住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第12回『妻の本音と夫の本音。定年後の住宅に対するこだわり条件の違いとは?』
プリンシプル住まい総研 所長:上野 典行 氏
講師
プリンシプル住まい総研所長 : 上野 典行 氏
定年を迎えた夫婦がおりました。そろそろ、家をリフォームしようかと考えています。すると・・・。
「やっと愛する妻と一緒に過ごせる!」と考える夫がいます。
「えっ?夫が毎日、家に居るの?困ったなぁ・・・」と思う妻がいます。
二人の感性の違いが、リフォームプランにも現れて来ます。
夫の定年を機に、家をリフォームをしようとするご夫婦は沢山います。かつて、大家族で手狭だった家も、老後の二人だけで暮らすには、何かと不便です。退職金も入った事だし、家をリフォームしようという話で盛り上がる夫婦は多いです。実際に、パナソニック ホームズ(株)でリフォームをされた経験のある方は、50代以降という方が3人に4人の割合でおりました。
今では、中古を買ってリフォームしようという若い世代も増えていますが、つい5年程前は熟年リフォームの件数が多く、リフォーム市場の主流だったのです。しかし、よくよく見ていくと、リフォームに対する思惑は、夫婦それぞれ異なります。
これまで、がむしゃらに働いてきた夫に対して、定年後、何をしたいですか?と聞いても、ピンと来ない方が大勢いらっしゃいます。特に趣味が無い方が多いですし、友人も、退職した仕事関係の人に限られている方も多いものです。
アンケートを取ると、「定年後には、夫婦の時間」「家族との時間」を大切にしたいと思う男性は多く、その割合は男性の方が、その様に強く感じているのです。
○定年後どうしたいか
ところが妻は違います。近所付き合いやサークル活動等をしている妻は多く、既にアクティブに外出している方が多いものです。先程のデータからも「プライベートな時間」「親しい友人との時間」を、定年後の生活の中で充実させたいと思う人は、実は女性の方こそ多いのです。
「家をリフォームするなら、友達みんなを呼んでパンを焼きたいなぁ~」と妻が思っている一方で、「音楽が聞ける書斎が欲しい」とか、「パターの練習を庭でやりたい」と言い出す夫が居ます。「その趣味は、ずっと続くのかしら?それよりも、毎日、あなたは家に居るつもりなの?困ったなぁ・・・」と思う妻も居るのです。
下図のデータからも、2割の女性が、配偶者の在宅時間が、これまでよりも長くなる事に不安を感じている事が分かります。
結婚する前は「結婚したら、こんな家族になろう」「こんな生活をしたいな」「休日はこんな事をしたい」と色々な夢を語り合った二人です。
実は、「定年」が、人生では大きなライフプランの変更タイミングになります。
この時、支え合うのは紛れもなくかけがえのないパートナーである夫婦同士です。だからこそ、それぞれ普段の居場所や、二人の時間を考えて、リフォームプランを検討しましょう。
もしかしたら、24時間ずっと二人で過ごす事が、必ずしも良い事とは限りません。ゆっくりと、一人で居る事を楽しむ時間も空間も必要となるでしょう。
日中、ずっと家に居た事が無かったご主人は、大きく日常生活が変化します。まずは、これまで自分を支えてくれた配偶者に感謝し、その日常生活が、より豊かになれる様に考えてみましょう。
また、今現在は元気でも、これからは身体に何が起こるか分かりません。医療の進歩によって、長生きが出来る様になりましたが、必ずしも、健康寿命(継続的な医療や介護に依存せずに、自立した生活ができる生存期間の意味)が伸びたとは言い難い側面もあります。
例えば、足腰の事を考えて、今まで2階に上がって干していた洗濯物を、出来れば1階に干せないものか?と干す場所を変えてみたり、1階・2階の行き来を楽にする為のホームエレベーターの設置を考えてみたり、安全の為に階段・廊下・風呂・トイレに手すりの設置を考えてみたり、歩き易くする為に廊下と部屋・部屋同士の床面の段差を無くしたりする等、バリアフリーの視点を取り入れたリフォーム対策も検討してみましょう。
考えてみれば、家を建てて頑張って働いてきた年月と同じ位、定年後に過ごす時間があるかも知れません。その時間が豊かになれる様、二人がゆっくり話し合う事が大切です。知っている様で知らなかった気持ちが有るかも知れません。分かっているつもりで分かっていない事が有るかも知れません。そんな気持ちを二人で共有し合い、より良い未来の暮らしの空間を育てて行きましょう。
リクルートに入社後、採用の編集企画室、続いて新領域推進室にて新規事業に携わった後に住宅領域に異動。
「住宅情報タウンズ編集長」「住宅情報マンションズ編集長」「SUUMO編集長」を経て独立。
「プリンシプル住まい総研」設立。日本賃貸住宅管理協会 研修副委員長、全国賃貸住宅新聞等、連載中。
※プロフィールは、取材当時のものです。