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匠のリフォーム

第10回本当に住み心地のよい家とは?(概論編)

中西 ヒロツグ(イン・ハウス建築計画 代表 一級建築士)

本当に住み心地のよい家とは?(概論編)
第4回 長持ちする家、しない家

長持ちする家、しない家

 国土交通省の統計によると、日本の住宅の平均寿命は27年と言われています。欧米に比べて短いのは、木造の耐久性や日本人の新築指向にあると思われていますが、実は新築を優遇する国の施策と税制に問題が潜んでいます。現在の税法では、建物の資産価値は年間20%ずつ目減りし、約20年で中古住宅の価値はゼロになってしまいます。

 つまり、いくら手塩にかけて住まいを維持管理しても、いざ手放そうとした時には土地の評価しか認められず、建物の価値はまったく評価されないのです。何の価値も認められないなら、壊して建替えようと思うのは無理もありません。

架構を変えずに階段の向きを変えたLDK

 しかし昨今の少子高齢化と長引く景気低迷の影響で、将来への不安や雇用の不安定が深刻化し、世代を超えて住まいを長く使い続けたいというニーズは高まっています。

 とは言え、どんな家でも手入れをすれば長持ちするというわけではありません。いわゆる注文住宅は究極のオーダーメイド商品のため、他の住まい手からすると魅力を感じないばかりか、とても住みにくいものとなります。その結果、いくら頑丈で高価な材料を使っていても、建替えられてしまう運命を辿ってしまいます。

周囲の間取りを工夫して残した和室

 では、どんな家が長持ちするのでしょうか? たくさんのリノベーションを手掛けた経験でわかったことは、誰もがアレンジしやすい「シンプルな家」が一番長持ちするということです。表面的な形や仕上げは容易に交換が可能ですが、間取りや構造はそう簡単に替えることが出来ません。なかでも、奇抜な構造や特殊な工法で建てられた家は、リノベーションの足かせになることが少なくないのです。

それに比べて伝統的な3尺(約91㎝)モジュールで、架構(柱、梁、床などの基本構造)と間取りが一致している家は間取り変更も容易なので、リノベーションもしやすくなります。逆に言えば、耐震補強の際に架構と間取りを一致させることで、将来の変化にも対応できる資産価値の高い住まいにすることができるのです。

柱や梁を残して生まれた開放的なLDK

住まいは人や時間とともに変化するものです。取り替えられる部分とそうでない部分を明確に区分し、子や孫、あるいは住まい手が代わったとしても、リノベーションしやすくすることで、長持ちする家を実現することができるのです。

中西ヒロツグ(なかにし ひろつぐ)氏

匠の紹介:中西ヒロツグ(なかにし ひろつぐ)さん

イン・ハウス建築計画 代表 一級建築士

中西ヒロツグ(なかにし ひろつぐ)さんのオフィス「イン・ハウス建築計画」はこちら

※プロフィールは、取材当時のものです。

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