住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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ガーデンデザイナーでインテリアコーディネーターの瀧由里子さんに、
ご自身が丹精しているプライベートガーデンを案内していただき、
「眺めのよい庭」を育てるコツを教えていただきました。
瀧さんのプライベートガーデン。落葉樹が風にそよぎ、季節の草花が庭を彩ります。
近くの「むらかみ農園」には、来客用のサンプルガーデンも。
「限られた敷地の日本の住環境では、室内だけでなく、庭も生活空間の一部として取り入れていただきたいですね」と言うのは、瀧由里子さん。
ご自宅の庭も、小ぶりなスペースながら、さまざまな植物が調和し、多彩な光景を織りなしています。素敵なのは、家の中にいても、緑をたっぷりと感じられること。庭に面した大きなガラス窓から、四季折々の景色が一枚絵のように飛び込んできます。
5年前まで、ここは草木の生えていない痩せた平地だったとか。そこに土を盛って高低差を付け、樹木と石で風景の骨格をつくりました。「花は、インテリアに例えるとファブリックの役割」と考え、風景に色付けする感覚で加えます。
敷地に限りがあると、全体のイメージを統一しないといけないように考えがちですが、「コーナーごとに好きなイメージで変えてもいいんですよ」と、瀧さん。この一角はトロピカルに、こちらはしっとりした雰囲気に、といった具合。年月とともにそれぞれのイメージが混じり合い、他にはない魅力が生まれます。 こうして出来上がったのが、この、滴るような緑の庭。テラスで朝食を取ったり、庭で摘んだ花を飾ったり。暮らしと庭が結ばれて、瀧さんとご家族の日常になくてはならない場所となりました。
「庭は住人と一緒に育ち、ずっと傍らにいてくれる存在。素敵な眺めを大切にすると、家(イン)と庭(アウト)が溶け合って、暮らしが豊かに広がりますよ」
コナラやサルスベリ、ヤマコウバシなど、日本の気候に合った落葉樹を選びました。樹形が自然で、芽吹き、紅葉、冬枯れと、季節ごとに変わる表情が魅力。
敷地の数カ所に土を盛って、それぞれに異なるイメージで植栽。春になると芽吹くよう、土中に球根を埋めておくなど、季節ごとのサプライズも。
さりげない雰囲気の草花の寄せ植えは、庭石やベンチの上などのちょっとしたコーナーやアプローチに。季節の色に彩られた風景に、心がなごみます。
庭仕事の道具は、おしゃれなものを。これはホースガード。水まきの際に草花がホースの下敷きにならないよう、庭のあちこちに刺しておきます。
ソファのクッションと同じ色の花が庭に咲いていたりして、庭とインテリアがしっくりと調和。
お気に入りのテラスは、庭と家の境界をなじませ、自然と一体化させる役割も。
足元の植物も美しいけれど、時折空を見上げてみたい。そこで、背の高い樹木に、つる性のクレマチスのハンギングバスケットを吊して。視線が上へといざなわれ、ドラマチックな変化を楽しめます。
「樹木は、人間より長く生きる可能性を秘めた、庭の中でも特別な存在」と、瀧さん。根元を自然な風合いの草でなじませ、ファブリック感覚で花を選ぶと、立体的な眺めが生まれます。
例えば、帰宅が遅くなり、暗くて庭が見えない時でも、小さなコーナーに花を飾っておくと、自然の空気が身近に感じられます。背の高い花瓶だけでなく、茎の短い花用の花瓶もあると便利。
園芸の世界では「水やり3年」という言葉があるのだとか。日々、適切な量の水を与えながら、庭の植物を観察。「3年ほどつきあえば、それぞれの草木の性質が理解できるようになるでしょう」
静岡県出身。日本大学芸術学部建築学科卒業後、東京・表参道のインテリアショップ勤務を経て、イタリアへ留学。帰国後は、伊勢丹新宿店でインテリアコーディネーターを務める。2017年、父であり植物研究者の村上公一氏が1994年に創業した「むらかみ農園」(岡山県岡山市)を引き継ぐ。現在は「むらかみ農園」代表として、年間1000種以上の苗の育成・販売やガーデンの提案を行う。●WEB murakamifarm.jp
イラスト/横山 雄