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建築家が家族のために自宅をフルリノベーション!建築家が考えるリノベーションの極意って?
主婦目線で徹底解説します。

最近、デザイン性が高く機能的な住まいを実現するために、建築設計事務所にリノベーション設計を依頼する方が増えています。
設計のプロであり芸術的感性と知性を兼ね備えた建築家が、自分と家族のために手がけた自邸は、自身の価値観や設計思想が反映され、また建築家ならではのアイディアも詰まっています。
リアリエでは今回、中古マンションを購入し自身でリノベーション設計を手がけた、R.E.A.D. & Architects代表で建築家の一級建築士・岡田 一樹さん、インテリアプランニング担当・岡田 絢子さんに、お話を伺いました。物件探しのポイントや設計コンセプト、間取りの工夫、収納計画など、理想の住まい作りの参考にしてみてください。

第2回 プランニング、イメージの描き方 編

さて、第一回で物件が決まった我が家のリノベーション計画。依頼先は当然、建築家である夫です。建築家の家は、完全フルオーダーの服のようなもの。まさに、ゼロからのプランニングが始まります。

建築家の設計は、下記のような手順で行っていきます。

1) ヒアリング
施主様ならではのコンセプトを読み解きます
2) ファーストプレゼンテーション
コンセプトを基に、間取り図やイメージボードで最初のプランを提案します
3) 基本設計
CGパースなどを作成し、何度も修正・提案を繰り返しながら、基本のプランを決定し、設計を進めていきます
4) 実施設計
その後、ようやく詳細な設計図を描く段階となります

夫婦でも、難航した最初のヒアリング

私達の場合、施主が私だと仮定して、先ず夫婦会議を開きました。最初のヒアリングですね。
これまでの家への不満もあり、どの様な家にしたいのか妄想がたくさんあったため、意気揚々と臨んだのですが・・・。
収納に関する希望や、壁紙の色など小さな要望は次々に出てくるのに、全体のコンセプトに繋がるような言葉がなかなか出てきません。
家に関しては好みがはっきりしている方だと思っていたのに、と意気消沈してしまいました。

建築家に依頼する場合、ヒアリングが非常に重要になります。
そこから設計の根幹となるコンセプトを抽出するためです。建築家としては、出来ることなら何十回もヒアリングを重ねて、何なら一緒に旅行でもして、お施主様のことをよく知ってから設計したいと思っています。でもそんなことしていたら、工期が守れません。
ですから建築家は、1~2回のヒアリング(戸建ての場合、数回)でのお施主様の要望、雑談などの言葉から、節々に隠された価値観や、ライフスタイルを読み取ろうと、必死に聞いているのです。

私たちは夫婦なので、ある程度は価値観を共有しているはず。それでも小さな要望だけでは、なかなか伝わりませんでした。それは、私達夫婦が、自分達や暮らしについて、きちんと向き合ったことがなく、漠然としたイメージしか持っていなかったからです。

満足度の高い家にするために、私達施主にできること

それは、自分と向き合うことです。
これが、家をリノベーション、又は家を建てる上で一番大切なこと。

この作業は、誰も代わりはできません。
コンセプトを決めるのは建築家ですが、ここできちんと自分と向き合っておかなければ、自分らしい満足度の高い家にはなりません。

コンセプトが明確になる 自分を知るためのリストのすすめ

1回目ヒアリングを反省した私達は、自分と向き合うためのリストを作りました。
このリストは、コンセプト決めに大いに役に立つ上に、自分の人生を客観的に見つめ直す上でも良い気付きを与えてくれました。当事務所でもヒアリングの際に参考にしています。

1. 自分が好き、心地良いと感じる空間は?

2. 好きなこと、好きなものは何ですか?

3. 好きな(落ち着く)色、好きな素材は何ですか?

4. 家に求めることは何ですか?

5. 現在の1日の流れを書いてみて下さい

6. その中で、好きな時間は?

7. 5年後、10年後の1日の流れを想像して書いてみて下さい。

8. 5年後、10年後も大切にしたい時間は?

このリストに、回答していくと、自分がどう暮らしていきたいか、どんな家にしたいか何となく見えてくる気がしませんか?

私達はここから、《キッチンを中心とした1つの空間に、家族が思い思いに過ごし、暖かみのある家具やアートが並んでいる美術館のような家 》というコンセプトを抽出しました。

キッチンを中心としたリビング

ライフステージごとに住み替える という選択肢

上記のリストに回答していくと、自分達の今の暮らしや大切にしていることが見えてくると思います。もう一つ目を向けてほしいのは、5年後、10年後、20年後の展望。

例えば、私達には4歳と1歳の息子がいます(設計当時)。今はまだ子供が生活の中心です。だからリビングで過ごす時間が目立ちます。5年後もきっとそうでしょう。でも10年後は?20年後は?子供が手離れして全く違う暮らし方をしているはずです。

リビングの一角にあるスタディコーナー スタディコーナー手前の子供スペース

子供が幼少で、生活の中心である今のライフステージが10年。
さらに家族の時間とそれぞれのプライベート、両方必要な次のライフステージが10年。
子供が巣立ち、夫婦の時間がぐんと増えるライフステージが10年。
息子夫婦や孫など、人が集うことが増えるライフステージが10年。
最後に、夫婦だけの時間、一人の時間が中心となるライフステージがあります。

その変化するライフスタイルに対応できるような家にして、住み続けていくというのも一案ですが、私達は、ライフステージが変わる10年を目処に住み替えることにしました。
いつでも売却できるように、地価が下がりにくい都心エリアで物件を決めていたことも後押しになりました。

割り切って、今の10年のための家、と限定すると、コンセプトもシンプルで明確になり、より「今の暮らし」にフィットした家になります。私達は、子供部屋はあえて作らずリビングを広くとり、リビングの一角にスタディコーナーを2カ所設けました。
住み替えなくても、ライフステージに合わせてリノベーションしていく、というのも一つの選択肢ですね。

間取り図:キッチンが中心のリビングと2つのスタディコーナー

イメージを伝える上で役に立つ イメージブック

自分を知るためのリストで、ある程度どの様な家にしたいかが見えてきたら、次は家の具体的なイメージを集めます。
SNSや雑誌など、とにかく素敵!と思った画像を集めて、それをノートに貼るなどして、並べて1度に見えるような形にします。並べてみることで、自分のイメージがより固まりやすく、建築家とイメージを共有する上で大いに役に立ちます。

イメージを伝える上で役に立つイメージブック

以上、自分を知るためのリストと、イメージブックの作成をお勧め致しましたが、建築家に依頼する際に絶対に必要というわけではありません。
建築家はヒアリングを行うことで、意向やコンセプトを読み解き提案してくれます。

ただ、家はその人の暮らしそのもの。
プランニングの為に、少し自分達を見つめ直す良い機会にしてみてはいかがでしょうか?
その時間は必ず、家に対する充足感となって返ってくることでしょう。

(文:岡田絢子)

岡田絢子岡田絢子
Ayako Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects インテリアプランニング担当
二人の幼児を育てる傍ら、建築家である夫・岡田一樹と共に、建築デザイン事務所にて主婦ならではの目線を活かしインテリアプランニングを担当。インテリア関係の執筆も行っている。

岡田一樹
Kazuki Okada
建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects 代表 / 一級建築士
1984年 兵庫県芦屋市生まれ。2009年 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築設計学 修了。2009年~2017年 谷口建築設計研究所勤務を経て、2017年12月 R.E.A.D. & Architects 設立。

建築デザイン事務所 R.E.A.D. & Architects

※プロフィールは、取材当時のものです。

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