住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第2回【中古を買ってリフォームしよう】
第2章『リフォーム設計の難しさ(耐震基準)』
イン・ハウス建築計画:中西 ヒロツグ 氏
(第2回目となる本シリーズは、第12章までの連載です。)
さて、「中古を買ってリフォームしよう」というテーマですが、テレビ番組以外にも、たくさんの中古リフォーム物件を経験させて頂いたお陰で、様々な住宅の技術や工法を知る事が出来ました。
自分自身として感じているのは、新築住宅よりも中古リフォームの方が難しいという事です。リフォームでは、よりお客様の暮らし方や考え方などのライフスタイルに寄り沿った具体的な提案が求められるので、設計的にも、施工的にも難しいのです。
例えば、現在の技術で住まいを作るのであれば、決められたルールに沿って造れば良いのですが、数十年前に当時の新工法で建てられた家や、古民家などの伝統工法で造られた家では、今とは違った技術がたくさんあるのです。
壊してみて、「あっ!こんな作り方している!」といった具合に、面白い発見や驚きがたくさんあるのです。もちろんそれだけではなく、大工さんの腕や知識にも幅があるので、本来の施工ルールから外れている事も多々あります。
そうした事にも臨機応変に対応しないといけないので、中古リフォームは、なかなか一筋縄では行きません。リフォームプランを設計する側はもちろん、施工する側も相当の技術力と対応力が求められるのです。
今、巷に数多くある建売住宅の様なローコストで量産される住宅は、工法的には、ほぼ確立されているので、ある意味、プラモデルみたいな感覚で、指定された材料をマニュアル通りに組立てていけば、どんな大工さんでも造る事が出来ます。
しかし、かつては、そうではありませんでした。その地場の大工さんが、木材を自分で刻んでは組み立てて行くやり方に、地域ごとの特徴や多少の癖があるのです。「この大工さんは、こう考えてやったのか!」という事を、1つ1つ理解しながら、補強や改修をしなければならないので、すごく知識と技術力が求められるのです。
さらに、住宅に求められる性能の要求も向上していますし、建築工法は時代と共に変化しています。その変化をきちんと理解しておかないと、それが、いわゆる欠陥住宅なのか、当時として一般的だったのか、判断が難しいのです。
従って、いたずらに中古住宅に不安を感じるのではなく、建てられた当時の作られ方をよく把握しておく必要があります。残念ながら、プロでも、こうした事情を良く知らない人がいるので、リフォームを計画される皆さん方も、施工者の言葉を鵜呑みにせず、建築工法の変遷をある程度理解しておいて下さい。
その1つの例として、耐震基準があります。
これは、昭和25年(1950年)に建築基準法が出来てから、今日まで何度も改正されてきており、大地震の度にどんどん厳しくなっています。特に、昭和61年(1986年)に施行された新耐震基準では、非常に大きな変化がありました。
新耐震基準において、それまでの基準と一番大きく変わった点は、基礎の鉄筋が義務化された事です。これ以前の木造住宅では任意だったので、基礎に鉄筋が入っていないものが少なくありません。
さらに言えば、1970年代以前は基礎が無くても良かったのです。法律で基礎が規定されていないので、石の上に、いきなり柱が立っているものも認められていました。
それが、宮城県沖地震等の被害を受けて、コンクリートの基礎が基準化され、1981年に初めて、「基礎の中に鉄筋を入れましょう」という事が決まったのです。
そのため、新耐震基準以前のいわゆる「旧耐震」と呼ばれる建物の中で、ひび割れた基礎を調べてみると鉄筋が入っていない例がたくさんあります。
それを補強するには、基礎を新たに造り直すとか、鉄筋に替わる補強工事が必要なため、非常にコストが掛かります。リフォームを前提に中古住宅を買っても、建物の補強に予想外のお金が掛かり、希望の間取りや設備を諦めざるを得ないこともあり得ます。
それ以外にも、耐力壁(水平方向からの力に抵抗する能力を持つ壁)という、筋交いや構造用合板などが入った、地震の揺れを抑える壁の必要な長さが、それ以前に比べて約1.5倍に増えました。そのため、新耐震以降の建物では、かなり地震に強くなったと言えます。
阪神大震災後の2000年には、新耐震基準に加えて、筋交いの端部や、柱と梁の端部に金具を付けて構造体同士が外れにくくする事や、耐力壁をバランス良く配置して建物全体の強度を増すといった事が、さらに追加で規定されました。
いずれにせよ、1981年以降の建物であれば、耐震補強は金具の追加程度で済みますので、それほど補強施工にお金は掛かりません。そういう意味で、新耐震基準以降の住宅の方が、構造的な不具合の補強の費用が抑えられ、その分、間取りの見直しや設備の入れ替えに費用を割り当てる事が可能と言えるでしょう。(続く)
イン・ハウス建築計画 代表 一級建築士
中西ヒロツグ(なかにし ひろつぐ)さんのオフィス「イン・ハウス建築計画」はこちら
※プロフィールは、取材当時のものです。