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リアリエ住まいセミナー

第1回【新築?中古?】【賃貸?購入?】【戸建?マンション?】

~無理のない、自分らしい住まい探しのコツ~ 第2章

プリンシプル住まい総研 所長:上野 典行 氏

(第1回目となる本シリーズは、第1章~第7章までの連載です。)

第2章『定住 vs 住替え』

続いては、住まい探しをする上で、「定住か?住替えか?」という問題があります。

これは、住宅を「買うか?借りるか?」とは、ちょっと違う話です。住宅を買ったら、ずっとそこに居なければならないという訳ではなくて、生活拠点の場所が変わったら、その住宅を売れば良いのです。

ところが、日本人には「家を売る」という概念を、あまり持っていません。

これは、鎌倉時代に、「一所懸命」という字があり(今は一生懸命と書きます)、与えられた土地を、「頑張って耕すんだ!」「その土地の主として、ずっと生きていくんだ!」という意味から派生した言葉でした。日本人は、そこで頑張り、やがて「住めば都だ」と言います。元々、日本人は農耕民族で、土地を大事にする定住型の民族なのです。

一方、世界中ではモンゴルの様に、羊や牛と一緒に動く民族もいます。「どんどん住み替えれば、良いじゃないか。」と、場所にこだわらない民族もいます。

日本人は、住替えの必要性が出た時、「賃貸か?購入か?」の選択肢を考えるよりも先に、まず「その場所に住み替えようか?」と考えます。しかも、そのままずっと住み続けると思い込んでしまうので、「転勤があるかも知れないし・・・」と住み替えそのものを躊躇されるケースもあります。

ところが、住まい探しで「賃貸か?購入か?」の選択肢を考えると、「転勤になったら、人に貸せば良い。」「転勤になったら、売れば良い。」「転勤先でも、また買うぞ!」という捉え方もあります。

「賃貸か?購入か?」の選択肢を意識すると、住み替える時に、物件を人に貸すという選択肢を自分の中に加える事が出来ますから、「買ってしまったら、ずっとそこに縛られてしまう。」と思わなくても良いのではないでしょうか?

続いては、お子さんに関する住まい探しについてです。親元で同居していた方も、就職をしたら、初めは独り暮らしからスタートする方が多いです。

自分のライフスタイルにあった「住み替え」は「賃貸」が気軽です

始めは一人暮らし 結婚して子供が出来て広い家 老後は夫婦で 賃貸なら、「引っ越し費用」+「初期費用」 売買なら、「引っ越し費用」+「仲介手数料」+諸費用

【図1】

そして結婚して、子供が出来て広い家が必要になると、「住宅を買うか?借りるか?」と、悩まれると思います。しかし、この家は、老後に夫婦2人になった時には、広すぎます。そして旦那様がお亡くなりになり、奥様1人には、広すぎます。老後は「狭い部屋でも良いから」と、その時に、住宅を「売る/貸す/建て替える」という様に色々な選択肢が、本来ならばあります。

要するに、日本人は、老後について、あまり考えて来なかったのです。なぜなら、日本人は、ずっと家族と一緒に暮らす前提だったのです。マンガ『サザエさん』一家は、みんな一緒に1つの大きな家に住んでいます。当時は、これが日本人のゴールだったのです。

最近では、老後期間が長くなり、やがて子供が独立して家を出て行きますので、夫婦2人で暮らすという、新たなゴールを考えなくてはいけません。奥様1人で暮らすゴールを考えなくてはいけません。

核家族化が進んでおり、
将来にわたって、同じ広さが必要ではなくなっています

賃貸派 始めは一人暮らし 結婚して子供が出来て広い家 老後は夫婦で

購入派 始めは一人暮らし 結婚して子供が出来て広い家 老後は夫婦で ・老朽化・使いにくい・こんなに広くなくても

【図2】

ただ、賃貸派の住まい探しは、ここでは動き易いです。では、購入派の方の住まい探しは、どうするのでしょう?
例えば、家は、老朽化しますし、使いにくいですし、必ずしも広くなくても良いのです。「老後は、軽井沢あたりで静かに暮らそうかな?」と考える方も、いらっしゃるかも知れません。

購入後のライフスタイルに合わせた柔軟な住まいの対応①
購入後定住+リフォーム

購入後定住+リフォーム 始めは一人暮らし 結婚して子供が出来て広い家 老後に合わせたバリアフリー化 2世帯住宅や3世帯住宅 一部を賃貸に転用

  • ■メリット
  • 住み慣れた場所で長く住めるので、生活スタイルを大きく変えることなく長年かけて形成したコミュニティーを維持できる
  • ■デメリット
  • リフォーム費用

【図3】

あるいは、「老後の生活に合わせて、室内の段差を無くそう。」、更には「2階までエレベーターを付けよう。」といった中古リフォームがあります。

あるいは、子供家族と一緒に暮らせる2世帯住宅にしよう。最近では、3世帯住宅や、1世帯分を賃貸住宅用に変更する例もあります。更には、一人っ子同士が結婚して、自分の旦那様の親と、奥様の親が一緒に、3世帯で暮らすという例もあります。

あるいは、一部を賃貸住宅にしてしまう例もあります。東京を上空から見てみますと、最上階に緑があって、普通に庭付き住宅の様な生活をしている人がいます。かつては、そこに一戸建ての商店があり、今では、アパートやマンション経営をされており、最上階に住んでいる事があります。住み慣れた土地ですので、近所の人とも仲良しさんです。

あるいは、一戸建ての住宅を売って、バリアフリーのマンションに引っ越して暮らすという例もあります。

購入後のライフスタイルに合わせた柔軟な住まいの対応②
購入後 住み替え

50年でトータルイーブンであれば、翌年からは、資産があるほうが投資コスト安

  • ■メリット
  • 必要最小限の広さの住宅を購入することにより、余計な広さに対する出費を抑える
  • 老後のライフスタイルにあった地域=例えば故郷や田舎暮らしができる
  • ■デメリット
  • 売るにも買うにも仲介手数料がかかる

【図4】

あるいは、自分の物件を賃貸住宅物件に変更してしまい、自分たちは病院に近いマンションに移り住むというご夫婦も増えています。都会ならば、病院も近く便利なので、電車で1時間も掛かる様な元々住んでいたニュータウンから、都会へ移って暮らす方も多くなっています。

あるいは、子供に家を譲って、自分たちは長野や軽井沢に住み替えて、セカンドライフを楽しもうという方もいます。

当然、これらは、中古住宅物件を売る行為を伴いますので、仲介手数料が掛かります。賃貸物件にするという事は、多少のメンテナンスが必要となる等、色々なリスクが伴います。それでも、こうした新しい考え方が、徐々に出て来ています。

日本は、超高齢化社会ですので、老後の人生において、どの様な住まいで豊かに暮らすか?について、考える事も重要です。

※ 本コラムは、2015年8月5日に横浜で開催されました【リアリエ住替えセミナー】での講演内容を元に、構成しました。

講師の経歴:上野 典行(うえの のりゆき)氏
プリンシプル住まい総研 所長

リクルートに入社後、採用の編集企画室、続いて新領域推進室にて新規事業に携わった後に住宅領域に異動。「住宅情報タウンズ編集長」「住宅情報マンションズ編集長」「SUUMO編集長」を経て独立。「プリンシプル住まい総研」設立。日本賃貸住宅管理協会 研修副委員長、全国賃貸住宅新聞等、連載中。

プリンシプル住まい総研

※プロフィールは、取材当時のものです。

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