住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第6回『不動産物件の資産価値はどう決まるのか?新築住宅と中古住宅の価格の下がり方』
プリンシプル住まい総研 所長:上野 典行 氏
日本では、新築住宅の人気が高く、「いつかは自分の家を持ちたい、それも新築住宅で!」と思い描いている人がたくさんいます。
一国一城の大名になりたいという意識なのか、戦国時代の物語をワクワクして聞いてきた国民性もあるのでしょうか。一方ヨーロッパでは、中古住宅が人気エリアに多く存在しており、むしろプレミアムな価値があります。もちろん、地震の少なさやレンガ造りの住宅が多く、長い年月を経ても壊れにくい事も影響していますが、むしろ文化や価値観の違いなのかも知れません。
ところで、新築住宅は買って一度でも住んでしまうと、売る時は既に中古住宅となってしまいます。果たして住宅の資産価値は、どの程度まで下がって行くのでしょうか?
住宅には、積算法という資産価値を算出する方法があります。固定資産税や銀行の貸付利率等を決める際に、住宅の資産価値を人間の感情的な判断なしにドライに計算する方法です。
積算法では、土地と建物に切り分けて考えます。
まず土地については、
「土地価格=路線価×敷地面積×掛け目(補正率)」
という書式になります。
路線価というのは、行政機関が決める数字です。相場の変動はある程度は受けますが「この道路に面していると、一平方メートル当たり何円」とデジタルで出てきます。敷地面積は、文字通り敷地の面積です。掛け目については、固定資産税を決める際は、行政機関が、その土地が持っている優劣(高低差、間口、形状など)を反映した補正率であり、銀行等が貸付利率を決める際は、金融機関が独自に設定する補正率になります。
土地には、新築・中古という概念はありませんので、土地の価値は比較的安定していると言えます。それでも、時代の動きに応じて、バブル期~バブル崩壊のような不動産の相場変動はありますが、、、
次に建物についてですが、積算法では建物の価値はダイナミックに下がります。建物については、
「建物価格=再調達価格×延床面積×(法定耐用年数-築年数)/法定耐用年数」
という書式になります。ちょっと分かりにくいかも知れませんが、この法定耐用年数という点が、ポイントです。
再調達価格 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
SRC・RC | 16~19万円/m2 | 47年 |
S造 | 13~16万円/m2 | 34年 |
軽量鉄骨 | 10~14万円/m2 | 27年 |
木造 | 10~14万円/m2 | 22年 |
表を見ますと「SRC(鉄骨・鉄筋コンクリート造)なら、一平米16万円~19万円」と、新築の建物ならば、表を一目見て価値が分かるのですが、中古の建物では、法定耐用年数の47年を分母に、築年分を比率で減額して計算するのです。木造の建物では、この耐用年数が22年となっています。木造の建物の場合、築11年で「11年/22年」となり、建物の価値は半分に下がります。築22年では、建物の価値は、なんとゼロになるのです。
建物は、ある一定の期間が経てしまうと維持する事ができなくなり、建て替えるしかない、というのは、日本では古くからある考え方です。これでは、子や孫に住宅で財産を残していくという訳には行かないと思ってしまいます。
すべての建物が、上記の積算法で価格決定している訳ではありません。
しかし、実際の売買価格をレインズ(不動産流通標準情報システムサイト)のデータで見ても、築20年の間に、物件の平米単価は図表の様に一気に下がっています。言い換えれば、法定耐用年数と同じように建物価値は減価償却してしまい、最後は土地の価値だけが残って、資産価値は当初の半分ぐらいにまで減ってしまうのです。
この事実を素直に見ますと、実は、最初に中古住宅の物件を買えば、新築住宅ほどは資産価値が下がらない事に気付きます。
上記の図表の様に、同じ年月期間でも、新築住宅と中古住宅を比べると、資産価値の減少の幅は、中古住宅の方が少なくなるのです。
特に新築住宅であるという事は、それだけでプレミアム感があり、新築住宅を購入して中古住宅として売却するというのは、実に支出・収入がアンバランスな商品と言えるのです。従って、新築住宅よりも安く中古住宅を買い、そこに対してリフォームを施して住み心地を上げるという考え方は、このように積算法で比較してみても、実に合理的な方法と言えるでしょう。
次回は、この積算法だけではなく、収益還元法という資産価値の計算方法と合わせて、資産価値を維持していく手法をご紹介したいと思います。
ちなみに、今回のコラムでは、各用語の意味を以下として記載しました。
・価値:土地・建物そのものの評価金額
・価格:市場に出た時の金額
リクルートに入社後、採用の編集企画室、続いて新領域推進室にて新規事業に携わった後に住宅領域に異動。
「住宅情報タウンズ編集長」「住宅情報マンションズ編集長」「SUUMO編集長」を経て独立。
「プリンシプル住まい総研」設立。日本賃貸住宅管理協会 研修副委員長、全国賃貸住宅新聞等、連載中。
※プロフィールは、取材当時のものです。