住まいづくり・住まい探しの情報ガイド
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第2回【中古を買ってリフォームしよう】
第3章『リフォーム設計の難しさ(工法基準)』
イン・ハウス建築計画:中西 ヒロツグ 氏
(第2回目となる本シリーズは、第12章までの連載です。)
耐震基準以外にも、建物の工法自体が時代と共に大きく変化しています。
新築住宅には、古くから「住宅金融公庫」という融資制度があります。現在は「フラット35」と呼ばれていますが、新築住宅を建てる際に融資を受ける為には、必要な工法基準のルールがあり、それに則って住まいを作らないと融資が受けられません。この事を知った上で工法基準を検証していくと、当時の木造住宅の作り方というモノが見えてきます。
1980年以前、いわゆる旧耐震での建物は、基礎はコンクリートでは出来ているけれども、中に鉄筋は入っていない、という事になります。
構造面では、屋根を支える梁に、丸太がよく使われていました。別に、丸太だから弱いという訳ではないのですが、乾燥が不十分な材料が使われていたので、経年変化で梁が割れたり反ったりしている事がよくあります。
当時は、瓦屋根が一般的でしたが、耐久性が高い反面、非常に重量が重い為、地震の際に頭が振られてしまい、耐震性能としては、やや不利になります。
実は屋根には、耐久性に加えて軽さと強度が求められます。耐震補強では、まず屋根を軽くすることが有効になります。屋根の重量を減らす事によって、地震の揺れの力を減らす事が出来るのです。
また、この当時の窓は、アルミサッシのシングルガラスが主流でしたが、建物の断熱性を上げる為には、これを断熱サッシやペアガラスに取り替えることが必須です。
そして、壁には一応の断熱材が入っているのですが、薄い5cmぐらいのロックウールやグラスウールなどの綿状のモノが使われています。当時の外壁は、モルタル塗りが多いですが、残念ながらモルタル塗りはヒビが入りやすく、中に外気や水分が入ると、鉄筋が錆びて膨らんでしまい、モルタルが爆裂してさらに亀裂が大きくなります。
そうなると、壁の中に雨水が入って、断熱材を濡らすのです。断熱材のグラスウールは非常に湿気を含みやすい材料なので、濡れてしまうと重くなって、下にズリ落ちてしまいます。
内壁を壊してみると、断熱材が下に落ちて、カビが生えていたという事もよくあります。こうなると、ほとんど無断熱状態です。しかも、この当時の標準的な工法としては、天井や床などには、断熱材はほとんど入っていません。ルールとして入れる必要が無かったのです。
ですから、古い家は底冷えするのです。床下を覗いてみますと、床板一枚で、基礎の風穴から冷たい外気が入ってくる為、底冷えするのは当たり前で、どうりで寒いはずです。
当時は、こういう作り方が一般的であり、手抜きや違反などでは無かったのです。
ですから、これを中古リフォームしようとすると、屋根を吹き替え、外壁を入れ替え、断熱材を入れ、サッシも換えないといけない事になります。内外装もやり変えないといけないので、かなり費用が掛かるという事が、お分かり頂けるかと思います。
こうした古い工法によって建てられた住宅を中古リフォームする場合、気になるのは費用かと思います。あくまでも費用の目安としてですが、35年以上前の住宅を中古リフォームするには、少なくとも、1平米あたり15万円ぐらいは見ておかないと、なかなかに基本性能を上げる事は出来ません。(続く)
イン・ハウス建築計画 代表 一級建築士
中西ヒロツグ(なかにし ひろつぐ)さんのオフィス「イン・ハウス建築計画」はこちら
※プロフィールは、取材当時のものです。