住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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近年、相続税に対する関心が高まっています。
下のグラフは、1年間の被相続人の数(亡くなった方の数)と、その中で相続税の課税対象となった方の数の推移です。
被相続人の数は、年間概ね120万人から130万人程度で微増傾向に推移し、令和元年は138万人でした。
一方、課税対象数は平成26年の5万6千人から平成27年には10万3千人と急激に増加しています。令和元年には11万5千人で、被相続人の数に対する課税割合は8.3%という状況でした。
この結果からも、平成27年の増税方向の改正の実情が窺えます。
このような課税割合の急激な上昇の主な要因は、相続税の基礎控除額が引き下げられたことです。
相続税の基礎控除額とは、残された遺族の生活保障への配慮などから設けられた非課税枠で、遺族の方が無税で受け取ることができる遺産の額です。 遺産が基礎控除額を超える場合、その超える部分(課税遺産総額)に対して、相続税が課税されます。
課税遺産総額は、遺産総額に生前贈与したものの中で相続時に加算対象となる贈与財産を加えた額から、葬式費用や債務等を控除した正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた額となります。
正味の遺産額が基礎控除額以下の場合、相続税はかかりません。また申告の必要もありません。ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などを考慮した結果、納付税額がゼロになるような場合には、特例等の適用を受けるために申告が必要となります。
平成27年の改正で相続税の基礎控除額は、40%引き下げられました。
図のように、平成26年までの基礎控除額は、定額部分5,000万円に法定相続人一人当たり1,000万円を加えた額でした。平成27年以後の基礎控除額は、定額部分3,000万円と法定相続人一人当たり600万円の合計となります。
この基礎控除額の大幅な引き下げは、ごく普通の家庭にも大きく影響するもので、相続税への関心が高まっています。
基礎控除額の計算式は次の通りです。
〔平成26年以前〕基礎控除額=
5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
〔平成27年以後〕基礎控除額=
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
法定相続人の数 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
---|---|---|---|---|---|
H26 以前 | 6,000万円 | 7,000万円 | 8,000万円 | 9,000万円 | 1億円 |
H27 以降 | 3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 |
引下げ額 | ▲2,400万円 | ▲2,800万円 | ▲3,200万円 | ▲3,600万円 | ▲4,000万円 |
例えば、相続人が2人の場合の基礎控除の額は、
〔平成26年以前〕基礎控除額=
5,000万円+(1,000万円×2人)=7,000万円
〔平成27年以後〕基礎控除額=
3,000万円+( 600万円×2人)=4,200万円
となり、平成27年以後は2,800万円(7,000万円-4,200万円)減額されました。
基礎控除額が引き下げられたことにより、それまで相続税がかからないと思われていた方にも課税される可能性が出てきました。
また、改正前の基礎控除額を超える課税対象者にとっても、課税遺産総額が上積みされ、上記の相続人2人のケースでは、一人当たり1,400万円も課税価格が増加します。更に相続税の税率は10%~55%の超過累進税率なので、課税価格が増えれるほど、より高い税率が適用され負担増は一層大きなものとなります。
課税遺産総額に各相続人の法定相続分を乗じた額 | 税率 | 控除額 | ||
---|---|---|---|---|
〜 | 1,000万円以下 | 10% | 0万円 | |
1,000万円超 | 〜 | 3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超 | 〜 | 5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超 | 〜 | 1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超 | 〜 | 2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超 | 〜 | 3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超 | 〜 | 6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税の計算は、各相続人が実際に相続する遺産額に対して税率をかけるわけではありません。遺産が未分割でも遺産総額と法定相続人の数がわかれば、相続人全員で納める相続税の総額は確定します。
相続税の計算の手順は次のとおりです。
配偶者の税額軽減とは
被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは、配偶者に相続税はかからないという制度です。
正味の遺産額が2億円、相続人は配偶者と子2人(子A、子B)の場合
よって、この場合の納税税は、子Aの810万円、子Bの540万円、合計1,350万円となります。
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。
遺産分割が決まらなくても申告期限までに申告納税しなければなりません。未分割の場合、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例の適用を受けることができないので、相続税の総額を納付することになります。
※小規模宅地等の特例についての詳細は、「住まいと相続税」のページをご参照ください。
なお、未分割でも申告期限までに申告を行い、併せて「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、3年以内に分割協議が確定した場合、分割の日の翌日から4か月以内に申告をやり直すことによって、多く納めすぎた税額分の還付を受けることができます。
また、調停等やむを得ない事由で3年以内に分割協議がまとまらない時には、税務署長の承認を得て、その期限をさら延長することができます。
正味の遺産額 | 相続人が配偶者と子の場合 | ||
---|---|---|---|
子1人 | 子2人 | 子3人 | |
5,000万円 | 40万円 | 10万円 | 0万円 |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 | 30万円 |
7,000万円 | 160万円 | 113万円 | 80万円 |
8,000万円 | 235万円 | 175万円 | 138万円 |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 | 200万円 |
1.0億円 | 385万円 | 315万円 | 263万円 |
1.5億円 | 920万円 | 748万円 | 665万円 |
2.9億円 | 1,670万円 | 1,350万円 | 1,218万円 |
2.5億円 | 2,460万円 | 1,985万円 | 1,800万円 |
3.0億円 | 3,460万円 | 2,860万円 | 2,540万円 |
3.5億円 | 4,460万円 | 3,735万円 | 3,290万円 |
4.0億円 | 5,460万円 | 4,610万円 | 4,155万円 |
4.5億円 | 6,480万円 | 5,493万円 | 5,030万円 |
5.0億円 | 7,605万円 | 6,555万円 | 5,963万円 |
※配偶者の税額軽減(1/2)を適用後の税額(子の税額の合計)
正味の遺産額 | 相続人が子のみの場合 | ||
---|---|---|---|
子1人 | 子2人 | 子3人 | |
5,000万円 | 160万円 | 80万円 | 20万円 |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 | 120万円 |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 | 220万円 |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 | 330万円 |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 | 480万円 |
1.0億円 | 1,220万円 | 770万円 | 630万円 |
1.5億円 | 2,860万円 | 1,840万円 | 1,440万円 |
2.9億円 | 4,860万円 | 3,340万円 | 2,460万円 |
2.5億円 | 6,930万円 | 4,920万円 | 3,960万円 |
3.0億円 | 9,180万円 | 6,920万円 | 5,460万円 |
3.5億円 | 11,500万円 | 8,920万円 | 6,980万円 |
4.0億円 | 14,000万円 | 10,920万円 | 8,980万円 |
4.5億円 | 16,500万円 | 12,960万円 | 10,980万円 |
5.0億円 | 19,000万円 | 15,210万円 | 12,980万円 |
※子の税額の合計
これからの時代、相続税に対して無関心ではいられなくなってきました。
相続税の基本的な知識や節税にかかる特例制度などを理解して、節税や納税資金の準備なども必要になってきます。
相続対策は“今すぐ”という緊急性はなくても、将来に備え早くから検討されることが大切です。
現在の住まいの状況や家族の状況、その他財産状況など、まずは現状把握、財産の棚卸しから始められることをお勧めします。
監修/FPオフィス東京
ファイナンシャルプランナー 川嵜 信⼆