住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第14回『賃貸併用住宅で、資産運用。お得に購入する戸建てテクニック』
プリンシプル住まい総研 所長:上野 典行 氏
講師
プリンシプル住まい総研所長 : 上野 典行 氏
住宅展示場に行くと、最近よく見掛けるのが「賃貸併用住宅」という資産運用の手法です。
それは、自分たちがマイホームを敷地に建てる時、予め賃貸用の住居部分も合わせて造り、その賃料収入をマイホーム資金に充てる事によって、住宅ローンの返済額を軽減しようという資産運用の手法です。
今回は、この手法のメリットと注意点について、解説してみたいと思います。
例えば、老後の生活を夫婦二人で過ごすならば、それほど部屋数は必要ではありません。その場合、今の生活に見合った部屋数で住宅費用を見積る方法もありますが、もっと先々の事を考えると、やがて子供達が相続する時には手狭となってしまい、あまり資産価値が上がらない物件というケースが想定されます。そんな時に検討して頂きたいのが、賃貸併用住宅という手法です。
特に都心などでは、賃貸住宅のニーズがとても高く、せっかく敷地を持っている方ならば、有効活用を検討する価値があると言えるでしょう。それは、1階部分に大家となる自分たちが住み、2階・3階部分を、賃貸住宅として貸し出すのです。2階・3階の賃料収入で住宅ローンの返済を補てんしながら、相続した後は、1階部分を含む3世帯分の賃貸物件としての活用が可能となります。
都心でよく見掛ける、1階部分には、その土地で古くから商売をやっているお店が入っており、その上の階を賃貸住宅や賃貸オフィスとなっているビルを思い起こせば、イメージできるかと思います。
かつては、子供達と暮らした大きな家も、子供達が独立して家庭を持って巣立ってしまうと、ただただ広いだけの家になってしまいます。老夫婦がこれからを静かに暮らそうとすると、そんなに沢山の部屋数は必要ではありません。そうなると、住宅を平屋に減築するというアイデアも浮かんで来ますが、あまり現実的ではありません。
しかし、最初から自宅の上層階に賃貸用の部屋を作れば、そこに資産活用の方法が加わる事になる訳です。
特に賃貸住宅物件では、1階部分は女性には不人気で、なかなか入居者が決まらないものです。その理由は、防犯面での不安も有るためでしょう。特に単身の女性は、2階や3階の賃貸住宅物件を望みます。一方、高齢の方は1階の方が、これから足腰の不安が出たとしても安心です。家事や日常生活もバリアフリーの中で過ごしたいと考えると、貸し手が1階へ、借り手が上層階へと分かれる事で、WINWINになれる可能性があります。
毎月の賃料収入を得ながら、大きな賃貸住宅物件を大家として持ち、しかも自分に合った住宅物件の中で暮らすのです。そうなると、店子(たなこ=借家人)との接点が生まれ、お互いが挨拶をしたりすると、人との会話の機会も増えますし、とても良い生活が老後になっても送る事が出来ます。
そして、いざ相続する時になったら、賃貸住宅物件としての資産活用も可能ですし、仮に自分たちの孫や子が居住しなくても、これまで住んでいた部屋も含めて、大規模リフォームをすれば、丸ごと賃貸物件としての運用が可能です。また、子供たちに兄弟姉妹がおり、それぞれ分割して相続する場合は、一戸建てを売却してから相続するよりも、賃貸物件毎に分割すれば相続し易くなります。
大規模リフォームをする際には、ぜひとも、賃貸併用住宅の手法も検討して、資産運用を進めて頂きたいと思います。
そうは言っても、心配なのは空室リスクです。賃貸併用住宅で何部屋かを建築しても、そこに入居者が入らなければ宝の持ち腐れとなってしまいかねません。無駄な建築コストが掛かり、住宅ローンの金額が大きくなります。今後20年~30年と入居者が安定的に増えて行くエリアでなければ、あまりお勧めは出来ません。今は人口減少の時代ですから、最初は新築で入居者が飛び付いたとしても、将来的に安定した賃料収入が得られるとは、考えにくいケースもあります。
つまり賃貸併用住宅は、「賃貸住宅がオマケで付いている」と考えるよりも、「賃貸住宅に大家も暮らす前提で、賃貸経営に乗り出すのだ」という様に、考え方を逆にした方が良いでしょう。つまりは、賃貸住宅のオーナー兼経営者になるのです。
こうした賃貸併用住宅で賃貸経営を考える場合、さほど大規模な住居戸数を抱える訳ではありません。一世帯か二世帯の賃貸住宅物件と、大家たる自分の住まいで建物が構成されます。そうなると、その入居者との人間関係も、一般の賃貸アパートよりも密にする事が出来ますし、そうなると住み心地が双方にとって、より良いものになります。
つまり、入居促進を頑張って、何が何でも満室にするという方針ではなく、新築時に入居して頂いた家族と末永く、大家と店子(借家人)として接して行こうという方針で臨む、そんな賃貸物件に出来れば良いでしょう。
もちろん、大学に近いとか、あるいは都心の駅近といった好条件であれば、入れ替わりがあっても一定の入居ニーズはあるかも知れません。そういう前提条件がある上での、安定的な賃貸併用住宅も良いでしょう。
しかし、そうした立地でないのであれば、ご近所があり、かつ、大家と店子(借家人)の人間関係がほのぼのとしており、心温まる関係を持ちながら、長く住んで貰える賃貸併用住宅の経営をお勧めします。それが実現出来れば、賃貸併用住宅を中心とした素敵な生活が可能となるのではないでしょうか。
※資産運用に関連する内容としましては、第7回のコラム『今は買い時? 低金利時代の住宅購入術』中にあります「収益還元法」についても合わせて、ご覧ください。
コラムを見る。
リクルートに入社後、採用の編集企画室、続いて新領域推進室にて新規事業に携わった後に住宅領域に異動。
「住宅情報タウンズ編集長」「住宅情報マンションズ編集長」「SUUMO編集長」を経て独立。
「プリンシプル住まい総研」設立。日本賃貸住宅管理協会 研修副委員長、全国賃貸住宅新聞等、連載中。
※プロフィールは、取材当時のものです。