住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第1回『中古マンション、直せる所・直しにくい所』
プリンシプル住まい総研 所長:上野 典行 氏
講師
プリンシプル住まい総研所長 : 上野 典行 氏
新築マンションの価格が高くなってしまい、なかなか買えないエリアでは、中古マンションを買ってリフォームするという「中古リフォーム」という選択肢があります。中古住宅が増えているストック時代、ストック型社会の今、家選びにおいて、新築にこだわらない選択肢は、希望のエリアに住む為には、とても有効な方法です
ところが、都心で中古マンション物件を買って、自分の好みに合わせてリフォームしようとする際、実は、好き勝手に独断では直せない所があるのです。今回は、そのポイントについて、説明しましょう。
当たり前といえば当たり前なのですが、そのマンションに居住する住民みんなのモノであるエントランス部分やエレベーターや廊下は、自分一人の判断ではリフォームが出来ません。
築年が古いマンション物件では、築年に応じて、エントランス部分も通路も階段も劣化していきます。
「どうだい、室内は、こんなに綺麗にリフォームしたんだよ」
と自慢しようと友達や家族を連れてくると、部屋に入るまでの、エントランス・エレベーター・廊下で「やっぱり、それなりに古いよねー」という印象を持たれてしまう事は多いでしょう。
マンションによっては、エントランス部分をリニューアルしたり、エレベーターや廊下の壁紙をアクセントクロス貼りに変更したり、照明器具をLED方式に変更する等、手を加えている物件もあります。こうした物件は人気になるものですが、実際には、デザイン的な価値に対して、なかなか修繕費を投資しないケースが多いものです。
限られた修繕積立金は、防水シートやタイル等の経年劣化で痛んだ部分を補修する事で、かなりの予算枠を消費してしまうものなのです。中古マンションの購入時は「部屋の中はリフォーム出来るが、そう簡単に直せない共用部は、どういう状態になっているのだろうか?」としっかり見極めることを、お薦めします。
では、部屋の中は自由に好き勝手にリフォーム出来るか?というと、一見、部屋だと思う部分も躯体(くたい=建築物の構造体の意味)に関わる部分は共用部なのです。
例えば、共用部の代表例として窓があります。「ピアノを置きたいので、防音サッシにしよう!」「結露が嫌だから、真空二重サッシにしよう!」と思ったら、マンション管理組合での承認が必要となります。その理由は、窓も建物を支えている重要な要素の一つだからなのです。リフォーム済みやリノベーション済みとして売られているマンション物件をよくよく見ると、窓だけ古いモノが使われているのは、こうした理由がある為なのです。
そして、玄関ドアも、外側部分は共用部です。部屋側のドアを好きな色に塗り替えるのは自由ですが、通路側は管理組合での承認が必要となります。また、バルコニーも非常用通路の一つであり、自分の持ちモノではありません。好き勝手なリフォームは出来ないのです。非常用通路となる隣部屋とのバルコニーの仕切り部分や、階下へ通じる非常用ハシゴの蓋部分は、万一の際に避難を遮る事になるので、モノを置いてはいけない事になっています。
また、マンションの配管や配線は、自分の部屋の屋根裏など、共用部を通っているものです。例えば、物件によっては、洗面台に新しくお湯を通す事も、洗濯機置き場を移動設置して排水する事も、配管の都合で出来ないというケースもあります。
間取り変更もマンションの躯体(くたい)によっては、重要な柱や壁を取り壊す事が出来ない設計となっている場合もあります。
こうした事は、素人が簡単に分かる事ではありません。中古物件を確認した上で、リフォームのプロに設計図などを見てもらい、見積りをお願いするのと同時に、希望するリフォーム内容のうち、何が出来て何が出来ないかを確認する事が重要です。
一方で、キッチンやトイレなどの設備を新品に交換して、壁紙を貼り替えるといった事は、比較的容易に出来るケースが多いです。水回りの基本設備をリニューアルするだけでも、新築では手が出なかったエリアを買い、快適に暮らすには、とても良い選択です。中古リフォームの物件を検討できる「リアリエ」を活用して、住まい選びの選択肢を、どんどん拡げて行きましょう。
リクルートに入社後、採用の編集企画室、続いて新領域推進室にて新規事業に携わった後に住宅領域に異動。
「住宅情報タウンズ編集長」「住宅情報マンションズ編集長」「SUUMO編集長」を経て独立。
「プリンシプル住まい総研」設立。日本賃貸住宅管理協会 研修副委員長、全国賃貸住宅新聞等、連載中。
※プロフィールは、取材当時のものです。