家づくり、街づくりを通じて考えるSDGs

公開日:2022/12/22

ストック(既存)住宅の流通は空き家解消につなげる一手ストック(既存)住宅の流通は空き家解消につなげる一手

ストック(既存)住宅の流通は
空き家解消につなげる一手

増加する空き家が及ぼす影響とは

近年、解決すべき社会課題として「空き家問題」が多く取り上げられるようになりました。総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、空き家の総数は1988年から2018年の20年で約1.5倍に増加。2018年時点の既存住宅数約6,241万戸のうち、空き家は約849万戸。日本にある住宅の約13.6%が空き家になっている状態です。空き家とは誰も居住していない住宅のことであり、総務省の「住宅・土地統計調査」では、空き家を以下の4つに分類しています。


①二次的住宅…別荘など、普段は人が住んでいない住宅
②賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
③売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
④①~③以外の人が住んでいない住宅で、居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、取り壊す予定になっている住宅など

【空き家の種類別の空き家数の推移】

空き家の種類別の空き家数の推移

【空き家の種類別内訳】

空き家の種類別内訳

【出典】平成30年住宅・土地統計調査の集計結果(住宅及び世帯に関する基本集計)の概要(国土交通省)


空き家の増加は、景観や防犯の観点のみならず、地域社会の成長にもマイナスの影響を及ぼします。たとえば同じエリアで総務省が分類する④にあげられるような長期にわたって不在の空き家が増え続けると、地域一体が過疎化。そのうち街全体が活力を失ってしまいかねません。空き家発生の抑制は、街の活性化や持続可能な社会につなげるために解決すべき課題の1つと言えるでしょう。また、日本ではかねてより新築住宅の需要が高く、スクラップアンドビルドの文化が根強く浸透していますが、住宅一棟を解体すると実に約50トンもの廃棄物を出すことにもつながります。カーボンニュートラルの達成をはじめとした環境問題を考慮しても、空き家をストック(既存住宅)として流通させることは大変重要です。

ストック事業はハウスメーカーの社会的責任

ストック事業に関して、日本は他国に比べて遅れをとっている状況と言えます。2018年時点で日本の全住宅流通量(既存流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは14.5%にとどまり、欧米諸国に比べると6分の1から5分の1と、非常に低い水準にあることがわかります。

ストック住宅を流通させ、空き家の発生を抑制することは、ハウスメーカーに求められる社会的責任でもあります。パナソニック ホームズ不動産内には買取再販事業の専任部署「住宅流通事業企画センター」が設立されており、既存住宅の買取再販事業の推進においては、対象物件の買取後にリフォームを実施します。近隣住民に対しては再販に向け新たなリフォーム実例として現場見学会を行い、見学会に参加いただいたお客さまには住宅相談等を受け付けると共に場合によっては、必要なメンテナンス・リフォームを促します。その結果、買取再販物件だけでなく、同時期に開発した既存住宅の価値をも高めることにもなり、空き家発生の抑制や良質なストック住宅を増やすことにもつながり、街自体の再生にもつながります。

価値の高い中古住宅をブランド化する「スムストック」とは?

ストック住宅が流通しにくい背景には、既存物件の価値・性能の分かりにくさや、快適に住み続けられるかといった買い手側の不安がありました。ですが住宅性能の面においては、建築基準法の改正や耐震等級制度の導入などによって日本の住宅性能は向上し、長持ちするようになっています。パナソニック ホームズが提供する住宅も、35年間の初期保証に加え、点検・診断に基づく保証延長工事を行うことで最長60年まで保証期間の延長に対応するなど、人生100年時代に相応しい住宅性能を備えています。

また、「良質な中古住宅の流通を実現させたい」という想いのもと、パナソニック ホームズをはじめハウスメーカー10社が協力し、中古住宅に一定の基準を設けて「安心」できる中古住宅のブランドとして立ち上げたのが、「スムストック」です。2008年に設立された優良ストック住宅推進協議会は2017年に一般社団法人化され、独自の査定方式による査定を行い、良質な既存住宅の供給を推進しています。優良ストック住宅推進協議会では、共通の基準(①住宅履歴データベースの保有②50年以上のメンテナンスプログラム③新耐震基準レベルの耐震性の保持)を定め、条件を満たす住宅を「スムストック」と認定しています。一般的な査定方式では20年で建物価格はほぼゼロになってしまいますが、スムストックによる査定では、耐用年数の異なる構造と内装・設備を分け、点検・補修やリフォームも適正に評価することで価値を持続させることができます。

スムストックの定義

優良ストック住宅推進協議会、住宅メーカー10社による会員各社がこれまで供給してきた建物のうち、
以下の原則を満たすものを「スムストック」と定義しています。

  • 住宅履歴
    データベースの保有

    今までどんな修繕をしてきたのか。それが分かると、これからかかるメンテナンスの計画等にも役立ちます。新築時の図面、これまでのリフォーム、メンテナンス情報等が管理・蓄積されていることを条件としています。

  • 50年以上のメンテナンス
    プログラム

    永く住み続けることができる住宅であること。それを支える建築後50年以上の長期点検制度・メンテナンスプログラムがあり、計画通りの点検・修繕を実施している。または、査定時点検を実施し、基準を超える劣化事象がないことを確認していること。

  • 新耐震基準レベルの
    耐震性の保持

    安心できる住まいには一定以上の耐震性能は欠かせません。「新耐震基準」レベルの耐震性能があることを最低限の条件としています。

スムストックで価値を見える化
(3つの手法)

条件を満たすだけでは、本当に安心の住宅とは言えません。
スムストックでは、下記の3つの手法を用いることで、住宅の価値を明確化しています。

  • スムストック住宅販売士が
    査定から販売まで行う

    不動産のプロであると同時に建物のプロでもある、一定基準で認定されたスムストック住宅販売士が査定から販売まで行います。
    様々な試験や研修をクリアし、自社ハウスメーカーの建物の知識が豊富だからこそ住宅の価値を適正に評価することができます。

  • スムストック査定方式で
    査定する

    スムストック独自の査定方式で査定を行います。スケルトンとインフィルの償却年数を区分して査定することで、建物本来の価値を正しく評価。これまでのメンテナンス履歴やリフォーム工事などもきちんと評価します。
    ※スムストック査定方式は特許取得済(特許番号 4514300号 平成22年5月21日)

  • 建物価格と土地価格を
    分けて表示する

    スムストックは、一般的な総額表示ではなく、建物価格と土地価格を別々に表示。購入者に、建物自体の価値を適正に伝えます。

【引用】スムストック公式ホームページ

スムストックの定義に沿ってメンテナンスを行った住宅は、既存住宅としての住宅履歴を備え安心してお住まいいただける状態で引き渡されます。年金の繰り下げ、保険料の引き上げ、物価の高騰といった状況のなか、新築に引けを取らない快適な住みやすさでありながら、手に入りやすいストック住宅は、住まい選びの際のひとつの選択肢として今後の住まいのあり方としてますます注目されるものといえるでしょう。