住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
公開日:2022/9/16
お客様に近い研究者として、
くらし価値を向上させながら
環境への負荷を軽減させたい。
R&Dセンター 環境技術研究室
中川 浩
※記事に掲載の役職名、商品・サービスについての内容は公開時点の情報になります。
関連するSDGs
「全館空調システム」開発の原点は、
「環境」と「健康」の問題に
貢献すること。
長く住み続けられる住まいづくりには、環境への配慮と共に、住む人の健康への配慮もとても大切になってきます。そのひとつとして挙げられるのが、国土交通省が建築・住宅分野のテーマとして推進している「断熱改善」の取り組みです。断熱性が低い住宅では家の中で温度差が生まれ、住む人の血圧が大きく変動することによって健康被害が起こる「ヒートショック」のリスクが高まると言われています。「住まいづくりに関わる者として温度差による家での悲劇をなくしたい」。この想いを胸に、室内の温度差を小さくするため空調のシステム開発を進めてきました。
「断熱改善」と「空気質へのこだわり」で
「健康に暮らす室内環境」をつくる。
「断熱改善」の問題とは別に、「空気質」の問題も大きなテーマでした。環境省の報告では国内でも多く見られるPM2.5が呼吸器や循環器へ悪影響を及ぼす事例も出ており、健康リスクへの懸念と住まいがどう向き合っていくべきかは極めて重要な社会テーマだと私たちは考えました。そこで、外気に含まれる微粒子をできるだけ取り除き、空気質を高める健康快適な全館空調システムの開発を目指しました。パナソニック ホームズには、1961年に試作した松下1号型住宅でも、すでに室内の空気質を考えて自然換気口を設けるなど、創業初期から住まいの「空気質」に着目してきた経緯があります。さらに、住まいと健康の関係性について産学共同研究を実施し、得られた成果を商品開発につなげることでさらなる住まいとくらしの価値向上を目指しています。「室内での温度差」と「空気質」に対する社会課題に、「健康に暮らす室内環境」で貢献できないか。人々が健やかに暮らせる住まいを通じて未来に貢献していくことが、私たちの使命だと考えています。
「健康・快適性」と「省エネ」を両立する全館空調で、
持続可能な暮らしを
全館空調システムの開発は、一般の全館空調を使用されている方々の声を聴くことから始めました。調査の結果、使用されている方々が「電気代が高い」「部屋ごとの温度調整ができない」などに不満を感じておられることがわかりました。室内での温度差と空気質の観点から「住む人の健康問題と快適性」に貢献し、さらに「省エネ性」にも配慮し環境への影響も削減する。これらすべてを同時に叶える全館空調をつくることが、開発の大きな目標でした。そのひとつの指標として、「ZEHができる全館空調」を目指し開発を進めました。実は、国土交通省が提供しているZEHを評価するためのWEBプログラムでは、空調(冷房・暖房)は「ルームエアコンの空調」「一般の全館空調」と2つのカテゴリに分かれています。「一般の全館空調」でZEHを実現しようと思うと、「ルームエアコンの空調」よりも消費電力が大きいため、通常のZEHで平均的とされている6kWの太陽光パネルよりも多い8-10kWほどの太陽光パネルが必要になり、ZEHの達成が困難でした。そこで私たちは全館空調の省エネ性を追求し、「ルームエアコンを使った全館空調」を開発しました。その有用性を国土交通省に説明し、「効率的なルームエアコンを使った全館空調」ということを理解いただいた適正なエネルギー消費量の評価を得ることができ、通常のZEHで平均的とされる太陽光パネルの搭載でZEHの達成を可能にしています。今では、「効率的なルームエアコンを採用した全館空調」をきちんと位置付けるために20社を超える、住宅メーカーや空調メーカーが参加する委員会が立ち上がるに至り、この分野で当社は業界を牽引する役割を果たしています。私自身、これまで床下空気や自然エネルギーの活用を研究してきましたが、「住宅メーカーの研究分野はお客様に一番近い」という想いを自負しており、これからも「くらしの価値を高め、省エネを追求した魅力ある商品づくり」につなげる研究に携わることで、持続可能な未来に貢献していきたいと考えています。