル)の粒子を99.97%除去※1できる「HEPAフィルター」により微小粒子まで浄化し、各居室へ直接給気することで、健やかな空気環境を実現します。
※1HEPAフィルターの工場出荷時の性能値であり、換気システム全体の性能値ではありません。(JIS規格による)また、0.3μm未満の微小粒子状物質については、除去の確認ができていません
上記はプレスリリースの一部抜粋です(注釈含む)。全文は下記をご覧ください。
https://homes.panasonic.com/company/news/release/2016/0318-1.html
住居の「温熱環境」「空気環境」と
健康に関する実証研究
実住宅において、住宅用全館空調システムの「温熱環境」が健康に与える影響を慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 教授 伊香賀 俊治氏と、また、HEPA フィルターを有する換気システムの「空気環境」が健康に与える影響を慶應義塾大学 医学部(化学教室) 教授 井上 浩義氏と共同で実証研究しました。
①温熱環境が冬季血圧・夏季睡眠に与える効果についての共同実証研究<伊香賀教授>
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・冬季居住者の血圧変化に関する実証※1
住宅の省エネルギー基準に定められる地域区分5・6地域において、ZEH水準の建物性能を有する住宅居住者(有効サンプル数:個別空調群9世帯18名・全館空調群5世帯9名)を対象に実証を行いました。調査期間は2021年1月20~2月20日のうち任意の 10 日間、室内温湿度および家庭内血圧の測定、アンケート調査を実施しました。
※個別空調群:第三種換気方式・各室にルームエアコンを設置した居室間歇空調方式
全館空調群:第一種換気方式・ルームエアコンを熱源とした全館空調方式
各室の平均室温は個別空調群に対して全館空調群は有意に高く、WHOの住宅と健康ガイドラインにて勧告されている最低室温18℃以上※2 を全室で満足しており、高温入浴などの危険入浴リスクの低減に有効とされる室内環境※3が維持できていることが確認されました。(グラフ1)また、全館空調群は個別空調群に比べ、起床時最高血圧が4.1mmHg 有意に低く、入浴前の血圧上昇値も2.1mmHg 有意に低いことが確認できました。(グラフ2、グラフ3)厚生労働省が提唱している“健康日本21(第二次)”※4では平均血圧 4mmHg 低減が目標とされており、空調方式を含めた室内温熱環境の改善は循環器疾患予防に有効な方策として期待できることが明らかになりました。
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・夏季居住者の睡眠の質に関する実証※5
住宅の省エネルギー基準に定められる地域区分5・6地域において、ZEH水準の建物性能を有する住宅居住者(有効サンプル数:個別空調群7世帯16名・全館空調群5世帯13名) を対象に実証を行いました。調査期間は2021年7月20日~8月31日のうち任意の10日間、室内温湿度および睡眠計(MTN-220 アコーズ社製)を装着した測定、アンケート調査を実施しました。
※個別空調群:第三種換気方式・各室にルームエアコンを設置した居室間歇空調方式
全館空調群:第一種換気方式・ルームエアコンを熱源とした全館空調方式
寝室の就床時平均温度および平均相対湿度は全館空調群が有意に低く維持されており、主観申告においても暑さにより睡眠が困難となった割合が有意に低い結果が得られました。(グラフ4)温熱環境要素以外の睡眠の質に関連する要因(個人属性・生活習慣等)を考慮した上で、全館空調群の効果を分析検証した結果、個別空調群に対して入眠潜時は0.60倍に短縮、睡眠効率は1.09倍高いことが示され、睡眠の質を向上させることが期待できる結果が得られました。(グラフ5)
②空気環境が肺機能に与える効果についての共同実証研究<井上教授>
PM2.5除去装置(HEPA フィルター)を換気の給気部分に備えた住宅では、外気に比べて PM2.5が低く抑えられていることを検証されています。※6PM2.5除去の換気システムを備えた住宅に住むことによって、PM2.5 への曝露が少なくなると、健康への影響が期待されるため、今回 PM2.5除去の換気システムを備えた住宅の居住者に対し、約6年間の追跡調査を行いました。
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・実証研究の結果
PM2.5除去の換気システムを備えた住宅の居住者(5世帯7名)を対象に実証を行いました。
調査期間は2015年11月~2021年7月で、外気及び屋内のPM2.5濃度、血圧、スパイロメーターによる肺機能の測定、アンケート調査などを行いました。
まず外気及び屋内のPM2.5濃度について、2015年、2021年共に外気に比べ屋内は 82~91%低く抑えられていました。PM2.5除去の換気システムにより外気に比べて屋内のPM2.5濃度が低く抑えられることが確認され、また6年間でPM2.5の除去性能は低下しておらず、期間中は屋内のPM2.5濃度は低く保ち続けられていたと考えられました。(グラフ6)
肺機能の評価については、PM2.5の影響を受けやすいとされる FVC(最大限息を吸った後にできる限り一気に吐き出した空気の量、努力性肺活量)、FEV1(努力性肺活量の最初の1秒間で吐き出した空気の量、1秒量)、肺年齢(性別、年齢、身長、FVC、FEV1から計算される呼吸機能の目安※7)の低下量が予測に比べて抑えられている傾向が見られました。実測値と予測値のそれぞれの値は、FVC:実測値-0.02Lに対し予測値-0.09L、FEV1:実測値-0.07Lに対し予測値-0.13L、肺年齢:実測値-2.6歳に対し予測値-5.7歳でした。(グラフ7)
この結果から、PM2.5除去の換気システムを備えた住宅は居住者の肺機能などの健康状態に良い影響を与える可能性が示唆されました。
※1個別温度制御機能を有する全館空調における冬季居住者の血圧変化に関する実測調査 空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集 2021.9 pp.189-192
※2WHO Housing and health guidelines. Recommendations to promote healthy housing for a sustainable and equitable future 23 November 2018 Guideline
※3国土交通省社会資本整備審議会 第 49 回住宅宅地分科会 資料 4
※4医学のあゆみ 健康日本 21(第二次)の中間評価とこれからの課題 271 巻 10 号 2019 年 12 月 7 日 pp1146-1147
※5個別温度制御機能を有する省エネ型全館空調システムに関する研究(その 1~4) 日本建築学会大会学術講演梗概集 2020.9 pp.1829-1832、2021.9 pp.1981-1984
※6中川浩,井上浩義,東木宏樹.戸建住宅における外気浄化の換気方式に関する研究─換気の入口で高性能フィルターによる除去をした場合の PM2.5 濃度の実測評価─.環境工学 II 2017; 2017: 735-6
※7日本呼吸器学会 肺年齢普及推進事務局. 肺年齢の利用についてー“肺年齢コンセプト”仕様書 ver.1.1b. 2008
上記はプレスリリースの一部抜粋です(注釈含む)。全文は下記をご覧ください。
https://homes.panasonic.com/company/news/release/2021/pdf/120101.pdf
「健康快適な住まい」を
実現するには
産学共同研究の結果では、室温・湿度・空気環境が住む人の健康に影響を与えることが示されています。つまり空調と換気性能に優れている住まいは、快適に暮らせることに加え、健康リスクの低減にもつながると言えるでしょう。住居を選ぶ際の目安としてお役立てください。